第二十三話 『HC-R』計画
これからシリアスになるでしょう。
俺は、叫び続けた。
もしかしたら俺は、だれかにこの状況を見つけて貰い、
自分に贖罪をしたいのかもしれない。
しかし、それは叶わなかった。
「まったく、うるさいですよ?」
俺はハッとして後ろを振り向く。
これは、前と同じ状況。
一ヶ月前、俺に殺人容疑がかかった時に、手を差し出してくれた声。
そこには、総隊長もとい、無骸零がいた。
「総隊長さん? どうしてここに……」
「それは、この大会は凄く有名なものだから、いつもお忍びで遊びにきてるんです。
それでたまたま御神君達に挨拶でもしようと思ったらこの状況、ということですよ。
あ、因みに誰も気付きませんよ? この部屋の周りは音の概念は消しましたから」
「……総隊長さん、いえ、無骸さん! どうか、どうかこいつらを助けてあげて下さい!」
俺は必死になって頼み込む。未だ俺の腰にしがみついたままの紫を見ながら。
総隊長という肩書きを持つ人にではなく、無骸零その人自身に。
しかしその願いは遮られた。
「それは無理ですね」
「な、なんでですかっ! なんで、助けてあげられないんですかっ!」
俺は間髪入れず叫ぶ。
もう俺はこうする事しかできなかった。目から何か垂れるが気にしない。
すると、俺の顔を見て、総隊長さんは困ったように苦笑いを浮かべ、言う。
「いやあ……だってその子達、みんな気絶してるだけですよ?」
「…………………………は?」
思わず間抜けな声を上げてしまう。
だってそうだろう、助けてくれないと言ったとおもったら、その理由が気絶してるからなんて。
俺はもう一回注意して皆を見てみる。
すると、俺の腰にしがみついている紫、よく耳を澄ますと、
……なんかスヤスヤと音が聞こえる。
足元にいる不知火だって、「う……ううん」とか唸ってるし。
「……総隊長さん」
俺は腰にある紫をそっと傍にあったソファに寝かせて言う。
総隊長さんは満面の笑みでこちらを見る。
「なんですか?」
「……騙さないで下さいっ!」
「うわっ! いきなり大声上げないで下さいよ。紫君が起きちゃいますよ?」
「そんな事より、よくもからかいましたね?」
すると総隊長さんはハハハと笑って言う。
「いや、だって、敵の狙いが君の能力暴走なんだから、まずは冗談でリラックスしようと思って」
「いや、この状況でリラックスって…………て! 敵ってなんですか!」
「まだ気付いてなかったの? ほら、君の方もさっさと立ち上がってよ。
もうネタバレしてるんだよ?」
俺はなんの事だと思い、再び辺りを見回す。
すると、俺の前にあった血だまりから、バラバラになったはずの……一条が立った。
「な、なんでお前……死「死んでねえよ」……なんでだ? なにが起こったんだ?」
俺は自分が気絶していた間に何が起こったのか分からなかった。
一条は答えようとしなかったが、代わりに総隊長さんが全て分かっているといった感じで答える。
「御神君が能力暴走になりそうな間に、そいつは何かで君の能力を封じた。
そして一瞬の事で混乱している他の5人を気絶させたという所かな?」
「へえ、その通りだよ、無骸さん……。
本当はこのまま俺は隙をみて逃げる予定だったんだが、まさかあんた直々に来るとはな」
俺は何が起こったかは理解できたが、一つ分からない事があった。
「しかし、それでは一条はどうやって俺の能力を、しかも暴走しているものを回避したんですか?」
すると総隊長さんはゆっくりと苦しい顔で言う。
「……そろそろ潮時か。丁度『実験』の当事者もいるんだから話そう。
私は、ずっと推測していた。
それは、テロ組織『HUMAN』の拠点を攻めたときに入手した、俺と一部の人間しか
見ていない書類。
……これをHC-R文書と言う。
それに書かれていたこと、それは、神の名を騙った悪魔の計画。
そこにあった計画とは……『Homunculus Plan』。
人が神の所業を真似て作った異形の生物、ホムンクルス。
『HUMAN』では、人口的に生命を誕生させるという計画があった。
そしてそれを実験素体とした付随計画、『Code-Replay Plan』。
知っているか?
近頃の若い能力者は勿論、情報規制がされているからあまり知られていないのだが、
第3次世界大戦終結直後の初期の能力者の中には、
極稀に、『重複能力者』という、複数能力を使う者達がいた。
……『Code-Replay Plan』とは、
その重複能力者達という存在自体を『再生』するために作られた計画。
まあ、私が今の意味を持つ結論に辿り着いたのは、一ヶ月前の事があったからだが」
俺はその事実を聞いて、ただただ呆然としているだけだったが、最後の言葉で思い出す。
そう。あの時も俺は嵌められそうになった。
そしてその女は、自分を『HC-R0』と言っていた。
そして俺は一条を見る。
一条は、総隊長さんの話を聞いてニヤニヤ笑っていた。
そしてようやく言葉を発する。
「お~お当~たりぃってか? さすが無骸零だな。その洞察力と組織力には感服するぜ」
俺はさっきから気になっていた事を言う。
「……一条、お前は何なんだ? 『HUMAN』の構成員か?」
「んーーー? 半分正解だ。というかお前には話しても良いって命令だからな。
話してやるよ。
俺は『|HC-R1(ホムンクルス・コードリプレイein)』だ。
正真正銘、そこの無骸零が話した人工生命体で、それでいて重複能力者だ。
俺の能力は『雷電閃光』と『能力無効』だよ。
すげえとおもわねえ?」
……俺は驚愕した。能力の詳細はしらないが、能力を無効するらしき能力と雷を併用できるなんて、
「化け物め……」
そうだ。こいつらは人間では無い。
俺は総隊長さんを見る。
すると総隊長さんは俺の視線に気付き、答える。
「一条裕、部隊の総隊長直々に、つかまえるよ……」
「へっ! やれるもんならな……」
実はの展開。
なにか物語の設定がごちゃごちゃしてきましたが、
分からない点がありましたらどんどん聞いてください。
遠慮しなくて良いですよ!