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とりとめのないこと

掲載日:2026/06/30

 ワールドカップが開催中である。

「サッカーがなんだい。タマ蹴りの試合を見ていたってしかたねえや」と思っていたが、経過を追う事に熱が入り、ニッポンコールをする始末。

 単純である。この男、いささか素直すぎるようだ。

 発案したのが誰か知らないが、ニッポンコールの気分爽快さ、これはすごいものだ。ひとたび歌いだせば、もうチームの一員である。

 サッカーのことなど何も知らないのに、代表となると、やはり気になる。勝てば嬉しいし、負ければ悔しい。

 軽い気持ちで言っているのではない。悔しがるときは、全的に悔しがるのである。会ったことも喋ったこともない、何の関係もないタマ蹴り選手のために、そうして自分の真心のために、敗北を全的に受容し、目いっぱい悔しがる。崇拝ではなく、偶像でもない。ただただ、全的に真剣である。

 大げさに言えば、生というのも、こういうものではないか。突進、痴態、受容、馬鹿、阿呆、なんでもいいが、とにかく全的が大切である。部分的な生というものはない。観察者気取りは楽だが、さて、彼が生きているかというと、怪しいものである。

 もし衝突が生なら、観察は、生の部分的投棄ではないか。部分にできないものを、部分として投棄するのは、大なり小なりムリがあるようだ。

 そういえば、温泉もそうであった。脱衣所は、どうも心許ない。照れて、急いでかけ湯をしに行く。すると、もう温泉の空気に馴染んでいる。かけ湯一発で、素っ裸が正装である。

 全的かけ湯と、命名するのはどうか。悪くない気がする。勢いがある。他人に迷惑をかけるところも合致している。

 多少の飛沫くらい、許してくれたまえね、諸君。

 そのようにして全的かけ湯を済ませ、どっぷり湯に浸かる。色々面白いことがある。おっさんが素っ裸で、堂々と練り歩いている。これだけでいくぶん面白いものだ。

 湯冷ましのベンチには、精神統一者がいる。顎をすこし上げ、手のひらを上にし、目を閉じて、息を吸って吐きしている。実に様になっている。

 畏敬、尊敬である。自然との合一を、かくも簡単に成し遂げうるか。年季が入っている。やはり、おっさん、ただ者ではない。

 ところで、温泉という場所には、必ずと言っていいほど喫煙所があるらしい。

 数年前(4年前?)、ひょんなことから、外科手術のお世話になった。整形外科である。そのとき肺の機能検査をして、結果、同年代と比較して肺活量に劣ることが判明した。何度やり直しても、駄目であった。あの心配の目には、全的に感じ入ってしまった。

 そういった事情を勘案して、ロングピースを吸っている。美味しいからである。煙量が多く、気分爽快である。

 たまに、肺がキリキリする。精神的、肉体的に疲弊すると、煙草ばかり吸っている。全的喫煙である。

 しかし、ここまでずいぶん好き勝手に話を進めてきたが、題名がそうだとはいえ、いくらなんでも、とりとめのないことをあまり散り散りに書きすぎたようだ。どうも、まずい。あっちこっちへ飛びすぎている。

 とにかく、むやみやたらに生きていたい、それだけである。


 追記


 ワールドカップ。

 我が代表は敗退した。猛攻に耐え続けたすえの、痛撃であった。

 僕はいま、全的に悔しい。それ以外の言葉が見当たらぬ。それ以上、なにを言っても、嘘になる。

 しかし僕は、我が代表を全的に肯定する。敗者の、せめてもの意地である。こう言うと卑屈に聞こえるが、いや、卑屈ではない。実際、肯定するしかない境地というものが存在する。今回の我が代表が、まさしくそれであった。

 全的敢闘である。いまや、あらゆる部分は些事である。

 加えて述べると、まことに勝手ながら、僕は、我が代表を敗退させた彼らに対して、優勝の義務を感じている。

 ついつい、余計なことを書いた。これでは、最後まで締まらない。全的すぎたかもしれぬ。


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