第一部 第四章 ③
「カイ!」
ジョージがカイに駆け寄って来て、カイの肩に腕を回して頭を掻き回した。
「ジョージ、ちょっと待ってください」
カイはジョージの腕から逃れて言った。
「今すぐここを出ます。上で仲間が待ってますから」
カイの言葉を聞いた戦闘員たちは喜んだ。
地上では兵士たちが集まって来た。
サラとドユンとラージがレーザーガンで応戦しているが、相手も銃を所持している。
「あっ!」
ラージが腕を銃でやられた。ドユンがラージを庇いながら応戦していたが、どんどん兵士が増えてきた。
「サラ、もうこれ以上は無理だ!」
ドユンが叫んだ。
「いったんエレベーターに乗りましょ!」
3人はエレベーターに乗り込んで下へ降りた。
ホールに出るとカイと戦闘員たちがエレベーターを待っていた。
「上は無理よ!兵士が多すぎて、ラージも怪我したし」
エレベーターの扉が閉まろうとしたのでカイが手で押さえた。
「エレベーターが上へ上がらないように何かかましておこう」
カイが言うと戦闘員たちが倒れていた兵士を引きずってきて、エレベーターの乗り口に置いた。扉は閉まろうとして兵士に当たり開いていた。
「兵士たちはまだ全員倒れているの?急所を狙ったわけでもないのに?もしかして死んでる?」
サラが不思議そうに言った。
カイが気絶したままの兵士から武器を徴収してきた。全部で拳銃が7挺あった。
「これだけの戦闘員がいながら武器がないんじゃ役立たずね!」
サラは辛辣に言った。
「ついでに鎧兜も貰いましょうよ。わたしは着ないけどね」
サラが言うと戦闘員たちが我先にと兵士の鎧兜もを取り始めた。
「うわっ!」
はじめに兜を取った戦闘員が叫んだ。
カイたちは声がした方に急いで駆けつけた。
「これは……」
カイもまわりの者も驚いた。
兜を取られた兵士の顔は真っ黒で髪もなくただ機械のような目と口があるだけだった。
カイは兵士全員の鎧兜を取るように指示した。
どの兵士も同じだった。体も全身真っ黒で皮膚ではなくゴムのようだった。おそらく中は機械だろう。だから1回でもレーザーに当たればショートして動けなくなるのだ。
「兵士はみんなロボットなの?普通に喋ってたけど?」
サラが驚いたように言った。
「かなり進化したヒューマノイドだな。作らされてた精密機械はこれのためか」
ジョージが兵士を確認しながら答えた。
「作らされてた?」
カイが首を傾げながら聞いた。
「ああ、俺たちは毎日工場で働かされていたんだ。自動車やパン、日用品を作る工事にな。俺は精密機械を作る工場に行ってた」
突然大きな爆破音が聞こえた。エレベーターの方からだ。
「まずいぞ!エレベーターを破壊して入って来るつもりだ!どうする?」
オリバーが叫んだ。
「外した鎧兜をかぶるんだ!かぶった者に拳銃を渡せ。他の者は奥に隠れるんだ!」
カイは指示すると自分も鎧を纏った。
サラは鎧兜を身につけていないものと一緒に奥の部屋に行き護衛として付き添った。
カイはラージが持っていたレーザーガンをジョージに渡し、ジョージも鎧兜を纏った。
ドユンも鎧兜を身につけ、その他戦闘員6人が鎧兜を纏い銃を持った。
カイとドユンはエレベーターの前でレーザーガンを構えた待った。
ジョージはエレベーターの横に配置した。
6人の戦闘員はエレベーターから見えない位置に立って銃を構えた。
2回目の爆破音が1回目より鋭く響いた。
エレベーターの扉がこじ開けられるようにして開いた。
カイとドユンはエレベーターに向けてレーザーガンを撃った。兵士も銃を撃ってきたが、鎧が弾いた。
「戦闘員に持たせてる銃は役に立ちそうにないな」
レーザーガンを撃ちながらドユンが言った。カイは頷いた。
兵士は次々と来るがレーザーガンに当たるとすぐに倒れた。
すると小型大砲を持った兵士が出てきて構えた。
カイはとドユンは素早く左右に分かれた。
「おいおい、そんなもんこんなところでぶっ放すつもりか」
ジョージはそう言うと横からレーザーガンを撃った。
兵士は大砲の引き金を引いていたらしく、倒れる直前に弾は天井に向けて飛んでいき、天井を破壊した。
崩れた天井に驚いて隠れていた戦闘員たちが出てきた。
他にも小型大砲を持っていた兵士が戦闘員たちに大砲を向けた。
「危ない!」
ジョージは大砲を持っていた兵士にレーザーガンを撃ったが、外れてしまった。兵士はジョージに向けて大砲を撃った。
「ジョージ!」
他の兵士に応戦していたカイはすぐさま大砲を持つ兵士をレーザーガンで撃って倒しジョージに駆け寄った。
ジョージに直接弾は当たらなかったが、爆破の衝撃を直に受けて鎧は壊れ動けなかった。
「ジョージ!しっかりしろ!」
「ああ…カイ…俺はいいから…早く…兵士を…」
「くそっ!」
カイは立ち上がりジョージの持っていたレーザーガンも左手に持ち、両手で兵士めがけてレーザーガンを乱射した。
どのくらい経っただろうか、兵士が降りてこなくなった。
カイはジョージのそばに行った。
「ジョージ、兵士はいなくなった。大丈夫か?」
ジョージはまだ息があった。
「カイ…これを…」
ジョージは握り締めていたものをカイに渡した。
「これは…」
それはカイが初めて地球に来て兵士に捕まったとき、目印に落としていった菩提樹の木で作られたブレスレットだった。ブレスレットはちゃんと直されていた。
「もっと…早く渡す…つもり…だった…悪い…な……」
ジョージは目を閉じて動かなくなった。
「ジョージ!ジョージ!うわああああー!」
カイの泣き叫ぶ声に奥の部屋に隠れていたサラや戦闘員らが出てきた。
皆俯いてジョージの死を悲しんだ。
カイの泣き声が途絶えたの見計らって、サラがカイに近づきそっと肩に手を置いて言った。
「カイ、戦いはまだ終わっていないわ。わたしたち全員が無事に月に帰るまで気を引き締めて司令官。ジョージの死を無駄にしないためにもね」
カイは涙を拭った。そしてジョージが返してくれたブレスレットを左手首にはめた。
カイはエレベーターがまだ動くか確認した。どうやらエレベーターは下からの動力で上下しているらしく箱は壊れてしまったが、まだ動きそうだった。
「上の様子を見て来る」
カイが言うとサラも行くと言ったが、鎧を身につけている者の方がいいということでドユンと行くことになった。
「動力ボタンはおそらく上も壊れているだろうからここにしかない。僕たちが乗ったらボタンを押してくれ。降りたいときは叫ぶからすぐにボタンを押すように」
カイとドユンは壊れて床しかないエレベーターに乗った。
カイが頷くとサラはボタンを押した。エレベーターはゆっくり上へ上がり始めた。
下から真っ黒な円錐の柱が上がってきた。この柱がエレベーターを動かしていたようだ。
カイとドユンは上を見上げた。外はもう暗くなっていて満天に輝く星が見えた。
地上が近くなると二人は身体を床につけレーザーガンを構えた。
エレベーターが地上に着いたらしく止まった。
外は真っ暗で何も見えなかった。
ドユンが立ちあがろうとしたのをカイが止めた。
「目を凝らしてよく見てみろ」
カイはドユンに言った。
ドユンは目を細めたり見開いたりしてよく見た。
「…戦車だ」
戦車が3台停まっていて、砲身が全部こちらに向いていた。
「今出ていったら砲弾の嵐だぞ」
カイはそう言うと床の隙間に口をつけて静かに降ろしてくれと言った。
しばらくしても動かないのでもう少しだけ声の大きさを上げて言ったが動かなかった。
何度か少しずつ声の大きさをを上げながら言うと5度目でエレベーターが動き出した。
「ふぅ。冷や汗かいた」
ドユンが額の汗を手で拭き取りながら言った。
エレベーターは無事に下まで降りた。




