第一部 第四章 ②
カイたちが作戦会議を立てていると、部屋に声が響いた。
「捕虜の命が惜しくば、レーザーガンを兵士に渡しなさい」
アマヒだった。
捕虜とは要人のことだろうかとカイは思った。
「どうする?」
ドユンが聞いた。サラがすぐに答えた。
「役に立たない要人のことなら放っておきましょうよ」
「だが、他にいたら?カナダに向かった者たちや、ジョージたちが生きていたら?」
カイはそう言ってから悩んだ。
「でもカナダ行きの宇宙船は壊されていたんでしょう?中も火災で跡形もないくらいに…」
サラは涙を堪えながら悔しそうに言った。
「戦闘員として乗り込んだきた宇宙船は無事だったじゃないか。どこかに監禁されているのかもしれない」
ラージが言った。
「確かめてくる。僕が1人で出て行ってアマヒと話してくる」
そう言ってカイはポケットから受信機とイヤホンを取り出し、サラに差し出した。
「サラ、盗聴器をくれ。アマヒとの会話をこれで聞いて、もし、捕虜が要人だけなら部屋から出て作戦通りに行動してくれ。他に捕虜がいるなら……レーザーガンを差し出して捕まるしかない」
サラは盗聴器をポケットから取り出しながら言った。
「それならわたしが行くわ。司令官に何かあったら誰が支持するのよ?」
「危険だ。部屋から出て何かあったらどうする?」
「危険なのはここにいても同じよ」
カイはサラが手に持っていた盗聴器を取り上げ、自分が持っていた受信機とイヤホンをサラの手に置いた。
「僕が行く。これは司令官としての命令だ。僕が決行と叫んだら作戦を遂行してくれ」
カイはレーザーガンを構えてドアを強く叩いた。
「あとは頼む」
カイはそう言うと開きかけたドアに素早く手をかけレーザーガンで兵士を撃って部屋の外に出てドアを閉めた。
カイは兵士にレーザーガンを向けながら一番端の狭い部屋に向かった。
「アマヒと話しがしたいと伝えてくれ!」
カイは兵士に言い放つと狭い部屋に入り、ドアに向かってレーザーガンを構えて立った。
兵士は部屋まで追って来なかった。
しばらくして例の白い壁がガラスのようになってアマヒが映された。
カイはドアに背中をもたせかけてアマヒの方を見た。
「カイだったな。ここまできたことは褒めてやろう。無駄な抵抗はやめて降伏しなさい」
アマヒはカイを見下ろしながら言った。カイはアマヒを睨みつけて聞いた。
「捕虜とは誰のことだ?」
アマヒは少し考えてから答えた。
「……ここに捕まっているお前たちの要人のことだ」
カイはアマヒが何か隠しているように感じて、アマヒがどう出るか探りを入れるための返答をした。
「なら取引には応じない。3人ぐらいここから連れて抜け出せる。もしくは置いていく」
アマヒは長らく黙っていた。
アマヒが何も言わないのでジョージたちはもういないと判断し、カイが決行と叫ぼうとしたとき、アマヒが口を開いた。
「他に捕虜が50人いる。さてどうする?お前たち次第で捕虜の命はないぞ」
盗聴器を聴いていたサラは50人と聞いて気落ちした。わかっていた事とはいえ、心のどこかで微かに希望はあった。その微かな希望を打ち砕かれてしまった。
「信用できないな。本当に生きているのか?」
カイはアマヒを見据えて強く言った。
アマヒは映像を見せた。そこには戦闘員たちの姿が映っていた。ジョージの姿も見えた。
「この映像が本物だという証拠は?地球はどうやら映像の技術がかなり高度なようだから。偽物の映像を見せられて、騙されて捕まるなんて仲間に言い訳が立たないからな。実際に本人たちを目の前にして確認しないと信用しない」
カイはジョージたちに会えるまでなんとしてでもアマヒを言いくるめてやると決意していた。
アマヒはまた長らく黙っていたが、カイの決意が手に取るように伝わった。
「よかろう、捕虜のところに案内する」
アマヒがそう告げると、カイは内心ホッとした。
カイはドアから離れてレーザーガンを構えた。兵士がドアを開け、ついて来いというそぶりを見せた。
カイはレーザーガンを構えたまま兵士の後をついて行った。
兵士はホールに入って行き、扇形の階段がある右側のドアを開けた。ドアの先には長い通路があった。その先に幾つかのドアがあって、そのうちのひとつのドアを兵士が開けた。
戦闘員たちが見えた。
カイはその瞬間、「決行!」と大きな声で叫んで一緒に来た兵士をレーザーガンで撃った。
サラたちはカイの「決行!」という言葉を聞いて、レーザーガンでドアの鍵を壊して部屋の外に出た。幸い廊下には誰もいなかった。
サラがホールの入り口で見張っている間にラージとドユンは要人たちを部屋から出した。
要人の1人が文句を言った。
「助けに来るのが遅いじゃないか!」
「うるさい。足手まといになるなら置いてくわよ!」
サラがレーザーガンを要人に向けて言った。要人は萎縮して黙りこんだ。
「行くわよ」
サラがホールのドアを開けた。兵士が数人いた。サラとラージが兵士と応戦している間に、ドユンがエレベーターのボタンを押した。エレベーターの扉はすぐに開いた。
要人をエレベーターに乗せ、レーザーガンで応戦しながらサラたち3人も乗りボタンを押して扉を閉めた。エレベーターは上へ上がって行った。
オリバーはドユンから連絡を受けてピラミッドに向かって飛行した。
「1番大きいピラミッドだったな」
オリバーが操縦している小型宇宙船は近くに待機していたのですぐにピラミッドに着いた。ちょうど石が動きエレベーターが上がってきたところだった。
ドユンがオリバーに手を振り、オリバーは近くに着陸した。
急いで要人たちを乗せ、ノアたちのいる宇宙船に向かうように言った。
「ノアにそいつらを月へ連れて帰るように言って。オリバーはまた戻って来て待機しててちょうだい」
サラがそう言うとオリバーは頷き、すぐにノアたちのいる宇宙船に向かった。
要人たちは宇宙船の中で口々に言った。
「全く危ない目に遭えわせやがって。あの女はなんという名だ。帰ったら処罰せねば」
「レーザーガンを我々に突きつけるなんてけしからん!」
「なぜもっと早く助けに来れなかったのだ。本部長にも処罰が必要だな」
要人の戯言を聞いていてムカついたオリバーはわざと宇宙船を回転させた。
「うわーっ!」「何するんだ!」「やめてくれ!」
要人たちは叫んだがオリバーは何度も回転させた。
ノアたちの待つ宇宙船に着く頃には要人たちは動く気力も言葉を出す気力も失うほどだった。
オリバーは着陸すると要人を宇宙船から放り出し、ノアたちに言った。
「こいつら役立たずを今すぐに連れて月に帰ってくれ。人工衛星がまた打ち上げられたから気をつけてな。あ、そうそう、ムカつくこと言ったら宇宙空間に投げ出してくれて構わないから」
オリバーはそれだけ言うとまた戻って行った。
ノアとニコルは顔を見合わせてどうする?とお互い言った。
「早く宇宙船に乗って。でないとまた捕まるよ」
ニコルが要人たちに言いながら宇宙船に乗った。
何か文句を言いそうな要人に向かってノアも言った。
「さっさと乗らないと置いて行きますよ」
要人たちは苦渋な顔をしながら黙って宇宙船に乗り込んだ。
要人を乗せた宇宙船は月に帰るため飛び立った。




