第十三話 初任務(後編)
やっとPV10000OVER!!!!
ここまでくるのにがんばりました。
というかここでよろこんでいいのでしょうか?
俺は奇術師を追い、裏路地を走った。
(あともう少しだ)
俺は近づいた気配に警戒し、そっと角から向こうを覗く。
そこにはいた。
周りには人はいなかったのですぐ分かった。
見た感じは、人の良い老紳士と言った感じだった。
その白髪が年齢を教えてくれる。
本当にあの人が奇術師なのか?と思い、もう一回
能力を地面に向けて放つ。
アスファルトに記録されている犯人の足跡と歩幅等のデータと
目の前を歩く老紳士のデータを重ねる。
(……やっぱりだ)
その記録は寸分違わず合致していた。
俺は目の前を歩く老紳士に、覚悟を決めてそっと後ろから忍び寄った。
あと数メートルといった所で違和感が襲った。
目の前の老紳士の姿がユラユラと揺れたかと
思った次の瞬間、姿が消えた。
なんだ? なにが起こった? と俺が思い、周りを見渡してみると、
また違う人気の無い裏路地に入っていく姿が見えた。
ただの見間違いかと思い俺はまた裏路地に入る。
すると次の瞬間、後ろから声が聞こえた。
「マジックショーにようこそ……」
「!? くそっ!」
俺は急に聞こえた声に驚き、咄嗟に振り向き拳を振るう。
しかしそこには人影すらなかった。
俺は気配が前からしたのでまた前を向く。
そこには、さっきの老紳士がいた。
老紳士はこちらにゆっくりと気品に満ちた礼をしてくる。
「こんばんわ、『HEAVEN』の人」
俺になにか得体の知れない重圧がのる。
敵と向き合う緊張の汗が噴出す。
初めての戦闘だ。
俺は緊張しながら口を開いた。
「お前が、奇術師か?」
すると老紳士は返す。
「はい。その通りです。
私が今回のマジックショーを開催させて貰う、通称、奇術師でございます」
「マジックショー、だと?」
俺はさっきから意味の分からない単語を言う老紳士に
顔をしかめる。
すると老紳士は口を開く。
「はい、そうです。マジックショーです。
素晴らしい芸術の時間へご案内しましょう。
今回のお手伝いはあなた、です」
「お手伝い?」
俺はまた、意味の分からないことに
イラつく。
すると、次の瞬間、また老紳士の姿が陽炎のように消えてしまう。
そしてまた後ろから声が聞こえる。
「あなたは黙って私の芸術の引き立て役になればいいのです」
頭に重い衝撃がかかる。
俺はそれが杖のものだとわかった。
それは、子供をしつけるほどの杖ではなく、殺すための杖。
先は尖って、人を刺せるようにしているし。
素材も鉄で出来ていて硬い。
「おやおや、意外と頑丈ですね。では、これなら」
そしてまた姿を消す。
俺は後ろに気配を感じて咄嗟に横に飛ぶ。
すると俺のわき腹をかすって杖の先端が通る。
「空間干渉系能力か!?」
そう、考え付くのはそれだ。しかしそれは拒否される。
「おお、あたりです。凄い。
関心しますね。」
「うるせえ!」
俺は老紳士の懐に飛び込み、拳を突き出す。
しかしまた外れた。
今度は避けられた。
老紳士は左に避けてすぐ、姿を消した。
そして今度は俺の右後ろから杖による連続突きが繰り出される。
俺はそのうちの数発を肩や足にくらった。
さっきかすったわき腹からは結構な血が出ている。
足や肩も同じ状態。
(やばい……目眩が……)
少し貧血気味になってきた。
血を垂れ流して動き続けているのだから当然だろう。
早く相手の能力を解析し、攻略法を練らなければいけない。
「考え事はショーの後にして下さい」
それがいけなかった。
目眩と考え事で頭が一杯だった。
俺は後ろからくる杖の突きに対応できずに
腹に、穴ができた。
それは空虚で、ポッカリ開いて、中の色々なモノがぐちゃぐちゃとしている。
そこからは、赤いものが噴き出し、俺の体にも、相手の体にもかかる。
視界が赤く染まる。髪も、どんな染料より赤く。
そこで俺は、意識を、俺のナカで渦巻くモノに、堕とした。
奇術師SIDE
私は芸術的に、あの子の腹を突いた。
それは真っ赤な血を噴出し、
私のショーの終焉を彩るものに相応しかった。
血が顔に当たる。
ああ、なんて暖かいんだ。
そこで、少年は倒れた。
私はもう終わりと思って、少年に背中を向けて歩き出す。
今日はラッキーデイだった。手伝いを2人も貰えた。
そう思い、満足して歩いていく。するといきなり肩を掴まれた。
なんだと思う前に、激しい痛みと一緒に、はじけた。
なにが起こったのか。
私は理解できなかった。
私の肩の肉が骨だけのこして弾けたのが分かるのに、そう時間は要らなかった。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い!!!!
「ああああああああああああ! ぐうっああああああああ!!」
私は感じたことの無い痛みに倒れて悶える。
なんだこの少年は?
なんだこの能力は?
私は目の前にある恐怖から逃げたかった。
足音は近づく。私は最後の力を振り絞り、鏡に入った。
私の能力は『左右対称』。
設定座標を基準にして、私の位置と反対側に移動する能力。
私はそれを使い、恐怖の元の後ろに回り込み、杖で力の限り突いた。
私の杖は少年の腹に突き刺さ…………らなかった。
そしてある異変に気付く。
私が刺そうとした腹はもう既に、穴を開けた。
なのに、それが、その傷が……無い。
私はもう諦めた。杖はなぜか弾かれ、もう体力が残っていない。
「は、はは、ははははははは……」
私は目の前にきた恐怖をみて、笑った。
奇術師SIDE END
御神SIDE
俺は頭痛で目が醒めた。
ここはどこだ?
そういえば任務があった。
俺は奇術師に腹抉られて……
はっと思った瞬間、腹を見て、驚愕した。
傷が塞がってる。完璧に、それも傷一つ残さず。
俺はその事実に驚いていたが、頭が冴えてきたら異臭が鼻につく。
俺は異臭の元を探って周りを見る。
そしてそこにそれはあった。
俺の後ろ、足元に、奇術師がいた。
いや、あったと言ったほうが良いだろうか。
あの老紳士の面影は今はない。
顔の右目の部分は眼球がなく、代わりに石が詰まっている。
左目は、眼球が液状化して目からすこし垂れている。
そして、顔の左半分は、皮が剥がされ、赤い肉が見えている。
右頬は骨だけになっている。
唇は焼かれて平坦になっている。
体は……目を背けたい。
ところどころ骨だけだったり、液状化したり、皮だけだったりして、
それは見るに耐えない光景だった。
なぜそれで奇術師と分かるのかは、その白髪と服で分かる。
俺は気持ち悪いと思ったが、なぜか同情心はなかった。
吐き気もしなくなった。俺が慣れている?
俺はそんな思考を打ち切り、死体に背を向けて携帯を出す。
俺は総隊長さんにメールをした。
『任務完了』
そして俺は、もう日が昇ってきた空を見て、歩き出した。
本格戦闘(のつもり)でした。
主人公の能力は応用すると凄い凶悪なんです。