第二部 第七章 ①
アランが月の次発隊の要請をして3日後、カナダのドームに次発隊の大型宇宙船と小型宇宙船10機が30名の隊員を乗せて到着した。
「相手が油断している隙に攻撃をする。相手のレーダーに反応しないように大気圏ギリギリに飛行して真上上空に着いたらそのまま大型宇宙船のレーザー砲を発射する。発射しながら降下して基地を殲滅させる」
次発隊の指揮官トムが言った。
「殲滅って……地球人も一緒に殺すつもりなの?」
サラが怪訝そうな顔をして言った。
「基地にいたならしょうがない。基地だけ破壊は無理だろう」
トムが冷たく言い放った。
「そんな……せっかく地球で耐え抜いて生きてきた人間なのよ!破壊するのは格納庫と軍事設備で十分じゃないの?」
サラはトムに噛み付くように言った。
「そんな甘いことを言っているからこれまで上手くいかなかったんだ!もっと早く地球に移住できていたはずだ。ここから先はわたしが指揮をとる。敵基地に今すぐ出発する」
「ちょっと……」
サラが文句を言おうとするとアランが止めた。
「あなたがあなたの隊を動かすのは自由です。だが我々の隊は残る」
アランはキッパリとトムに言った。
「ふん、勝手にしろ。わたしたちに手柄を取られて後悔するなよ」
トムはそう言い放つとアランたちの大型宇宙船から出て行った。
「ベーっ!後悔するのはそっちよ!」
サラは舌を出して言った。
「さて、どうするか?地球人がいたとしてどうやって助ける?あれは小惑星でも破壊するような勢いでレーザー砲を撃ちそうだ」
「今のわたしたちは無力ね……無事を祈るしかないわ」
サラは下唇を噛み締めた。
トムの次発隊は大型宇宙船と小型宇宙船10機をともなってアメリカの軍事施設に向かって大気圏ギリギリに飛行して行った。
軍事施設の真上上空に着くと大型宇宙船はレーザー砲を撃ちながら降下した。
小型宇宙船10機は大型宇宙船の周りを飛行しながら戦闘機が現れると攻撃した。
大型宇宙船はレーザー砲であたり構わず撃ち続け、およそ10km四方の土地がボコボコになった。
戦闘機も現れなくなり、辺りが落ち着くと大型宇宙船と小型宇宙船10機は着陸した。
「ワッハッハ!ほら見ろ!難なく片がついたじゃないか!生き残りがいないか探せ。人間なら捕獲しろ!ロボットなら壊せ!……いや待て、奴隷として働かせられるな。壊さず捕まえろ!役に立ちそうな物や使えそうな物も持ち帰るぞ」
トムが傲慢さを出しながら命令した。
大型宇宙船の操縦士以外全員で軍事施設の捜索にあたった。
人間やアンドロイドやヒューマノイドは見つからなかった。
隊員たちはトムの命令通り、使えそうな物を探して見つけては大型宇宙船に積み込んでいた。
「指揮官!何か大きなロケットのような物がこちらに向かって飛んできています!」
大型宇宙船の操縦士が慌てた様子でトムに伝えた。
「何だと⁈全員退避!」
トムはそう言うと大型宇宙船に乗り込んだ。
「すぐに離陸させろ!」
トムが操縦士に告げた。
「まだ副操縦士も乗っていませんし、他の隊員もまだ…」
「構わん!小型宇宙船に乗って逃げるだろう、早く離陸しろ、命令だ!」
操縦士は渋々離陸準備に入った。
外では隊員たちが何が起こったのかわからず呆然としていたが、大型宇宙船が離陸を始めたのでみんな慌てて小型宇宙船に乗り込んだ。
核ミサイルはすぐそこまで来ていた。
隊員はミサイルに気がつき慌てて離陸したが間に合わなかった。
大型宇宙船や小型宇宙船は直接ミサイルに当たらなかったが爆撃で全機吹っ飛んで大破した。中には至近距離だったがために跡形もなく消えた宇宙船もあった。
翌日、カナダにいるアランたちはトムたちの次発隊が1機も戻らないことに懸念していた。
「どう考えてもおかしいわ。小惑星をも破壊するようなレーザー砲を撃てば1時間もあれば殲滅できるはず。1機も戻って来ないなんて」
サラが眉間に皺を寄せて言った。
「昨日ならまだしも今日になっても1機も戻らないとなると逆にこっちが殲滅された可能性もある」
アランが顔を歪めながら言った。
「ジョーダンだろう?よっぽど油断しているか、戦いを放棄しない限り、あっちの軍事力でこっちが全滅するなんてあり得ない」
オリバーが首をすぼめて首を振りながら言った。
「様子を見に行って見るか…」
アランが言うとオリバーがすかさず言った。
「俺が行って来る。1番場所を把握している」
「ああ、頼めるか?1人では行くなよ。2機で2人ずつで行ってくれ。1機は何かあったときのためにすぐ戻れるよう離れて行動するように」
アランが心配そうな顔で言った。
「リョーカイ。ドユンとラージとユートで行ってくる」
オリバーはそう言うと大型宇宙船を降りて行った。
「大丈夫かしら?何事もなければいいけど」
サラはため息をついた。
「何事もないことはないだろうな。トムは作戦成功していたらいち早く帰って来て自慢と嫌味を言っただろうからな。何かあったには違いない」
アランもため息をつきながら、手でこめかみを押さえた。
オリバーはドユンとラージとユートを招集して事情を説明し、小型宇宙船に乗り込んだ。
2機は大気圏ギリギリを飛行してアメリカのネバダ州に向かった。
3000㎞飛行したぐらいに行き先の空気中がどんよりとして異常を感じた。
「一旦進行停止する」
オリバーはラージに通信し、2機はホバリングした。
4人はそれぞれ双眼鏡で確認した。
行き先は黒い雲に覆われていて何も見えなかった。
「地球はこんな現象もあるのか?」
オリバーが言った。
「え、僕は分かりませんけど、通常じゃない気がします。この前通ったときとまるで違う場所のようです」
ドユンが不安げに言った。
「これ以上は危険な気がする。今日はもう戻ろう」
ラージが通信して来た。
「そうだな。何が起こっているのか想像もつかない。危険だ」
オリバーはラージにそう告げて2機の小型宇宙船はカナダのドームに戻った。
カナダに戻った4人はアランに報告するために大型宇宙船に乗り込んだ。
「目的地の基地まであと600㎞ぐらいのところで前に通ったときとはまるで違う景色というか、どんよりとした空気で黒い雲に覆われていて何も見えなかった。異常を感じて引き返してきた」
オリバーがアランに状況を説明した。
「トムたちは何かに巻き込まれた可能性があるな…」
アランが考え込むように言った。
「何が起きているかわからないうちは行かないほうがいいわね」
サラが不安そうに言った。
「3日に1度、近くまで飛行して状況を確認しよう。オリバーとドユンとラージとユート、その任務を任せる」
アランが言うと4人はほぼ同時に返事した。
「了解しました!」
4人は大型宇宙船を降りてそれぞれの任務に戻った。
アランは4人が出ていくとサラに言った。
「俺は今から月のサーバーにアクセスして状況を入力して何が起きたか調べて見るよ」
「そう?地球の外に出るのね。じゃあわたしも降りとくわ」
「ああ、少しの間ドームを頼む」
アランがそう言うとサラは手を振って大型宇宙船から降りた。
アランは大型宇宙船を離陸させ地球外に出て月のサーバーにアクセスできるところまで月に近づいた。
オリバーたちが見た状況を大型宇宙船に設備されているコンピューターに入力して何が原因かと入力した。
答えがいくつか並んだ。
巨大な産業公害、これはあり得ない。山火事森林火災、これも燃える木がない。火山活動、火山はなかった。砂嵐、砂はないが降り積もった灰はある。これだろうかとアランは考えたが、それならトムたちは戻ってくることができる。
別の観点から入力してみた。
戦争 黒い雲 よどんだ空気 原因。
爆発による燃焼:核爆弾や大規模な爆発により、強い上昇気流が発生し地上の黒煙や砂ぼこり一瞬で上空に巻き上げる。アランはこれかもしれないと思った。
地球 アメリカ 軍事基地 核爆弾で入力した。
アメリカで核爆弾の保管場所や発射基地だった場所がいくつか出てきた。その中にネバダ州も含まれていた。
アランはこれだと思った。むやみやたらにレーザー砲を撃って核爆弾に当たったに違いない。
核爆弾の威力と入力してみた。アランは出てきた文を読んで次発隊は全滅したなと思った。
地球に戻るとアランはリーダー的隊員を集めて今回の件を話した。
「核爆弾は恐ろしい兵器だ。爆発が落ち着いた後も放射線による2次被害がある。身体に及ぼす影響も大きい。おそらくネバダ州だけではなくかなり広い範囲で影響があるだろう。何年か何十年かわからないが西方面には行ってはならない。各隊員にも報告するように」
アランは厳しい顔で告げた。
みんなが大型宇宙船から出て行ったあと、サラが不安そうな顔で聞いてきた。
「地球にそんな恐ろしい兵器があるならここも危ないのでは?」
「核爆弾はいろんな国が保有していたようだ。ネバダ州はレーザー砲による自滅だと考えてはいるが、アマヒがその気になればミサイルが飛んでくる可能性も否めない。ただ千年も前の話だ。ミサイルを飛ばせる設備が使えるかどうか」
アランは言いながら自信がなかった。
サラはこれから先、核爆弾という恐怖を背負いながら戦わなければならないのかと気持ちが落ち着かなかった。




