その4
「んじゃ、これあげるね」
由美が運転してきた真紅のスポーツカーに乗り込むなり、一枚のカードを手渡す利鋭。
「ヤッさんの調査結果」
「副島さんがですか?早いですね。ちょっとびっくりしました」
昨夜のうちに、勇元金融以外の緑の軍隊傷痍兵年金基金の給付や残高の実態を調べてもらうように海司に要請したのだが、まさか翌朝には報告できる状態になっていて、しかも副島が担当していたことに驚いた。
「緑の軍隊といえば専守防衛。専守防衛といえばヤッさん。これベイランドシティの常識」
「緑の軍隊専属部隊に知り合い多そうですものね」
それだけではないのだが、由美がそのことを知るのはまだだいぶ先のことだった。
利鋭が車載システムとのリンクを確立している間に、由美は左手のデータグローブでディスクを覆った。非接触通信でデータがサングラスに表示される。
「凄いですね。人によっては過去二十年分の給付データもあります。全部で十二社百五十名分?一晩でこんなに出来るものなんですか?」
警察の捜査を知らない由美にとって、この迅速さは新鮮だった。
「色んなやり方があるのよ。コネやら色々ね」
「ロードより由美。及び利鋭」
「こちら、ストライク」
「エッジ」
二人の会話に割り込んできたのは、情報係の女性オペレーター。相も変わらずの美声――可愛らしさの中にもすっと耳に馴染む声の持ち主だ。
――本当に採用基準って誰が決めたのかしら?
もちろん、磯垣海司課長だ。
「対象データは本案件の証拠品に付き、保護処置の後助手席ダッシュボード内防護ボックスにて厳重保管されたし。転送は禁止します」
「強行係統括官了解」
統括官としてのコールサインで返答したので、強行係全体の了解が示され、由美の返答は必要とされず通信が終わる。
「転送しないんですね」
「しないよ。傍受されても困るから。――それ貸して」
利鋭はディスクを受け取り、先ほどの由美の読み取り動作同様データグローブで覆うと、操作を開始した。その様子は由美のサングラスでも実況される。
「証拠ってのは実物が一番強いしね。これは参考データに過ぎないから、捜査が本格化すれば段ボール何十箱の資料が押収されることになるんだろうね」
「あのよく放送される家宅捜索のシーンですか?」
「あれ、暇だったりすると時々駆り出されるんだけど、ちょっと引くよ。だって、建物内にあるからって言って子供の絵本からSM雑誌まで押収するんだよ。意味ないんじゃないって言っても、そのどこかに証拠が紛れてるか分からないから押収するんだって検察の人が言ってたよ」
「砂漠のダイヤモンド状態ですね」
「まさに、それ。――さて封印完了」
そう言って利鋭はダッシュボードを開け、チタン製のケースにディスクを納めた。
「ほいじゃ、証人にご挨拶に伺うとしますか」
「コピー」
エイデルの店――『木陰の隠れ家』の近くに路上駐車していたスポーツカーが発進する由美。
「凄いですね。異常接近者八名。車体に触れた人は二人もいる。本当に犯罪都市なんですね」
運転しながら、停車中に犯罪防止装置が記録したデータを見て、驚きの声を上げる由美。
思わず苦笑いの利鋭。最高出力二五〇キロワットのモンスター電気自動車に乗っていれば、車上荒らしでもなくても思わず気になるだろう。
「由美は普段運転しないのか?」
「軍以外ではあまり。興味もありませんし」
世界一の一秒加速記録保持者が乗用車には興味が無かったことに、意外に思う利鋭。
「これ選んだのは?」
「課長です。色々根掘り葉掘り聞かれて、これを薦められました」
「色、変えなかったの?」
「派手だなって思いましたけど、そうすると納車まで時間かかるじゃないですか」
一理ありすぎる。どうやら、彼女は車に頓着しないタイプらしい。その割に、このモンスターを自在に操って狭い新本牧の道を抜けて行くのだから、確かに海司の見立て通りだ。
「それで……」
「ん?」
「結局、エイデルさんて何者ですか?」
「なんとなく分かってるでしょ?」
運転しながら小さく首を傾げる由美。
「最終階級は少佐、ですか?それほどの地位にいながら、ベイランドシティのスラムで偽名を使ってゴロツキ一歩手前の軍人達を取り纏めている?」
「偽名だって分かったの?」
「連合王国の歌手の名前でしょ」
「そういうことに興味無いのかと思った」
「緑の軍隊情報部の人達は、UKの人達が多いですからね」
緑の軍隊情報本部の名前が出てきて、ひやりとする利鋭だった。ニアミスもいいところだ。
この会話も一応録音されているので、出来れば明言は避けて欲しい。
「旦那さんでしたっけ?」
「ああ、ランディね。ランディ・ジョンソン。こっちは本名だぞ」
「そうですか。――彼も見た目で騙されるかもしれませんが、相当に機敏な人ですね。カウンターで立っていた位置って、扉までの有効攻撃圏内ですね。あの中に踏み込むのは躊躇いました」
それが初見で分かったのは、特防課でも利鋭と副島とジーンくらいだ。
海司ですら分からなかった。彼の場合は、そもそも生命体としての性能差で、歯牙にもかけなかったのが本音だが。
「そんな人が心から従っている。それだけ魅力的な指揮官なんですね。エイデルさんも戦闘指揮慣れしてますね。でも、兵士としてはごく普通かそれよりも劣るくらいですね。女の人なら仕方ないですが」
「由美だって女の子じゃん」
「ほら、私デカいですから」
なんでもないことのように言う由美だったが、確かに百七十五センチの長身は非常に目立つ。もしかしたら気にしているのだろうか。
「私、身長コンプレックス無いんで気にしないでいいですよ」
「そうなの?」
「はい。この身長のおかげで色んな事が出来るようになりましたから。ただ、母は小柄なんですが、可愛い服とか着ると羨ましいときもありますが、こういう感じの方が私は好きなんで」
確かにレザージャケットがとても似合っている。
「確かにかっこいいね」
くすりと小さく笑う由美。
「お世辞として受け取っておきます」
満更でもなさそうな笑み。
「そういえば、ランディさんは見事なクイーンズイングリッシュでしたね……」
話を戻した彼女だったが、不意に息を呑む。どうやらエイデル達の正体に気付いたようだ。
十年前とある戦場で一人の女性将校が、祖国が紛争勃発に多大な影響力を行使した証拠を手に入れてしまった。ただの偵察哨戒任務が、祖国を揺るがす事件となったのだ。
元は補給部門の佐官であったはずの彼女が、何故戦場にいたのか。
それは、“国王陛下の裏切者”と呼ばれた姉に対する報復同然の人事であり、特殊部隊の前線指揮官にされたのである。
死か退役か――軍が彼女に与えた選択肢は二つだけだった。
しかし、彼女が選んだのはどちらでもなく、生き抜くことだった。
激しい戦闘の中で、彼女は自身の小隊を巧みに操り、絶望的な戦力差でも生き残り、命からがら派遣前調査活動中の緑の軍隊に保護された。
そして彼女は本名を名乗ることも、祖国に帰ることも出来ずベイランドシティに流れ着いたのだ。
裏切者の妹は、いまや祖国の糾弾者であり、そして自らの仲間達を政治的手腕で守り続ける守護者であった。
「そうですか。彼女がそうなんですね」
しんみりと口にする由美。
「まあね」
「でも、よかったです」
彼女は笑みを浮かべた。
「今はとても愉しそうでした」
そう呟いた彼女の横顔は、この出逢ってから二日たらずの間に散々睨まれたり、拗ねられたりしかされなかった利鋭の意表を突いて来た。
柔らかな喜びのはずなのに、とても儚い寂しげなものに見えたのだ。
何が彼女にそんな風にさせるのか。有体に言えば、利鋭はその横顔に見惚れていた。
「統括官。この辺りですか?」
「ん?ああ。そこのコインパーキングに停めるか」
「了解」
重要参考人の居住地に近い、路肩のパーキングに縦列駐車する由美。
辺りは商店街らしく、通りの左右に軒を連ねる商店が慌ただしく開店の準備をしている。人や車の流れも多くなってきて、どこにでもある普通の朝の街がそこにあった。
「ここで合流するのは、二係の人達ですか?」
「うん。緑営時代の連中」
「緑営ですか……」
「悪いね。由美みたいなエリートにとって、街の自警団なんてゴロツキと変わりないだろうな」
「いえ。副島さんが匙を投げていないなら、見込みがあるということでしょうから」
淡々と返す由美。先ほど浮かべた笑みも儚さも無い。冷徹な指揮官の顔と声。
「そう言って貰えるとありがたい」
数瞬、口を噤んだ由美だったが、思い出したように口を開いた。
「強行係の編制ってどうしてあんなに偏ってるんですか?」
東京湾ベイランドシティ特別区警察本部長直属、特殊防犯課はかなりの大所帯である。本部たる課長と事務係で計六名。路上での指揮管制を行なう情報係は十二名。そして正面戦力たる強行係は一係で二十二名、二係で三十七名。総勢七十八名にもなる。
もちろん、これだけの大所帯となれば他部署との職務権限の重複や侵害もあり得たが、海司が警察本部全体の組織改革を当時の吉岡竜太本部長に進言し、その形にぴったり合うように特防課も組織されている。また、強行係には何名かの警察官も採用されており、互いの交流を欠かすことの無いように配慮しているのである。
しかし、その中で独特なのが強行二係である。副島率いる一係との人数、練度の差はもちろん、構成員が全員利鋭がかつて率いていた湾市緑営という自警団のメンバーなのである。
「一係は一騎当千だからね。軍人でも警察官でも凄い連中ばかりだ」
「ええ。あの中だと紅上君が普通の人に見えます。あれでも居合の達人で、格闘機の長刀を使わせると凄いんですけどね」
海司の招聘に応じた由美に付いて来たのが、驚くことに紅上誠だった。どういう心境の変化かは由美には分からないが、十年近い軍でのキャリアを捨てて退役し、今は副島の元で研修という形になっている。
「その一芸があるから、あの中でもやっていけるんだけど、誠って実戦経験無いんだね」
「緑の軍隊には参加していませんし、シベリアの時は空挺団の派遣は限定的でしたし、楯の叛乱の時はアフガニスタンの山岳演習中だったとか。空挺にも経験の無い人は結構いますよ」
朝鮮統一戦争、シベリア紛争、楯叛乱その他海賊討伐や治安維持活動など自衛隊時代とは比較にならないほどの数々の戦闘を経験してきている日本連邦国防軍だが、全ての兵士に実戦経験があるわけではない。精鋭とされる湾岸軍第一空挺団でも、朝鮮統一戦争時代の兵がほとんど退役した今は実戦経験のある者は四割ほど。陸軍全体で見れば三割を切り、海賊討伐任務の多い海軍は四割だが、空軍の戦闘部隊に関していえば、ほぼゼロなのが実態である。
「そうだよね。米軍だって全員戦争しているわけじゃないもんな。支援任務の方が多いし」
「ええ。むしろ連邦国防軍のロジスティックスリム化は戦闘職種比率を上げましたが、おかげで兵士一人一人が覚えなきゃいけないことは増えました」
戦場での補給整備を簡便にすることで全体の兵数を削減する一方、戦力を増強してきた日本連邦国防軍だったが、兵士一人当たりの負担は決して少なくない。
データギアをはじめとする兵士一人一人が情報端末を用い、情報を共有し合うシステムの構築は戦闘の高度情報化を目指したC4I思想の発展形であるが、連邦国防軍はさらに戦闘車両の砲弾、各種パーツのみならず、一人一人が使う小銃弾やパーツの一つ一つや食事に至るまで可能な限りICタグでの管理を実施した。
これにより、今まで浪費されてきた予算はかなりの削減を果たすことになった。さらに高度情報化と開発時点での整備簡略化重視姿勢により、車両や格闘機のような精密兵器までも簡便な整備ならば使用する職種ごとに自分達で整備出来るようになっていた。
結果、銃弾の無駄遣い等が一目で分かるようになったり、自分達が使う装備への理解が深まったり、それぞれの練度の向上に繋がったのはいい副産物と言えた。
搭乗者がほとんど整備出来ない兵器は、航空機くらいだと連邦防衛省は豪語しているほどである。
「空挺団は凝り性が多いですから、細かい調整を求めて色々やりましたよ」
「機械工学の修士取ったのは?」
「あれは、純粋に興味です。格闘機の整備で役に立ちました」
「なる。長期行軍も基本的に部隊だけで整備するって本当?」
「そうですね。整備中隊に持って行くのは交換修理が効かなくなった時ですね。それでも一ヶ月も行軍すると隊内の稼働状況にばらつきが出て来るんで頭を悩ませました」
ちなみに、そういう大規演習はどこで実施されるかというと、以前は基本的にアメリカのみで行なっていたが、今では現地との交流を目的にイラク、アフガニスタン、ソマリアの緑の会議国でも行なわれる。東南アジアやオセアニアの兵をそれらの地域に招くなど、軍事交流は非常に活発である。
「稼働状況?一ヶ月も行軍しておいて稼働率の心配しないの?」
「戦闘定数は常時維持。即時戦闘行動に入れます」
さらりと応える由美だったが、専門の整備員の手を少なくさせながら、格闘機や車両の稼働率を維持し続けるということがどれだけ凄いことか彼女は理解していないのだろう。
実際、二〇四五年のシベリア紛争では猛吹雪のなか戦闘を開始したにも関わらず、連邦国防軍が派遣した五千名の陸軍部隊は八割の戦力を戦闘に動員し、さらにその八割が生還を果たしている。地元であるはずのロシア軍でさえ稼働率は六割であったにもかかわらずだ。
ただ技術的に優れているだけではこうはならない。士官から一兵卒に至るまで、豊富な知識と高い意識が教育されているということだろう。
「ああ、そういうことね」
「なんですか?」
「それも含めての由美なんだろうな」
意味が分からないというように首を傾げる由美。本人は分かっているのだろうか。その仕草は意外にも子供っぽく、非常に可愛らしいことを。
利鋭はそれを意識しないように言葉を続けた。
「二係は、現状では集団戦闘とコネと経験を活かした捜査活動に重点を置いてる。この街のことなら隅々まで知ってるからね」
「湾市緑営でしたっけ?」
ベイランドシティ南部、ベイランドシティ国際空港に隣接するサウス地区に拠点を持つ自警団組織、それが湾市緑営。
華人の流入が激しい同地区では、中華系――利鋭に言わせると中華系ではなく、共産党系――マフィアの李門の専横が甚だしい。彼らは暴力と薬物で街を支配しており、連邦本土の暴力団とも協力関係を持っているなど絶大な力を持っている。エイデルが李家と称したのはこの組織のことである。
彼らに対抗するため、反共産党組織の一員だった利鋭たちが組織したのが湾市緑営だった。基本的には武装組織だったが、学生運動でもあった反共産党運動の一員だった彼らは、いずれの構成員も教養が高かったので地域の子供達に教育の補助をしたり、商店の経営について協力したり、一自警団としては異例ともいえるほど地域に貢献していた。犯罪組織に対抗するには、地元の人達の力を糾合することが必要と考えていたのだ。
現在は、特防課の活動拠点を置くことで自警団としての役目は譲り、互助組織、教育機関としての活動を主にしている。
「そう。一係は一人一人凄いし、新装備の理解もあるけど、多人数戦闘には向いていない奴も多い。二係は逆に複数人で行動するのが前提だけど、装備の理解や運用ではまだまだ。由美にはそういう連中の教導をお願いすることになると思うよ」
「……私が二係を?」
表情は変わらないが、驚いたらしい。
「うん。よろしく」
「私でいいんですか?」
謙虚な言葉だ。そこに他意は無いのははっきりしている。
自分の才能を過信していないのはいいことだ、と思う利鋭だった。
「うん。実力があって知識があって、そのうえで教育出来る人だから」
「おだててます?」
「それくらいで木に登るような子?」
言い返されて少しムッとする由美。
「それにね、特防課には残念ながらいわゆる戦略眼を持ってる人は現状一人しかいない」
また、可愛らしく首を傾げてしまう由美。さすがに今度は利鋭の頬も緩んでしまった。
「中長期的に特防課がどんな風に活動し、それに見合った装備、組織が必要なのか考えるのは、確かに市警本部だけでいいかもしれない。海司もほとんど現場に出ないのは、それに専念しているからだ。だけど俺達は、ただの警察官なのかな?」
「それは課長が生かされている目的ですか?」
鋭く返され、苦笑を浮かべる利鋭。そこまで理解してここに来た彼女の姿勢にも驚きだが、生かされているというのも言い得て妙だった。海司は苦難の道を歩んでいるのは確かだ。
だが、彼は失敗してしまった自分と自分の兄弟達の有用性を証明しようとしているのだ。
「由美。それはあいつ自身が選んだ道でもあるんだよ」
海司のためを思うのはいいが、それで誰かを責めるような言い方は筋違いだと利鋭は思っている。
彼女は口を噤み、小さく頷いた。彼女もそれを理解していた。ただ、少し不満はあるようだ。
しかし、不思議だ。面識は少ないはずなのに、由美は特防課員並に海司という人間を理解している気がする利鋭。
――例の演習の時、何かあったのかな?
「俺達の闘いに関して、俺はまだ由美には詳細を告げることは出来ない。――海司はその立場上いつ今の地位を剥奪されるか分からない。そのために、俺達の側にも戦況を正しく見極める目が必要だよね?その養成を強行係全体に広げる役割も担ってほしい」
武士という概念は日本特有のものである。西欧の騎士とは似ているが異なるものだという考えは以前よりあったが、利鋭は別の考えを持っていた。
日本の武士は、実は六百年に亘ってこの国の統治者であった。確かに、政権は変わったかもしれないが武士によって統治されていたのは変わらない。その間に、武士は統治の技術、理念を積み上げ集合離散を繰り返し、戦国時代には軍事技術が最高潮に達し、江戸時代には最大最強の統治軍事組織となったのである。決して、二十世紀に一部の人達が言っていたような戦争バカではない。それでは六百年も支配できるわけがないのだ。
そのために武士に必要なのは武術だけでなく、高い教養、粘り強い精神、広く物事を見る視野なのである。
明治期に下野した武士が行なった事業が太平洋戦争後、そして現代に至るも連綿と続いているのは、そうした武士の目による士族的経営の賜物と言えるだろう。
かつての自衛隊がさり気なく、もののふ――武士という言葉を使ったのは、そういう政治的な広い視野も持って任務に当たらんとする姿勢を指していたのではないかと、利鋭は考えている。
特殊防犯課に必要なのは、ただの人殺し機械ではないのだ。社会に与える影響を考慮に入れて、自分の任務に当たることが出来る者達なのである。
由美は先のダンクシュートで、そういうセンスを人並み外れて持っていることが証明された。それゆえに副島も将としての彼女の才能を認めているのだろう。
「分かりました。私自身も色々知る必要がありますね」
「悪いね。色々押し付けているようで」
「いえ。ただ、疑問に思ったのですが、統括官はご自身は戦略眼をお持ちでないと?」
「ん?俺?俺はね、兵士でも、戦士でもないよ。もちろんテロリストでもね」
「は?」
「俺は、経営者なの。それは昔も今も変わらないよ」