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結婚式の日-前編-

 男の人って幼なじみに何かのフラグがあるって聞いたけど、女にはないなあって思う。


 今日、あいつが結婚しました。保育園時代からの幼なじみ。

別に何のカンガイもないんだけどね。まぁおめでとうって感じで。

わたし自身にはえーえー、どうせカレシもいない20代後半。

先にいかれたなあってくらい。

親しいっちゃぁ親しいから、2次会の案内が来てた。

ヒマだったからカラカイにいこうかなって軽い気持ちで行ってしまったんだけど、

まぁ・・・なんと言うか・・・

行かなかったほうが良かったと後悔しちゃったわけで。

事の顛末はこんな感じ。


「おお~真琴、来てくれたんだ!」

お洒落な洋風ダイニングの一角。男たちのグループと女たちのグループとが

両端の隅に陣取っている。

「あ~うん。今日はおめでとう」

「うん。ありがとう!」

こいつが幼なじみの山岸達也。保育園からずっと学校が同じ腐れ縁。

「あ、嫁さん紹介しなくちゃな・・静~~」

お嫁さんの名前と思わしき名前を叫びながら女たちのグループに突撃する達也。

そのうちの1人、長髪で可愛らしい感じの女の人がこちらにやってくる。

「五十嵐真琴さん・・・?初めまして。小野静と申します」

「あ、はい・・初めまして」

「いつも達也さんから話は聞いています。2人は幼なじみですって・・・?」

「あ、うん。そうですね。保育園からの知り合いです」

「そうなんですか・・珍しいですね。そういう幼なじみっていうのも」

「そうですかね・・どうなんでしょう」

「いつも話しは聞いてましたよ。真琴さんのお話」

達也はわたしの何を話してたというのだろう?

「時には話題があなたの話ばかりで・・」

こらこら、恋人に他の女の話題をするなよ!

「少し・・妬いたりもしてましたのよ」

少しだけ睨まれた気がした。おいおい、こっちにはその気はないって・・

そもそも達也にもそんな感情はなかったに違いないですよ!

ずっと一緒にいるとまさしく兄弟にしか思えませんですし。

「はは・・そうですか・・・」

「今日はごゆっくりと過ごしてくださいね」

今度はにっこりと笑顔になる。わたしなんかより可愛い人だなぁって思った。


 2つの男女グループは達也の友達と静さんの友達たちだろう。

わたしは深く考えずに適当にその辺に座る。

そしたら、達也が

「真琴、そんな端っこに座ってないで、こっちこいよ!」

自分の隣の席をぽんぽんと叩く。ここに来いと言うのだろう。

深く考えずに案内された席に座る。周りの男連中も一部は見知っている顔。

だから何も考えてなかった。

「何飲む?今日は飲めるんだろ?」

達也がからんでくる。もう既に結構出来上がっているみたい。


適当にメニューを見てたら、視線がわたしに突き刺さっているのに気づいた。

ふとその視線の先を見るとさきほどの静さんが少し睨むようにわたしを見ている。

視線を合わせようとすると視線を外される。

おいおい・・どういう意味なんでしょうか?

もしかして・・・妬かれているのでしょうか?

こんな無造作に髪を束ねたメガネ娘があなた様に敵う訳ないですし、

そもそも達也とわたしには寸分たりとも恋愛感情ありませんから!

「どした?何にするか決まったか?」

馴れ馴れしく肩に手を回そうとしてくる達也。あほか、お前。

「ファジーネーブル」

持っていたメニューを押し付けるようにしてその手を払う。

おいおい・・静さんの表情恐いんですけど。

「あんたさぁ、わたしの何を静さんに話したのよ?」

「別に・・何にも?」

「というかわたしの話題を静さんとするって何?どんな話したのよ?」

「い、いや・・学校のときはこうだったとか・・そういう話」

少しおどおどしだす達也。酔ってるんだろうけど、ちょっとおどおどし過ぎだろう?


わたしは持ってこられたファジーネーブルを少し口にして、

女グループの方を見る。きれいに着飾った静さんの友達さんたち。

あのきれいさの1/10もわたしにあったなら・・とため息をつく。

まぁ、わたしはわたしだ。休日ともなれば引きこもって小説を書くような女だし

世界が違い過ぎる。

「お前もメガネ外したら可愛いと思うんだけどな」

達也がお世辞らしき言葉を口にする。

「コンタクトにしたらいいんじゃないか?」

「あほか。コンタクトなんてしたらわたしがわたしで無くなるだろうが」

「でも、受けがいいと思うぞ?少なくとも俺にはそのほうが・・・」

「どうして、お前のためにコンタクトにしなくてはならんのだ。

 メガネが楽だし好きだからいいんだ」

「まぁそうだけど・・・」

「まぁいいんだ。受けが悪くても困るもんじゃないからな」

「彼氏には何も言われないのか?」

「そんなものいないからな。居たとしてもメガネは譲らないが?」


「え?五十嵐さん、彼氏いないんですか?」

横から隣の男がよこやりを入れる。

「ええ・・・いません」

「あ、じゃあオレ立候補しようかなぁ」

達也の友達と思わしき男が笑顔でしゃべる。

「オレ、メガネっ娘好きなんですよ」

「ばーか、ダメに決まってんだろ、裕二。お前じゃ真琴に相応しくねーよ」

達也が裕二くんとやらに否定する。なんでお前が否定するんだ?

「そんなの、わかんないじゃないすか?付き合ってみないと」

「だめだめ、俺は認めないね!」

「認めないって・・達也、お前が決めることじゃないだろ?」

「ばーか。俺たちは幼なじみだから、真琴の趣味くらい知ってるわ!

 お前じゃ真琴に相応しくねぇっつの!」

人のことで話盛り上げて、ムキにならないで欲しいわ・・・

そもそも達也にわたしの何が分かるっていうのよ。

そう思いながら視線を女グループに向ける。

あ~・・・なんかすごい顔で睨まれてる気がする。

「ちょ、わたしトイレ・・・」

2人に言い残して席を立とうとする。

「あ、僕案内しますよ!」

裕二くんがわたしと一緒に席を立とうとする。わたしはトイレに1人で行けない

子供かなにかか?

「あ、いえ・・大丈夫です」

わたしは丁重にお断りする。

「いいからいいから♪」

なおも食い下がる裕二くん。

「あ、いえ。本当に・・・」

このまま女子トイレの中にもついてきそうな勢いを押しとどめる。裕二くんも酔っ払いか。

「裕二!真琴が遠慮するって!まぁ座ってろよ!」

おお。ナイスフォローだ達也。そのままお前は裕二くんを確保しといてくれたまえ。

「ん~じゃぁ待ってる~五十嵐さん、いってらっしゃい~」

これだから酔っ払いは困る・・まぁ適当に切り上げて今日はとっとと帰るとしよう。


 貸切のダイニングバーのトイレは奥の細い通路の奥にあった。

用を足して外に出るとそこには程よく出来上がっている達也の姿。

「トイレか?男子トイレなら、ほれ、そっちだぞ?」

こんな通路で吐かれたりしたら、お店どころかわたしにも迷惑だ。

「真琴・・・・・」

いつになく深刻そうな顔の達也。どうかしたのか?お前。

「どした?気分悪いのか?」

「いや、そうじゃないんだが・・」

「なら、男子トイレはそっちだぞ?どいてくれないと通れないんだが」

「真琴・・・・・」

「なんだ?話があるならとっとと言え」

やけにモジモジしている達也。

「好きだったんだ・・・・」

静さんとのノロケか。くだらん。そんなもんは2人の世界でやってほしい。

「ああ、わかったわかった。だから結婚したんだろう?よかったじゃないか」

「・・違う、好きなのはお前だ、真琴」

は?

「ずっと好きだったんだ」



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