真琴の過去
今日は水曜日。また一週間が始まる。
仕事の都合で、わたしの一週間の始まりは水曜日。
朝(というか昼)起きると、真理から謝罪メールが来ていた。
謝るくらいなら、しなければよかろうに。
達也からの連絡はなかった。
気兼ねして連絡して来ないのだろう、
いつものように平和な携帯に戻った。
ここで少しわたしの過去について話しておこうと思う。
生まれも育ちも今の生活もこの地。
勝手知ったるナントヤラ。ただ、両親は他界して兄弟もいないから
天涯孤独ではある。親類とも連絡は取ってないしね。
恋愛には奥手だったのだと思う。
興味がなかったと言えば嘘になるが、男をそういう目で見る
という機会には恵まれてはいなかった。
達也はそういう意味では、数少ないトモダチの1人で、ずっと
幼なじみで、もちろん男と意識したこともない。
そんなわたしが大恋愛したのが20のとき。
もうこの人無しでは生きていけない、そう思っていた。
彼はわたしのことを何でも理解していた。
口数はどっちかというと少なくて物静かな、それでいて
頼れる人だった。
わたしはどちらかと言うと勝気で、あの人にいつも無理難題
を言っていたと思う。
それでも彼はわたしに呆れることなく、
ケンカになるようなこともなかった。
どんなにわたしが悪くても、彼は自分から謝り
わたしを諭すように自分の気持ちを話してくれた。
そして、いつもわたしのそばに居てくれた。
わたしはそれが当然、というある種恋愛の傲慢な部分に
支配されていたのだろう。それでも今思えばとても幸せだっと思う。
彼を失ったのは今日みたいな本当に寒い日だった。
最期の言葉を未だに覚えている。
それ以来、わたしは家に引きこもるようになった。
大学を卒業して、就職してもそれは変わらなかった。
それこそ毎日死ぬことを望んで生きていた時期もあった。
けれどもそのたびに彼の最期の言葉を思いだして
毎日の生活をこなしていた。
達也も真理もはわたしが引きこもりになったときには
いろいろと励ましてくれていた。
もちろんそれには感謝している。
わたしの中にはあの人でいっぱいな自分がいて、
恋愛がどうとか他人がどうとかそういうことを考える
余裕がなかった。
達也には幸せになって欲しいし、真理にもそう思う。
だから、わたしに関わらなくていいのに。わたしを忘れて
くれていいのに。そう思う自分がいる。
だからきれいごととかじゃなくて、このまま達也とは
縁を切っても問題はなかった。結婚するなら尚更だと思う。
何か問題が起きるとは思っていないが、達也の気持ちが
お嫁さんに向いていないのならば、そのほうが達也のためだろう。
新しい門出のときに、納得できない理不尽な縁の切り方を
したら寝覚めが悪いだろう、と思っただけである。
だから自分からは連絡しない。今も、これからも。
このまま連絡が無くなってくれるほうが、わたしには都合が
良いのだと思う。
薬を飲んで横になる。もう12時を越えた。
明日は朝早いから、そろそろ寝たほうがいいのだろうが
こういう日に限って眠れなかったりするのが人間なのだろうな
とふと思ったりした。