第十六話 俺は……
今回は晴れのち雨でしょう。
ハイトが前に出る。
「ハイト君って強いのかな?」
琴雪が聞いてくる。
「まあ……Sクラスに入ってるんだし、強いんじゃないのか?」
俺は曖昧に返事をし、改めて前を見る。
ハイトの他に4人出る。
そして皆が定位置についた所で、合図がされた。
「開始!」
そして、ハイト以外の4人は動いた。
1人は自分の周りに火を出す。
1人は物凄い速さで加速し、ハイトの後ろに回っている。
後の2人は、お互いで何かの能力を出し合って戦っている。
そして、ハイトの後ろに回りこんだ奴がキックをする。
しかしまだハイトは動かない。
何をしているんだ?と俺は思った。
しかし、その疑問は一瞬で拭い去られた。
なぜなら、次の瞬間。
全ての人の動きが止まった。
だれも、動きを中断して動こうとしない。
何が起こったのか分からない。
皆も唖然としている。
そして、4人は同時に降参を宣言した。
ハイトが何か言っていたような気がしたが聴こえなかった。
そして先生が試合の終わりを宣言する。
「代表、ハイトクラウド!」
俺はハイトに駆けていって、言った。
「ハイト、何をしたんだ?」
俺は自分でも分かるくらい興奮して聞く。
「それは、秘密、ですよ」
「なんだよ……」
結局、ハイトは何も自分の能力に関して喋ってくれなかった。
俺はチラッと他の4人を見たとき、
皆、顔が青ざめていて、首に細い切り傷があったように見えた。
俺はハイトが、目に見えない何かをしたことまでは分かった。
しかしそれ以上が分からない。
俺はどうしてもハイトの能力が知りたくなって、
能力を調べる方法を、授業中ずっと考えていた。
そして、昼休み、俺は思いついた。
簡単に相手の能力が分かる方法があった。
試合を申し込むんだ。それ以外方法は無い。
俺は先生の所へ行き、事情を話した。しかし断られてしまった。
曰く、能力武闘大会が近いのに、代表同士戦わせて怪我されたら
学校に責任が取れないらしい。
どうしても模擬戦をしたい場合は、大会が終わってかららしい。
俺は、潔く諦めた。
そして俺も、大会の後の模擬戦目指して特訓をしていた。
……普通、大会の方を優先するのだが、それは置いとこう、うん……。
その日の授業が終わり、俺は一目散に家に帰った。
……次の日、話を聞かなかった罰として、みんなから色々されたのは割愛。
だって心的障害だもの。
そして、俺は今、マンションに居る。
先生の話だと、代表は、部隊の訓練室を特別に借りて、大会の準備ができるらしい。
俺は明日に備えて早く寝ておこう。
そう思って俺はベッドに入った。
琴雪?
『おきて! 哀くん!』
紫?
『お・き・て・ア・イ』
……ハイト?……
『ふふ、起きてください。哀君……』
「うわーーーーーー!!! っはあ!」
……なんだ? 何か恐ろしい夢を見ていたような……まあ、気にしないでおこう。
だって気にしたら負けだし。
俺は今日は皆と部隊の訓練所で特別授業だったことを思い出す。
俺は朝飯を食い、外にでる。
悪夢?っぽいので早めに起きたが、俺も学習する。
二度寝はしない。俺は時間に余裕がありそうなので歩いていくことにした。
俺はまだ朝が早く、どこも開いてない商店街を歩いている。
普通にこのまま行けばまだ早く着くだろうと予想していく。
しかし、俺のその計算には誤算があった。
そう、『普通』でないことが起こってしまった。
「ぎゃああ……」
どこからか聞こえる男の小さい悲鳴。
その声の小ささと
まだ時間が早いからか誰も出てこない。
道には俺一人。
俺は気になり、また路地裏に入る。
というかこの頃路地裏トラブル多いな……と自分でも思う。
しかし俺のその冗談の考えは一瞬にして無くなった。
目の前には、3つの、首と胴体が離れている死体があったからだった。
「っ……………………」
俺はその死体の顔をみた。
まるで最後まで拷問されて殺されたように、ゆがんでいた。
俺は、いままでいろんな死体を見たからか、あまり吐き気とか、
気分悪くなるのとかは、どんどん薄くなっていった。
これが『慣れ』だとおもった。
自分がこの前、人を殺したときよりもなにも感じない。
自分が酷く冷たい人間に思えてきた。
しかしその俺の感情と同じようになっていた
その静寂を、悲鳴が破った。
「きゃあああああああああああ!」
俺は咄嗟に後ろを振り返る。
そこには、
琴雪がいた。
琴雪の顔は、こちらを見て、恐怖で固まっている。
死体に、それを無表情で見下ろす俺。
俺は琴雪が俺を疑っているのに、気付いた。
「違うんだ! 誤解だ、琴……」
「近づかないで! あっちいって!」
俺の言葉は信じてもらえなかった。
琴雪は俺がそれでも近づこうとすると、悲鳴をあげて逃げていった。
俺の心には、なぜか酷い空虚感が広がっていた。
こんど、すこし長くしてみたいですね。
因みに、まだハイトの能力は秘密です。
しかし、考えるなら低く考えたほうが無難ですよ?
ですが俺は……