結婚式の日-後編-
は?
わたしは耳を疑ったよ。結婚式の当日の、幼なじみの新郎に告白されたことを。
「酔っ払いか。少し頭冷やせばいいぞ」
「いや、酔ってはいるが、そこまでじゃない。言っておかなくちゃ、と思って・・」
思うのは自由だが、行動は矛盾してないか?お前の結婚式だろう?
「あ~わかったわかった。まぁ静さんと末永く一緒に幸せになりたまえ」
わたしは軽くスルーして横を通り過ぎようとする。
そしたら酔っ払いはわたしの腕を握って離そうとしない。
「・・・ずっと好きだったんだ」
何の感傷に浸っているかは知らんが、結婚式の当日に他の女にそういうことを言う
のはどうかしてると思うぞ?
「まぁまて、落ち着け。今日は結婚式だよな?お前の」
「ああ・・・」
「なら、わたしは今の話を聞かなかったことにする。お前も忘れろ」
「・・・・・」
「どうかしたのか?好きだから結婚するんだろう?」
「子供が出来た・・・から」
いわゆる出来ちゃった婚か。まぁそれも結婚の形としては別に珍しくもない。
「なら余計いいじゃないか。産まれてくる子供のためにも2人で幸せな家庭を築かないとな」
「でも・・好きなのはお前だ、真琴」
あ~~~イライラしてきた。
きっと自分は悲劇の主人公で、一番好きな相手とは結ばれずに望まない結婚をする、という
感傷にでも浸っているんだろうが、女を抱くという行為に対して子供が出来たという結果が
伴ってるんだから、責任取んなくちゃダメだろう?
だから自分が誰を好きでも、それ言っちゃダメに決まってる。
「今日はさ・・だからそばに居てくれよ・・・真琴・・・・」
あ~~~ほんっとイライラしてきたですよ。
どんなフラグがあんたに立ってるのか知らないが、わたしゃその気ないっつの!
「ちょ、酔っ払い、手離せ」
「いやだ。。離さない」
「いいから離せ」
「離せばお前、逃げていくだろう?」
当たり前なことを言うな。もうとっとと帰って小説でも書いたほうがまだマシ。
「そばに居て欲しいんだ・・・」
静かに右手でグーを作る。
そのグーを達也のほっぺた目がけて力いっぱい炸裂させた。
「いてええええ」
怯んだすきに達也の手を振りほどく。
「少し目を覚ませ。とりあえずわたしは帰る。お嫁さんによろしく」
そのまま店の出口に向かう。少し怒りさえ感じる。これだから男は嫌いだ。
で、今日の夕方にあったのがそれで、今はしつこく鳴り続けている携帯に閉口している。
「着信:山岸達也」
軽くスルーですよ。さっき、といっても10時くらいには家のベルも鳴ったけど
軽く居留守。ちょっとというかかなりうんざりした。もう1時だし非常識すぎるだろ。
男ってのは、どういうもんなのかね・・好きでもない相手を抱けて、で、子供できて
結婚ってそんなに悲劇なもんかね?それはそれで幸せになる方法見つければいいんじゃ?
とか思っちゃう。
そもそも子供出来ちゃうような抱き方をして、それで他の女に告白とか・・
ネジ1本飛んでるんじゃないか、とか思っちゃったよ。
ともあれ、携帯の音もバイブも切って今日はもう寝ることにする。
おかげでいつもの小説が全然書けてない。きっと明日には何もなかったことに
なりますように・・・少し祈っておくことにした。