第六話 学校へ!……の前に。
ちょっと遅れましたね。
朝……うん、いい天気だ。空は雲ひとつ無い。
え? 寝坊しないのかって……こんな大事な日は寝坊しないから、さすがに。
けど、朝早く起きちゃったな…………暇だな……。
あっそうだ! ちょっと能力の訓練しよう。
……だって学校で笑われんの嫌じゃん?
俺はいつもの服(全身やけに黒が多い)に着替えると、朝飯を作ることにした。
今日はパンに、目玉焼きでいいや……。
俺はさっさと料理すると、さっさとパンをほおばって、目玉焼きを食って
あらかじめ用意していた荷物をとり、家を出る。
まだ朝は早い。
昨日、この街について質問していたら、街中で許可なく能力を使うのは
厳罰ものらしい。
許可を特にとらなくてもいい場所は学校か、部隊の演習場らしい。
そこで俺は部隊の演習場にいくことにした。
俺はエレベーターで1階に行き、自転車置き場で自転車に乗った。
……なんで自転車があるのかは、俺が紫に連れて行かれる前に、
これだけは持って行きたいと頼んだら、俺とは別ルートでマンションに来たらしい。
ちなみに、『HEAVEN』の中は、外よりも科学技術が発展しているらしい。
だが、自転車や車、その他日用品はあまり変わらないそうだ。
俺は自転車をこいで部隊演習場に行った。
10分位こぐと、昨日行った日本支部の隣にあるデカイ建物が目にはいった。
中はトレーニングの為だけに色々機材が置いてあるらしい。
それと地下には能力訓練専用部屋がある。
能力判定の時の100m×100mぐらいのデカイ部屋だ。
なんでもその部屋の壁も同じようにあの岩からできているらしい。
……俺の能力じゃ練習できねえじゃん!
はぁ、しょうがないから空気を操るだけにしとくか…………。
そう考えながら、駐車場に入っていく。
建物に入ると(もう自由に部隊関係の建物は入ってもいいらしい)受付にいる人に
黒いカードを見せる。
この黒いカードは、昨日見たときはクレジットカードだと思ったが
それ以外にも部隊の証明証となるらしい。
このことは一般人には知られていない。
俺はエレベーターで地下2階のボタンを押す。
エレベーターが降りる感触がする。
そしてすぐチーンと音が鳴ってドアが開く。
俺は降りて目の前にある部屋のドアを開ける。
その瞬間3人程の視線がこっちを向いた。
どうやら先客がいたらしい。
しかし俺はそれに構うことなく、部屋の奥に行って荷物を壁際に
投げて訓練を始めようとする。
しかし、いきなり後ろから声が聞こえる。
「おい、アイ」
ん? この声は……
「なんだ紫か」
紫がいた。その後ろには2人の男がいる。
一方は熱血漢のような筋肉質な男で、もう一方がちょっと痩せてる紫や俺より
若い少年。
「なんだとはなんだ。アイも訓練か?」
「ああ、ちょっと朝早く起き過ぎたからな……
それよりお前どうしたんだ? 学校は?」
「それを言うならアイも同じだろう?
私は毎朝ここで訓練して基礎体力をつけてるんだ。
あっそうだ。後ろの2人を紹介しよう」
すると後ろの2人がこちらへ来て、自己紹介してくる。
まずは筋肉質な男。いや漢?
「俺は突撃1隊隊長の飛騨 燃故だ!
能力は『直線狂走』だ!
お前さんが紫の話してた新入りか!
俺の事は飛騨さんとでも呼んでくれ!」
次に痩せ気味な少年。
「僕は支援2隊隊員の佐屋 明です。
能力は『夢想破壊』です
僕は一応姉さん達の中で一番年下ですがよろしくお願いします。
僕のことは明でいいです」
「俺は御神 哀。
能力は……まだ名前考えてない。
普通に呼べばいい。以上」
ちなみにAランク以上だと自分で能力名を命名するんだそうだ。
ところで……さっきからなにか引っかかるような……あっ!
「今、姉さんって……」
すると明君はこう言った。
「ええ、あなたの言う紫さんは僕の姉です」
「そうなのか……」
なるほど。紫には弟がいたのか……。
そう思っていると、紫がいきなりこんなことを言い出した。
「アイ、もうすぐで訓練終わるけど、一回模擬線やらない?」
「……いいよ。俺は元々能力を練習するために来たんだし」
それに一回他の人と闘ってみたかったし。
ということで俺たちは能力を使った模擬戦をやることにした。
なに? 危なくないかって?
大丈夫だよ。俺は空気を操る練習をするだけだし、それに向こうには
3人もいるし……。
「って、ちょっと何でそっちに3人もいんの?
普通2対2でしょ?」
すると紫が、
「私たちの能力はどれもあんまり戦闘には向いてないのよ。
どっちかって言うと能力を併用したCQCってとこかしら?」
「なるほど、だけど俺は能力を使わせてもらうぜ」
「当たり前よ。あなた、まだ近接戦闘できないでしょ。
せいぜい路地裏の喧嘩ぐらいだし」
ぐっ、なんかむかつくけど言い返せない。
「さ、とっとと始めようぜ」
と飛騨さんが言ってきたので俺達は戦闘態勢に入る。
「先攻はお前にくれてやるよ」
「いいんですか? そんな事言って」
と俺は挑発しながらこの部屋内の空気を掌握していく。
途端、部屋内の空気の流れの向きや速さが大量の情報として
頭に流れ込んでくる。
……これは、ちょっとしんどいな。
と考えつつも情報を整理し、能力を使う。
紫の言った、脳が能力の使い方を覚えてると言ったのはこのことだろうか?
俺は先攻をくれてやると言った飛騨さんめがけて、まずは
風速20mもの突風をくれてやる。
ちなみに風速20mは普通の台風ほどの風だ。
まあ、けど一応隊長クラスだし、問題ないだろ。
と思っていて飛騨さんの方に目を向けると、そこには
飛騨さんは居なかった。消えたのだ。
何もないところに突風が吹き、そのすぐ横にいる佐屋姉弟は風の余波で飛ばされないようにしている。
俺は視線を真正面に戻すと、そこには、
飛騨さんがいた。
遠いとかじゃなく、すぐ目と鼻の先に。
飛騨さんは俺が呆然としている隙に
俺の鳩尾めがけてパンチを繰り出してきた。
俺はそれをとっさに手で防御するが、
相手は結構な大男だ。
力が足りず吹き飛ばされてしまう。
俺は受身を取り、体勢を戻す。
が、しかし、地面から顔を上げたその瞬間。
そこには、また真正面の目と鼻の先に、飛騨さんがいた。
俺はそのことにまたも驚き、防御の手を緩めてしまう。
が、攻撃せずに後ろへステップでひいた。
俺がなぜ?と考えるより早くその答えが帰ってきた。
俺は本能でその場から横へ飛んだ。
その瞬間、そこをパンチが通り過ぎる。
後ろを見ると、佐屋姉弟がいて、次々に攻撃を仕掛けてくる。
俺は紫のキックをかわす。
しかし、それに油断した俺は明に手のひらで触れられる。
そして、次の瞬間、俺は倒れた。
なにが起こったのか分からない。
俺は起きようともがくが、できない。
いや、分からないのだ。
その他は全て思考は普通なのに、まるで脳にある
情報の中から『立つ、バランスをとる』という行為のやりかた
だけ切り取られたような、そんな感覚。
すると明の声が聞こえる。
「僕の能力は『夢想破壊』。これでも一応Aランクですから。
能力の効果は、この手のひらで触れた対象の『思考』を10秒だけ抜き取る能力です。
もうそろそろ立ち上がれますよ」
そう言われたので立とうとしたら、あっさりと立てた。
「……すげぇな。俺の完敗だよ」
俺は完璧に3人の連携にしてやられた。
能力などの問題ではない、単純に力量の差だった。
しかし、一つ腑に落ちない事がある。
「でも、飛騨さんの能力はなんだったんだ?」
そうすると飛騨さんが答えてくれた。
「あれが俺の能力の『直線狂走』だ。
どういうものかは、ちょっと予想してみろ」
そういわれても……いきなり目の前に来たと思ったらパンチで
吹っ飛ばされて、そしたらまた目の前に居るし。
あれはなんだろう?
そう考えるが、俺はやはり分からない。
「空間移動系能力ですか?」
すると飛騨さんは首を横に振る。
「なんで俺の能力を初見した奴はみんなそう言うのかね……。
俺の能力をあんな『逃げ』の能力と一緒にするなよ」
しかし空間移動系を『逃げ』とは、なんか飛騨さんらしい。
「俺の能力はな、自分のいる位置から直線上なら
最高の速度の走りができるってやつだよ。さっきのは時速80kmな」
滅茶苦茶な能力ばっかりだな~と思いつつ紫と学校に行く
準備もする。
「じゃあ、一緒に行くか!」
「うん。じゃあ行こうか。」
俺と紫は飛騨さんに挨拶して訓練場をでた。
やっと戦闘がかけました。
初めてなんでなんか変なとこがあったらいってください。
ちなみにCQCは近接戦闘用体術みたいなものと
思っていただければ……。