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息抜きで書き始めたのでサクッと終わる予定です。なので何も考えずにサクッと読んでくださると嬉しいです。

 私はここまで生きてきたことを呪いたくなった。いいや、この学校に入学したことを呪いたくなった。

 今日、入学する高校の門を見て私はその場で叫ぶのだった。


「うぁぁぁ、転校してー!」

「いきなりどうしたんだ、紫陽花(アジサイ)


「紫陽花」というのは私の名前だ。なんでこんな名前を付けたんだよ!と皆は思うかもしれないが、仕方ないんだ。

 だってここは私が前世でやっていた乙女ゲームの世界なんだから!

 記憶を思い出したのは今さっきで、隣で私の叫び声に突っ込んだのは父親である。

 父親の名は「月下香(ゲッカコウ)」だ。もう鼻で笑ってくれ。


「私、帰らせて頂きます!」

「せっかく、苦労して入った学校なんだぞ。いいのか?」

「いいんですよ、それより早く私は逃げる準備をしなければ!」

「……何からだ」


 この学校から逃げなくてはいけない。正確に言うならば「この学校で友達になる人の父親から逃げなくてはいけない」だ。

 勘がいい人はお気付きかもしれません。この私が転生した乙女ゲームの名前は『友達の父親に恋~火が付くほど危険な遊びという名の浮気の快楽に溺れて~』という。やけに長いタイトルにいけないワードが入っているのが特徴だ。

 そして、この乙女ゲームはタイトル通りの乙女ゲームである。そして、私はその乙女ゲームの主人公に生まれ変わったのだ。


「なんで、なんで、友達のお父さんと不倫しなくちゃいけないんだよぉおおお!」

「なんだ、そんな夢を見たのか?」


 違うのだ、違うのだよお父さん。娘は今まさにやってはいけないことをしようとしているんだ。ゲーム通りだったら。

 だけど、私はこの乙女ゲームのことを思い出した。いや待てよ、このゲームを思い出したのは私がこのゲームをしていたということになるのか?そうしたら、私はこのゲームが好きだったということになるのか。


「そんなの自分を許せないって!」

「さっきから俺の娘は大丈夫だろうか」

「大丈夫じゃないよ、お父さん!」


 さぁ、今すぐ帰ろうか。私のオアシスである家に帰ろうか。

 家が一番落ち着くし、これからどうするかを考えられる。うん、そうだ家に帰ろう。善は急げと言うし。


「お父さん、私は凄くおかしいから家に帰ろう。今日は帰ってゆっくり休もう!」

「そうだな、入学式が終わったら帰ろうか」

「私は今すぐ帰りたいです!」


 お父さんは私の話をスルーして受付をしているところに行く。私はどうしようも出来ずに仕方なしにお父さんに付いて行った。


 ここでこの乙女ゲームのことを少し話しておこう。

 タイトル通りの乙女ゲームで、友達というのは高校で出来る友達のことである。その友達のお父さんと出会い、火遊びをしてしまうというゲームであったりする。

 よくこんなゲームが世に出てきたなと感心までしまう。だって、攻略キャラが全員、友達のお父さんなわけだ。駄目なゲームだろ、教育によくない。


「友達のお父さんかぁ……ん?」


 友達のお父さん?そうだよ、タイトルにも「友達の父親」と書かれている。私が友達を作らなければいいことなんじゃないのか。

 友達がいなかったら高校は楽しくないが、これは仕方がないことだ。私は誰からも恨まれたくないし、不倫もしたくない。


「よし、私は決めましたぜー」

「今度は何を決めたんだ?」

「ふふふ、私は友達なんか作らない。そうすれば安全な生活が保証されるってものよ!」

「紫陽花、お前は……」


 ドヤ顔でお父さんに宣言したことにお父さんは呆れ顔で私を見つめている。それでも私は自分が考えたことは正しいと思っている。


「よっしゃー、私はイケない道を選ばずに済みそうです!」


 やったね。これも私が頭がいいから考え付いたことなのよ。これでお父さんも私が不倫したとかそういうのに頭を悩まさずに済むのよ。私に感謝しなさい。


 さっきの落ち込みぐらいとは打って変わって、今度はテンションが高すぎておかしい。そんな私を心配そうに見つめるのはお父さん以外誰もいない。


「紫陽花は友達がいなくてもいいのか?」

「いいよー、それよりも私は大事なことがあるのだ!」


 私が友達のお父さんと不倫すると私にとっても私のお父さんにとっても為にならない。私はお父さんに迷惑をかけてはいけないのだ。

 だって、お父さんは私の本当のお父さんじゃない。本当は私のお母さんの弟さんなんだ。私にとって叔父である。

 そんな叔父さんが私を娘と呼んでいるのは私が寂しくないように。小さい頃に両親が共に不倫していて、二人とも私を置いて家を出て行った所為だ。


「ちょっと待って、私って昔から不倫とかそういうことに好かれてるの!」

「大丈夫か?」

「大丈夫じゃないって何度言わせればいいのよー!」


 私は昔からこの乙女ゲームに囚われていたのか。今頃それに気付くなんてあり得ないだろ。

 てか、なんでこのゲームの主人公は両親が二人とも不倫してたのに自分もしようとか思ったんだよ。友達のお父さんと不倫とか駄目だろ。イケないだろ、主人公の性格最低だろう!

 もしかして、不倫していた両親に対する復讐なのかもしれない。残された者の気持ちを違う人にも味わってもらいたかったのかもしれない。

 そうだとしても、主人公の性格悪すぎだろ。あっ、主人公は私だった。


「もう最低だよー、お父さーん!」

「あぁ、よしよし。可哀想に」


 公衆の面前でお父さんに抱き付く私の頭を撫でてくれるお父さんはまじ優しい。これぞ、お父さんだ。

 だけど、私はお父さんに甘えてはいけない。そう分かっているのに今だけは、と甘えてしまう。

 お父さんには優しい恋人がいるのに、私はお父さんに甘えすぎている。ごめんね、お父さん。恋人がいるのに私のお父さん役をしてくれて。




 だけど、私こそ紫陽花はこの乙女ゲームのことを少ししか思い出していなかったのだ。

 なにせ、このゲームの特徴は「不倫、浮気」だ。

 私のお父さん役をしてくれている叔父さんが、まさか隠し攻略キャラなんて今の私には分からないことだったのだ。

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