第二十一話 去年の大会
凄いシリアス。
俺はその後、普通に復活して、訓練を続けた。
それから何回も皆で集まって訓練をした。
皆で訓練をすると時間が経つのが早い気がして、あっという間だった。
……途中からハイトが訓練に加わったけれど、結局能力は教えてくれなかった。
そしてあっという間に1ヶ月が過ぎた。(省略と言うな)
訓練をしている内に、段々皆の能力がどんなタイプなのか分かってきたのだが、
なんと言うか……なぜか前衛タイプが多い。
俺は言わずもがな中衛タイプ。だって風使いってことになってるし……。
そして、遠距離タイプが琴雪。氷はある程度遠くまで作れるし、
なによりこの中で一番体術がダメだったからだ。まあ、本人には言わないが。
そして、前衛が、聊爾、紫、ハイト、不知火だ。
聊爾は基本は空間を渡り、刀で攻撃するし。
紫は接近しないと能力が使えない。体術も一番強いし。
ハイトは、自分で前衛が良いと言って来た。そのほうが都合が良いらしい。
不知火は、無闇に前にいると、岩石などの餌食になるからだ。
そういう分けで、超攻撃タイプの布陣ができたのだ。
因みに言うと、大会は、『個人戦』と『チーム戦』の二つある。
チーム戦はそれぞれの学校から6人のチームを作り、色々な仮想フィールドで戦う攻略戦だ。
個人戦は、その代表の中からそれぞれ1人ずつ選ばれた選手がバトルロワイヤルをするというもの。
なぜバトルロワイヤルかというと、普通に『HEAVEN』内の学校の数が少ないからだ。
ちなみに俺が個人戦に出場する事になった。
皆によると、やっぱり俺が一番強いかららしい。
……俺はそうは思わないのだが、みんながそう言うので出る。
さて、俺達は今、大会の場所に来ている。
と言っても、場所は内の中学の校庭なのだが。
ここの校庭が一番広いかららしい。
結構な見物客が来ている。勿論ほとんどが能力者だろう。
中学生のレベルがどれ位か見たいのだ。この大会には全中学校がでるし。
『UnInstall』のスカウトも来ている。
因みにスカウトに混じって、飛騨さんが来てるのは……気のせいに違いない。
というか久しぶりの出番だな飛騨さん。
俺は皆と共に選手控え室に行く。
「というか、今回人多すぎ! なんで全校に人が揃ってる訳?」
聊爾が言う。
俺が聞き返す。
「揃ってるって?」
「それは、去年の時は、1年だった事もあるかもしれないけど、
ちらほら団体戦に6人揃ってないとこがあったのよ」
紫が隣で言う。なんか鬱陶しそうだ。
「そういえば、去年勝ったのはどこなんだ?」
俺が聞くと、ハイト以外は皆悲しげな表情をして、俯いてしまった。
俺はハイトに視線を向けると、ハイトも、さあ?と言った表情をしていた。
するとしばらくして琴雪が言う。
「その、ね。 去年にね、ちょっと事故があってね……」
すると不知火が顔を上げて言う。
「ちょっと、琴雪!」
「いいんだよ。言っても、良いでしょ? 奏華……」
すると不知火は「いいよ……」と言ってまた顔を俯かせる。
「ちょっと私達には辛い記憶なんだけど、団体戦で事故があったの。
能力者同士で能力のぶつかり合いになって、誰かが怪我したりすると、
大会本部が処置をとるんだけど、それが間に合わなくて、
私達1年の部のチームを率いてた、1-Sの第1位、不知火 総哉という人が死んじゃったの。
原因は大量出血によるショック死。
あの時本部が間に合ってれば……!」
琴雪が珍しく真面目に悔しそうに言葉を詰まらせる。
しかし俺は気付く。
「ちょっと待て、不知火って……」
「そうだよ。奏華の双子の兄。あの時……「もう良いよ!」……奏華……」
不知火はいつになく悲しそうな笑みを浮かべて言う。
「もうその事は、いいから。早く控え室に行きましょう……」
そのまま、不知火は先に行ってしまった。
「琴雪、あの時って?」
俺は失礼と思いながら、どうしても聞きたかった。
不知火の兄の事を。
「あのね、能力者との戦闘で事故がおきたって言ったけど、
その言い方はちょっと違うの」
「?」
俺は首を傾げる。
だが琴雪は続ける。
「総哉が死んじゃったのは、相手に攻撃されたんじゃない。
私達を守るためなのよ……」
「なっ……!」
「そう、総哉の能力は『血液循環』という能力で、
まさしく血液を操る能力。その自分の血液を凝固させた盾や矛は、すごい力だった。
それでね? その力を使って、私達全員を守ったのよ……。
相手の能力が暴走して、雷が私達に大量に降り注いだ。
それを、完璧に防御したのよ。けど、雷に当たった血液は変出して、体内に戻せなかった。
そして大会本部は暴走が起こったことを隠蔽するためにこれを事故とした」
俺は言葉が出なかった。
不知火の兄は事故ではなく相手の暴走のせいで死んだ。
俺が何を言って良いか分からないと、琴雪が言う。
「けどね、奏華はちゃんとその事を乗り越えて今ここにいるの。
だから、哀も安心して良いよ」
ばかな。安心できるはずがない。
俺の心は、この事実に対して大きく揺れ動いていた。
どうでしたか?
奏華に双子の兄がいたこと判明。
結構悲しくないですか?
自分でもそう思います。