第十八話 皆を信じるコト
幕間と関連付けられるか、ですかね?
総隊長さんはオッサンを睨む。
そして、驚き顔のオッサンに告げる。
「そろそろ正体を現せよ。お前、能力者だろ?」
するとそれを聞いたオッサンは、いきなり立ち上がると、姿が変わった。
まるで顔から体まで全てが別人のように。
その正体は、なんと女だった。
容姿端麗、という言葉がよく似合いそうな女で、長髪は真っ赤に染まっていた。
「まったく、ばれてて、それでいて姿を見せないなんて無理だわ」
嘘がつけないことが分からないのか、その女は言う。
……ああ、そうか。総隊長さんが女の『嘘』という概念そのものを消したからか。
だから女は嘘そのものを知らないと言うわけだ。
「お前は……『HUMAN』か?」
総隊長さんはいきなり核心をつく。
それに対し、女は言う。
「……そうね、そういうことになるのかしら?」
「その曖昧な答えはなんだ?」
「……私はこの部隊の誰かに変装して殺人をして、その罪を御神哀って奴に
擦り付けて、更に御神の能力を探ることよ。
その命令に従ったは良いけど、誰に命令されたか思いだせないし、
なにか途中で目の前が真っ暗になったと思ったら、この状況ってわけ」
女は本当に色々教えてくれた。
しかしなぜだ?
この女の話し具合からすると、狙いは俺にあるみたいだ。
「お前は、なんだ?」
総隊長さんは女に聞く。
「私は、『|H-CR0(ホムンクルス・コードリプレイnull)』よ」
「ふざけるな! 普通の名前を言え!」
「……私は…………」
そう女がなにか言いかけた時、それは起きた。
女がいきなり爆発した。
それは、体内に強力な爆弾を仕掛けていたような
凄まじいものだった。
そして、それほどの爆発がこの狭い室内で起きたらどうなるか、
もうお分かりだろう。
「うわああああああ!」
俺は咄嗟のことに、能力を使うのを忘れ、叫んだ。
……しかし、爆発の衝撃はこない。
俺は前を見ると、爆発もなにもなく、
代わりに総隊長さんがいた。
「まったく、こんな場所で爆弾なんて使うものじゃないですよ。
それにこういうのは御神くんの方が対処し易いんですから、
もうちょっと訓練頑張りましょう?」
ふふ、と総隊長さんが笑い、そんな事を言う。
しかし、あの女は?と思う。
「……あの女は?」
「死にましたよ。あんな強力な爆弾を体内で起こされたんですから、
もう粉々で塵も残ってませんよ」
……それはやはり組織に口封じされたということだろう。
俺はそのまだ名しか分からない組織に対して、酷い嫌悪感と
怒りを覚えた。
すると総隊長さんが言ってくる。
「……君にはいつかちゃんと事情をお話しますから、
とりあえず今だけは時間を下さい」
「…………分かりました」
俺は、部隊の事情も考え、渋々ながらも納得した。
「御神くんの友達には事情を話してください。
彼らも知りたいでしょう。彼らは第1会議室にいるので」
「……いいんですか?」
「私が、許可します」
俺はなぜかは追及せずにゆっくりと、そして丁寧に
総隊長さんに感謝の意を込めて礼をした。
俺は今、部屋の前にいる。
その部屋の入り口ドアには、『第1会議室』とある。
俺は、入るのに緊張してきた。
皆は俺をどう思うだろう?
もし怖がられたとしても、俺はあいつらだけは殺したくない。
俺は覚悟を決め、ドアを開けた。
「グバッ!」
……なんの音だろうか?
この声は、俺?
あれ?なんだか天井が正面にある。
なんか地面に落ちる。
痛い。
「…………って! 何をするんだよ!」
俺は前にいる、俺を殴り飛ばした張本人、不知火と紫に言う。
そう、ダブルパンチだった。
不知火と紫は口を揃えていう。
「「琴雪を泣かせた罰!」」
すると後ろからか弱い声が聞こえる。
「もう、大丈夫だから、私が悪かっただけだから……」
琴雪だ。前にでてきて不知火と紫を止める。
そして必然的に俺と目が合う。
俺は謝ろうとする。
「あのな、琴雪、その……「ごめんっ!」……は?」
いきなり琴雪が謝りだした。
「ごめんなさい! わ、私、怖くて、一瞬でも、哀君のこと怖いと
お、おもちゃって! ほんとに、ご、ごめんなひゃい……」
琴雪の目は謝罪の言葉を紡いでいくたびに、どんどん涙がたまっていく。
そんな琴雪を見て、俺はそのまま琴雪を抱いていた。
背中をさすりながらいう。
「もういいんだ。もう、気にしてないから。
俺のほうこそ悪かった。
もう、お互い様だ。もう謝らなくていいから。
……これからも、よろしくな、琴雪」
「哀、君……アイ君!」
琴雪は俺の腕の中で泣いた。
俺はそれをずっと抱いてやる。
その時の俺は、もう皆に隠し事をする気はなかった。
皆に知ってもらって、理解してほしかった。
……もしかしたら、一番慰めてほしいのは……
主人公、すこし精神的に成長?しましたかね?
というか本当に中学生ですかね?