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第一部 第三章 ①

「アマヒ様、大型宇宙船がカナダ方面に現れました。どうなさいますか?」


 北アメリカ大陸担当の兵士が映像を通してアマヒに報告があった。アマヒは人工衛星から送られてくる画像を確認した。


「月の要人の1人を例の部屋へ」


 アマヒは南アフリカ大陸の担当兵士に通信を繋ぎ指示した。

 要人の1人が狭い部屋に連れた来られ椅子に座らされた。


「おい、一体何をする気だ!」


 目の前の白い壁がガラス張りのようになりアマヒが現れた。


「おい、お前!早く我々を解放しろ!」


 要人はアマヒはを指差しながら偉そうに言った。


「侵略者の捕虜のくせに偉そうだな。カイはもっと礼儀正しかったぞ」


「なんだと!」


 要人は立ち上がりガラスだと思っている壁を叩いた。


「そんなところにいないでこっちへ来い!」


「……カナダ上空を飛んでいる宇宙船は月の物か?」


 アマヒは飛んでいる宇宙船の映像を映して見せた。


「!!」


 要人は絶句した。上から撮られているその宇宙船は確かに月の物だ。ここまで高度な技術があるとは思いもしなかった要人は青ざめて、フラフラと椅子に座った。


「どうやら月の宇宙船で間違いないようだな」


 アマヒは宇宙船の映像を消した。


「……どうするつもりだ?…」


 要人は弱々しい声で聞いた。


「警告しておいたはずだ。侵略は許さぬ」


「待て!あの宇宙船は一般人だけが乗っている。地球に人がいるとは知らされないで、地球で…地球で生きていくことを夢見ている者たちだ。頼む、何もしないでくれ!」


「…そうか」


 それだけ言うとアマヒは映像を消した。

 要人は白くなった壁をなん度も叩いて「待ってくれ!」と叫んだ。


 兵士が入って来て要人は部屋に戻された。

 要人たちは地下牢から出されて風呂トイレ付きの個室の部屋に監禁されていた。

 捕虜といってもそう悪くない待遇に、うまくいけば共存できるやもしれないと軽く考えていた。

 先程宇宙船を見せられ要人は愕然とした。第1団目の宇宙船には自分の家族も乗っているはずなのだ。

 要人は自分の浅はかさを嘆いた。




 カナダ上空を飛んでいた大型宇宙船は水資源の豊富そうな場所を選んで着陸した。

 着陸してすぐに大型戦車や大型車両が何台かやって来て、銃や小型大砲を持った数十人の兵士が宇宙船のハッチ付近を取り囲んだ。

 大型宇宙船は慌てて離陸しようとしたが、大型車両の1つの上部が開いてレーザー砲が出てきて宇宙船に照準を合わせた。

 大型宇宙船のパイロットは離陸を諦めた。

 兵士1人がハッチに近づいてレーザー銃でハッチを壊し始めた。ハッチが壊れて開くと兵士は中に入り乗客に告げた。


「1人ずつ順番に外に出ろ」


 外に出された乗客は大型コンテナ車の荷台に乗せられた。5台の大型コンテナ車に箱詰め状態に乗せられた月の者たちは不安と恐怖に駆られながら、大勢の仲間が一緒にいることで耐えていた。


 大型コンテナ車がついた先は、大きなドーム型のスタジアムのような中だった。

 月の者たちはそこで全員降ろされた。

 宿泊施設のようなところに連れて行かれ、一人ひとり名前と年齢を書かされると番号を書いた紙を渡された。


「その番号はそれぞれの部屋の番号だ。全員部屋へ行くように。逃げることはできないと思え。1人でも逃げたら連帯責任を負わす」


 月の者たちはそれぞれの部屋に向かった。

 ドーム自体はかなりの劣化をしていたが、部屋は風呂トイレがあり、綺麗に整えられたベッドもあった。

 だいたい家族でひと部屋で当てがわれていた。


 しばらくして大型宇宙船に積み込んでいた保存食や日用品、農業に必要な道具や苗、種、個人の荷物などすべてのものが運ばれてきた。

 各部屋から1人スタジアムに呼ばれた。

 まず、個人の荷物を取り、その次に3日分の保存食、日用品がわけられた。


「明日の朝からこのスタジアム内で農業を営んでもらう。今から話し合いをし、明日からの段取りをせよ」


 兵士に言われ、月の者たちはもともと地球に着いてからの行程を計画していたので、その段取りに入った。

 月の者たちはまだ不安と恐怖は拭い切れないが、テントや狭い宇宙船の中で生活しながら開拓していくことを考えるとまだマシではないかと皆思った。


 月の者たちが乗って来た大型宇宙船はさも攻撃されたかのように破壊して放置された。宇宙船の中は燃やして生存者がいないように見せかけた。

 月の者たちが再び訪れたら足を踏み入れないように、宇宙船を見て報復措置をとったと思わせるためだ。



 月の者たちがカナダで捕虜になってから10日が過ぎた頃、別の宇宙船がアフリカ大陸にやって来た。

 アマヒは報告を受け、すぐさま巨大戦車の3D映像を映した。戦車は宇宙船を踏みつけるかのように動いて見せた。

 慌てて逃げ出した月の者を50名をすべて捕獲して、大型車両に乗せた。

 車両内で全員目隠しと猿ぐつわをかまし、大型の飛行機に乗ってエジプトまで連れて行った。


 50 名はピラミッドの地下にある基地に連れて行かれ、大きな部屋に入れられた。ベッドはないが布団は人数分積み重なれており、風呂もトイレもあった。

 この部屋には大型モニターがあった。

 モニターから映像が流れた。


「わたしは地球帝国の女王アマヒ。月の者たちよ、あれほど足を踏み入れるなと警告したにも関わらず足を踏み入れたならば相当の覚悟を持ってきたと考えよう。明日から奴隷として働いてもらう。何をするかは追って話す」


 それだけ言うとモニターは切れた。

 月の戦闘員たちは泣く者や叫び出す者、震える者など、パニックに近い状態だった。


「みんな聞け!命があるだけマシだ!」


 言ったのはジョージだった。


「前回来たときもそうだったが、地球人はむやみに人を殺めることはしない。現にカイやフラマは捕虜になっていたが、地球に帰された。捕虜の間ちゃんと3食食事もあったそうだ。今、嘆き悲しむより、ここから脱出する方法を前向きに考えよう!」


 戦闘員たちは静かになり、落ち着きを取り戻した。


「そうだ、必ず月から助けに来るはずだ。それまで希望を持って頑張ろう!」


 誰かが言った。みんな頷いたり声を出したりして元気を出そうと努力した。

 

 ジョージたちが捕虜になって数週間が過ぎた。

 ジョージたちは毎日目隠しされ、バスに乗せられて工場に連れて行かれた。

 工場はいくつかあって数人ずつ分かれて作業をさせられた。

 自動車製造に従事する者、日用品製造に従事する者、パン製造に従事する者、何かわからない精密機械に従事する者に分かれていた。

 そのほとんどが機械が勝手に動いて製造していた。捕虜たちは材料の補充や完成した物のチェック、整理、仕分けが仕事だった。

 ジョージは技術の凄さに感銘していた。月でもあらゆる物はほぼ機械が製造していたが、これほどまでに洗練され、細かい作業を行うことはできていなかった。


 工場には月の者以外、兵士が機械の操作、管理のために数人ずついるだけだった。

 兵士はときどき機械の操作の仕方を教えてくれたり、休憩時間には外に出させてくれたりした。

 戦闘員たちは地球の空気を堪能し、青い空やそびえ立つ山々を見て感動していた。涙を流す者もいた。

 

 ジョージは疑問に思うこともあった。地球に来てから鎧かぶとを纏った兵士にしか会っていない。

 この工場で働いていた者はいないのか?地球の一般人たちはどこにいるのだろうか?それとも兵士以外はいないのだろうか?


「地球の人類はほぼ壊滅しただろし、主要人材は全て月に移住したなずなのに、この千年でここまでの技術を開発するのは奇跡に近くないだろうか」


 ジョージは宿泊部屋に戻ってから他の戦闘員と話した。


「僕はそういうことに疎いのでよくわかりませんが、技術的にすごいなとは思います」


 戦闘員の1人が答えた。他の戦闘員たちも話し出した。


「この技術を発展させた地球人はどこに住んでいるのでしょうか?」


「そういえば兵士しか見たことないな」


「もっと野蛮人もいると思ってたが、そうではなかったな。兵士も無口だが割と親切だしな」


「ここ数週間無理なく働かされ、飯もちゃんと出てる」


「そうだな。毎日パンと燻製ものばかりだがな」


 戦闘員たちは笑った。

 ここに来たときに比べて、戦闘員らは明るくなった。数週間が経っての慣れもあり、命を脅かされる事態も起きていないからだろう。

  だがいつまでもこのままではいけない。ここから脱出して月に戻る方法を考えなくてはとジョージは思った。


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