第四話 俺の能力……の正体
なんか短いですねやっぱ。
やっと能力が出てきます。
「「嘘……」」
しばらく部屋内に沈黙が流れた。
放送を流していた受付のお姉さんにもこちらは見えているのだろう。
向こう側からは何も聞こえない。
「「「……………………」」」
最初に沈黙を破ったのは、紫だった。
「ちょっと、あなた何をやったの?」
「いや、だから、その、紫にアドバイスされたように
集中して能力を使おうとしただけだけど……」
いや、俺は本当にそれしかしていないのだが……
はっきりいって俺は無自覚だ。俺は無実だ!
「……まあ、まずはこの岩をどうするかだけど。
知ってる?この岩って実は能力測定用に、極めて人工的な素材で強力にできてるの。
結構なお値段だと思うわよ。何しろ『HEAVEN』内だけの技術だからね」
「………………」
その言葉を聞いた瞬間、俺の精神はフリーズした。
「? おおーーーい! 大丈夫?」
紫は話しかけるが反応が薄い。
「はははははは……弁償……」
そんなことを考えている俺に紫から救いの手が!
「あのーー、アイ? もしかしたら、本当にもしかしたらだけど
あなたの能力で粉々になったのなら、また元に戻せるんじゃないの?」
「はぁっ! その手があったっ!」
「えっ。ちょっと、まだできると決まったわけじゃ……」
俺は紫が何か言っているのを気にせず、元は岩だったものに手で触れ、集中した。
その瞬間、また蒼い光が包み込み、砂が輝く。
そして光が最高潮に達したとき、それは起こった。
「「は……?」」
また俺と紫が同時に呟く。受付のお姉さんはもう
何かを諦めているようだ。
そこには…………
液体があった。
今の一言では何も分からないだろう。
詳しく説明すると、俺がさっきまで触れていた砂が
茶褐色の液体になっている。熱してもいないのに、まるで無理矢理
物質同士の結合を引き剥がしたような曖昧な液体。いや、粘体だろうか?
ともかく、言うならば固体と液体の真ん中ぐらいにある物質ということ。
…………多分。
「あなた……やっちゃったわね…………」
紫に死の宣告をされたも同然の言葉を言われた。
その言葉に俺が悶絶して呻き声をあげていると、部屋の隅から誰かの
言葉が聞こえた。
「ほう。これはすごいじゃないか。私でも始めて見る能力だ」
その声に紫は反応して、後ろに振り向く。
俺は紫の視線を追ってその方向を見ると、一人の男が立っていた。
(えっ、いつの間に?)
と俺が考えていると、紫が言った。
「えっ、あ、は? あっ総隊長?」
「は……え……総隊長さんーーーーーー?!」
俺がつい大声を上げていると向こうから挨拶をしてきた。
「やあ、はじめまして。私が”UnInstall”部隊総隊長の無骸 零だ。
新入りくん。君が御神 哀君だね?」
「あっ……はい」
「あの、総隊長、どうして此処に?」
「ああ、仕事も一段落ついたので、久しぶりの登録者に興味を持ったんだよ」
「ん? 俺にですか?」
俺がそう問うと、総隊長さんは、ああ、と言って話を続ける。
「君の能力を見せてもらったよ。さっきも言ったが、その能力は
私でさえ見たことがない。
そこでだが……紫くん。君の能力の使用を許可する」
紫の能力? と俺が疑問に思っていると
紫が少し逡巡した顔を見せたが、こちらに来た。
「あなたの能力は未知数よ。機械が測定できない程に。
能力の正体が分からないと、とても危険なので最後の手段として
私の能力、『精神喰人』をつかわせてもらいます」
「『精神喰人』?」
俺がちょっと物騒な能力名に身震いしていると、
「大丈夫よ。ちょっとあなたの精神の奥深くまで行って
能力の情報を引き出すから。
たとえ心がそれを認知していなくても、脳にはちゃんと情報が記録
されてるの」
紫が説明してくれた。俺の能力がどういった
ものか分からない今、紫の能力が必要だった。
俺は決心した。
「頼むよ、紫」
「ええ、任せておいて。ちょっと気持ちは良くない
かもしれないから、我慢してね。
プライバシーの問題もあるし、なるべく他の
情報は覗かないようにするから」
「じゃあ、よろしく」
そう言うと、紫がいつも着けている手袋をはずす。
その手は紫の綺麗な肌よりも、もっと白いように見えた。
そしてその手が俺の腕に触れる……。
その瞬間、俺は何か体の中を這い回られている感覚を覚えた。
しかし紫の言っていた通り我慢する。
1分ぐらいだろうか?紫がおもむろに手を離す。
そうした途端、体の変化は収まる。
だが、紫は呆然と立ち尽くしている。
「おい? 紫? おーい」
と紫に声をかけるとやっと戻ってきた。
それをずっと見ていた総隊長が口を開く。
「紫くん。報告を」
「あ……はい。
御神 哀の能力は、判定Sランク。その内訳
・攻撃範囲C ・攻撃威力SSS+ ・攻撃射程E です。
能力の内容は……
この世に存在する全ての物質を粒子単位で自由自在に操作、変換できる能力。
(自分の皮膚か、身に着けている物に触れている物質限定)
……………………ありえない」
それを聞いた総隊長さんと俺が沈黙する。
その空気を破るように放送の向こう側から驚き声が響き渡る。
『なんですってーーーー!!!!』
どうやら俺の能力はとんでもないシロモノらしい…………。
すると総隊長さんが言った。
「御神くん、紫くん、そして君もこっちについて来なさい」
その中には受付のお姉さんも含まれていた。
俺たちと、緊張で口が開かないといった感じの
お姉さんは総隊長について行って、第3会議室と書かれている所に着いた。
隊長が中に入っていき、俺たちが後についていく。
そして総隊長さんがドアを閉め、話し始める。
「本人は勿論のこと、紫、それに君もこのことを知ってしまった」
そこで俺は口を開く。
「何か問題が?」
「通常、判定内訳は確かに最高SSS+だが、それを出したことなど
歴史上一度も無いことだ。このようなケースの場合、まずは機械の故障を
疑うが、今回は『精神喰人』で調べたため結果は明らかだ。
そして、その能力が本物だったら、それは『HEAVEN』の最高機密に指定される。
そういう規則があるんだ。しかし、それを紫や一般人に知れてしまった。
よって、紫はしょうがないが、そこの君にはこの事を忘れてもらう」
そう総隊長さんが言った瞬間にお姉さんは倒れた。
「えっ、総隊長さん、何を……」
「いや大丈夫。御神くんが来たときから今までの記憶を消しておいただけだ。
紫くん、その子を受付に座らせてきて。今は誰もいないから」
「はい……よっと」
紫がお姉さんを抱えて外へ出て行った。
「さてと、次は君だが、先程も言ったように君の能力は最高機密だ。
通常、君には学校に行ってもらった後に将来、部隊にはいるものだ。
しかし君の能力は危険だし、最高機密だ。ここに特例として現時点で部隊に
入る事にしてくれ。
拒否権はない。その能力の危険性は君にも分かるはずだ」
俺は言葉に詰まった。総隊長さんの言うことには一理あったからだ。
俺はしょうがないと割り切ってその提案を受け入れることにした。
……元々拒否権などないのだが。
「……部隊に入るということは、部隊全員に能力の正体が
知れ渡るのですか? それと、学校はどうすれば……?」
「まず、最高機密なので、能力の正体は最低でも大隊の隊長までにしか
知らされないから安心してくれ。
それと学校だが、その歳で行ってないということも不自然なので
私としては行ってもらって、任務がある場合にはこちらにきてくれればいい」
「……少し大変そうですが、こちらの学校にも興味はあるので
学校には行ってみようと思います。でも、学校では能力の授業の時は
どうすればいいのですか?」
「それは大丈夫だ。君は、測定の時こそ不安定だったが今では
能力は本能のように使えるだろう。能力とは人に使い方を
教えてもらうものではないからな。
学校では、君のその応用が利く能力を使って別の能力として
隠し通してくれないか?」
ちょっと難しそうだけど頑張ってみるか……。
「はい、分かりました。これからよろしくお願いします」
そして俺は総隊長さんに言われて指定されたマンションに住むことになった。
学校は明日から転入生としていくらしい。
その他諸々の内容は家に書類が置いてあるらしい。
そして俺は部屋を出て行こうとすると、総隊長さんに呼び止められた。
「ああ、そうだ。君の行く学校には紫も通っているから」
「そうですか……ってええええええええ!!!!!」
なんかやっぱり驚くこといっぱいだ。
なんか展開はやいですか?
それとも遅い?
次から学校に転入します。
主人公は何回女に間違われるでしょうか?