火曜日の休日-後編-
シャワーを浴びてその辺を片付ける。
読みかけの小説やらパーカーやらカットソーやらあれこれ散乱中・・
以前、真理には
「この部屋、何か産卵してそうじゃない?」
と言われたけど、うまいこと言うなと感心した。
まぁ部屋がキタナイのは別に気にしないわたしだし、いいんだけど
達也のことをあれこれ詮索というか尋問というか根掘り葉掘りされる
のはメンドクサイ。
あれはヤツがマリッジブルーになって、酔った勢いで変なこと言った
だけだと認識してるけど。
メールが女々しかったから心底、あほめ、とか思ったし。
もうすぐで真理が来るですよ・・玄関のカギだけ開けとこう。
で、真理がコンビニ袋片手に登場。
「あ!もうこんな散らかってる!!」
すみません><そこはもう慣れてください><
「これおみやげね!」
おにぎりとおにぎりとパン。炭水化物だらけじゃないですか・・
「あ!お茶もあるよ!」
ありがたう・・・でも横になってていいかな?
「無理しないで・・横になってね」
ありがたう・・・今日は女神さまに見えるよ、まりへー。
「あ!洗濯とかしようか?」
いえ、お気になさらず・・TVでも見ててくだされ。
「あ~この時間ってあれよね?ニュースしかやってないよね?」
どうでしょうね。TVあんまり見ないからわかんないです。
「今日は真琴心配だし、いいよ!そばで介抱する~」
いえいえ、もう放置でも良い感じです。
「だって心配だもん」
そか~ありがと~まりへ~
こんな感じで和やかにやってたんだけど・・・
さすがにお客さま来てるのに、PC触れないじゃない?
だからわたしは小説を読んでたんだけど、真理はずっとわたしの顔見てるのよね。
さすがのわたしもちょっと気になるし・・
どしたの?って声かけたら、やっぱり達也の話が始まったのだ。
「達也が連絡しても返事もなにも来ないって言ってたよ?」
真理は達也とわたしの間の出来事を知らないのだろう。
体調悪いのも手伝って連絡する気も起きない。
「少し体調悪かったから・・・」
「それでも電話くらい出れるんじゃない?」
ま、そりゃそうなんだけど。そこはなんとなく察して欲しい。
「まぁちょっといろいろあって・・・」
「いろいろって?」
じっと顔を見つめてくる真理。
そこまで掘り下げてくるかっ><
幼なじみの悪口というか陰口は気が引けるし、本当のことは
言わないでおいたほうがいいとわたしは思うのですよ。
「お仕事とか体調とかあって、ずっと死んでたから・・」
「ふぅん・・・」
とりえずこれで押すことにする。
これ以上は言いようがないですよ、という顔をして真理の顔を見たら
なんか考えごとしてるような顔になっていた。
これ以上は触らぬ神に祟りなしですよ・・とばかり
ベッドに潜って横になる。
真理は考えるような顔をしながら携帯でメールを打ち出した。
メールは少し気になったけど、達也なら達也でしょうがない。
今度女々しいメールきたら「メールしてくるな、このあほめ」とでも
打ち返してやろう。
で、不覚にも来客中なのに凄まじい睡魔に襲われるわたし。
そしてそのことが一生の不覚の1つを呼ぶ。
どうして真理の前でうとうとしてしまったのか><
とりあえずこの文章では説明出来ない事態が起きて、
さきほど真理は帰って行った。
大学からの付き合いで真理の性癖を知ってたけれど
大学のときの飲みでわたしが酩酊になって以来だったから
うっかり気を許していたのだ。
きっとこれを読んでいる人は何が起きたか分からないだろうけど
わたしはかなり自己嫌悪してるですよ・・・
またシャワーを浴びて活動を再開する。
もう今日は体力的にも精神的にも家からは出れないだろう。
となれば、たまっている小説のプロット構想や文献調べ。
今、詩を書いたら一直線にダークサイドに行ってしまいそう。
そしてまさに書いている最中に携帯の着信音が鳴った。
「着信:山岸達也」
死ぬか?お前。
今、こんなモードのわたしに電話してくるとは無謀にもほどがある。
とりあえずわたしとヤツのためにスルー。
着信音が20くらいで切れる。やけに粘ったな。
そうして再びディスプレイを見ながらキーボードを触った途端にまた着信。
「着信:山岸達也」
お前、わたしと余程縁を切りたいと見えるな。
数少ない幼なじみという名のトモダチと縁を切るというフラグが
わたしの心の中で立っている。
いやいや、人間の欲望なんて黒いものですよ。
他の女を孕ませて告白とか心配と称して同性に襲いかかるとか。
自分の欲望を優先させるあたり、人間も動物の一種なんだと
感心さえしますよ。
まぁどちらもきっとわたしに隙があったに違いないですよ。
また20コールくらいで着信は切れた。
今度鳴ったら、モウオシマイダヨ、キミ。
どこかの悪者の重役になった気分で呟く。
別に今となったら着信きてもいいけどね。
冷静に縁切れるよ、きっと、うん。
そう思っていたら、ああ、きたきた。
男ってこんな女々しいもの?未練たらしいというか、なんというか。
そう思いながら久しぶりに達也の電話に出た。
「もしもし」
「あ・・もしもし」
「何?」
「具合悪いみたいだってまりへーから聞いて・・」
「うん。だからしゃべるのもきつい。切りたいのだが」
「あ、じゃあ近くに居るから部屋行っていいか?」
あほか、お前。
「遠慮して欲しい、しんどいから」
「お見舞い行くから」
「いや、本当に勘弁して欲しい。今は誰とも会いたくない」
「俺のせいか・・・?」
「それもあるが、いろいろだ。きついから切る。またね」
「あ!まっ・・・・」
そこで電話を切った。
近くに居るって言ってたから、押しかけてくる可能性があるかも
知れない。とりあえず電気を消して真っ暗闇の中でPC。
今日はもう何もないことを祈ろう・・なんだか休みだというのに
激しく疲れてしまったのは神様の呪いなのかもとか真剣に思ったりした。