第十四話 転校生
外人です。
名前について気付いた人はいますかね?
俺は歩いて、元きた路地裏に戻る。
そこには、朝日を浴びて立っている総隊長さんがいた。
「総隊長ともあろう人が出てきて良いんですか?」
「いや、この事は内密によろしくね」
俺は総隊長さんに近づく。
そして総隊長さんは言う。
「じゃあ……帰ろうか?」
「あの、死体はどうするんですか?」
俺は自分が殺してしまったのであろうものを言っている。
さすがにあのままにはできないだろう。
「大丈夫。そういうの専門が居るから」
「そうですか……」
「じゃあ、こっち来て。帰るよ」
俺は総隊長さんに言われ、総隊長さんの指差す方向に歩く。
そして、次の瞬間、俺は部隊のビルの屋上にいた。
行きと同じ方法だったので今度は驚かなかった。
すると後ろから総隊長さんが現れた。
「では、ここで良いから報告を」
俺は今までにあったことを全部報告した。
……俺が意識を失ったことは話していない。
使い慣れていない能力で失敗し、殺してしまったことにした。
話し終えてしばらく無言のままでいると、口を開いた。
「すみません。殺してしまって」
「いや、良いんだよ。こちらこそすまない。
まだ中学生の君に人殺しをけしかけて」
「いえ……大丈夫です。
……今日はもう帰っても?」
「ああ。任務による特別給金はもう振り込んどいたから」
聞きなれない言葉を聞く。
「特別給金?」
「ああ。特別給金とは通常任務とは別に、このような緊急な任務の時に、
任務関係者に部隊から支払われる給料の事だ」
「……そうですか、ありがとうございます」
「いやいや、当然だよ」
俺は挨拶をして、屋上から階段でゆっくりと下に降りる。
ビルを出てとめておいた自転車に跨り、マンションに帰る。
初めての人殺しで、少しロウテンション。
因みに言うと、今は朝5時。
約3時間の任務だった。
俺はマンションに着き、すぐに自室に入り、シャワーを浴びて着替える。
ハンガーに制服をかけ、朝食の準備をする。
夜更かし?をしたので少し眠いが我慢する。
俺は、朝食を食い終わった後、少し早いが学校に行くことにした。
学校に着く。
今度はちゃんと自転車を置いていく。
クラスに入るがまだ誰も居ない。
そりゃそうだ、HRが始まるまでまだ1時間ぐらいある。
俺は今までのことを振り返った。
ここに来てからまだ3日ほどしか経ってないのに、紫達のお陰で随分性格が丸く
なったような気がする。
だが、それと同時に何か俺の中で渦巻いてる感覚がある。
よく分からない。だが、奇術師を殺した時のは、多分"ソレ"だ。
俺は今まで殺しなど勿論しなかった普通の中学生だ。
だが、なぜか俺は"殺し"に慣れている感触がする。
なにか分からない感覚。
俺はそれを、強引にでも気のせいだと思うことにした。
だって、これ以上考えたら俺が壊れてしまう気がしたから……。
俺は考える事をやめて、睡魔に従い、眠った。
「……ア……き………」
「……アイ、起き……」
「アイ! 起きてよ!!!!」
「うわぁ!!!!」
耳元でいきなり大声をあげられて起きる。
目の前には紫がいる。
「紫?」
「まったく。いつまでも寝てるからそのままにしておいたけど、
HRが終わっても寝るなんて」
もうHRが終わってしまったのかと思い、辺りを見回す。
なんだか向こうの席に人だかりが出来ている。
「なんだ? なんかあったのか?」
俺は紫に人だかりの原因を聞く。
「今日、転校生が来たのよ。
この3日間で2人も美少年転校生が来たってことで学校中話題で持ち切りよ」
「美少年転校生?」
「そう。外国人だけど日本国籍の美少年よ。
まあ、アイには劣るけどね」
どんな奴だろうと思う。
すると、人だかりの中から金髪の少年が出てきた。
背は俺と同じくらいで、目は蒼い。
髪は眩しい金色。顔立ちは10人に10人が振り返りそうなイケメン。
するとこちらに向かって歩いてくる。
「こんにちは、貴方には自己紹介がまだでした。
私はハイト クラウドです。よろしくお願いしますね」
と言って笑ってくる。
流暢な日本語だ。一応日本国籍だから長い間日本に居るのだろう。
とか思いながらこちらも挨拶をする。
「俺は御神 哀。よろしくな。
えっと……」
どう呼んだら良いのか悩むと相手が言ってきた。
「ハイトで良いです」
「そうか、じゃあ俺の事は哀でいいよ」
「そうですか。哀。これからよろしくお願いします」
そう言って、軽く頭を下げる。
「いいって。そう何度も挨拶しなくていいから。
俺達もう友達だろ」
するとハイトは顔を上げて笑う。
俺もそれにつられて笑う。
……なんか女子のほとんどから「絵になる~」とか「哀クン×ハイトクン……」
とかいう声が聞こえたのは無視しておこう。
というかほとんどが顔を真っ赤にしている。気絶している人までいる。
……これから大変そうだと思って長い溜め息をついた。
すると後ろから声がかかる。
「ハイト君、私達と一緒に行動しない?
模擬戦とかで、ハイト君人気ありそうだから大変よ?
それに変な目でみる奴も居ないし」
と不知火が言う。
「いいですよ。理由は置いても、哀と一度戦ってみたいですし」
「俺と?」
俺が問う。
「はい、そうです。哀は強そうで楽しそうですから」
「そうか……そういえば1限目はなんだ?」
俺は紫に聞く。
「今日は1ヶ月後にある能力武闘大会の代表決めよ」
「「能力武闘大会?」」
聞きなれない単語に眉をひそめる俺とハイトだった。
大会はやっぱ必要でしょ。
因みにこれがある事の区切りになるでしょう。