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第二部 第六章 ③

 カイはジョージと地下都市を見て回った。

 まずは地下2階を歩いた。

 カイとしてはR研究所だけ調べさせてもらえばそれで良かったのだが、アマヒが1番拒むことだろう。

 地下都市は閑散としていた。廃都市といっても過言ではなかった。

 コンビニのような店はやっていた。


「コンビニはあるんだな」


「地下3階よりさらに下に備蓄庫があるらしい。コンビニは備蓄庫の物を配給するためにある。売っているわけじゃない」


 そう言ってジョージはIDカードを見せた。


「ここに来てもらったものだ。これをリーダーにかざして必要な物をもらうようになっている」


「それさえあれば何でも貰えるのか?」


「必要であればな。誰が何を貰ったかアマヒが全て管理しているから余分にもらえばすぐにアマヒから警告が入る」


 カイはそれを聞いて笑いながら言った。


「ジョージは警告を喰らったことがあるようだな」


「ああ、動けるようになったとき、地上に出ようと思って必要なものを過多に貰ったらすぐに警告された」


 ジョージは苦笑いした。


「これは歩きだと10日あっても全部見て回れないな」


 カイが言うとジョージは笑いながら言った。


「全部見る必要があるのか?アマヒにオートウォークを動かしてもらうか?」


「そうだな、それ楽だな……ここが地下2階ということは地下1階があるんだろう?そこは何があるんだ?」


 カイが聞くとジョージは首を傾げながら答えた。


「住居区域がある。みんなそこで生活している。農場で作物や家畜を育てている。学校もあったらしいが今は閉鎖されている」


「そうか……」


「今家畜や作物を地上に移動させようと計画立を立てているみたいだ」


 捕まる前地上で見た者たちはそのために整備していたのだなとカイは思った。


「地下1階に行ってみてもいいか?」


 カイが言うとジョージは頷いた。

 カイとジョージはエレベーターに乗って地下1階に行った。

 地下1階も地下2階とあまり変わりがなく閑散としていた。


「あの巨大なドームハウスのようなものは何だ?」


 カイは円形の大きなドーム型の建物がいくつかある方を指差して言った。


「あれが農場だ。家畜がいる建物と米や麦を作っている建物と野菜や果物を作っている建物がある。あの中では人工の太陽光が設備されているそうだ」


「あの建物は学校か?」


「そうらしい。さっき言ったように今は閉鎖されていて唯一図書館だけが出入りできる」


 カイはそれを聞いて喜んだ。


「地球の本が読めるんだな。ジョージ今すぐ行ってみよう」


「相変わらず本好きだな。ここでも本じゃなくパソコンで何でも読めるぞ」


「本がいいんだよ……パソコンってどこで使えるんだ?」


 カイはパソコンがあればアマヒのシステムにハッカーができるのではと考えた。


「図書館にもあるし、おまえがいたR研究所にもある。ただしIDカードが必要だがな」


 カイはIDカードを入手すれば何とかなるかもしれないと思った。


 図書館は思ったより広かった。無数に並ぶ本を見てカイは興奮した。


「嬉しそうだなカイ」


 ジョージは微笑みながら言った。


「ああ、嬉しいね。どこに何の本があるかパソコンで調べればわかるようになっているか?」


 カイはパソコンが並んである机の前に立って言った。


「さあ、俺は使ったことないから。調べるならIDカード貸そうか?」


「うーん……今はいい。今度ゆっくり来るよ」


 2人は図書館を出た。

 しばらく歩くと住居区域が見えた。


「すごいマンションの数だな」


「ほぼ空き家だ。俺もここのマンションの一室を借りている」


 カイはマンションを見渡して言った。


「この地下都市に人は何人住んでいる?」


「さあ、はっきりとした人数はわからないが、世界中からコールドスリープしていた人間をここに集めたらしいから数十人はいるんじゃないか」


 ジョージはそう言うと視線を下に向けた。


「……俺は人間の1人として数に入るかわからないが……」


 カイはジョージの言葉に息を呑んだ。

 3日前、小型宇宙船と戦闘機が戦っているのを見ていたとき、戦闘機が墜落して乗っているのがヒューマノイドで良かったとカイは安堵した。機械だから墜落して壊れてもいいと思ったからだ。

 だったらジョージは?彼も身体の半分は機械だ。壊れても良かったと言えるのか?


「……ジョージ、あなたは立派な人間です。僕はここで捕えられてすぐに地球に小惑星が衝突してからの千年の記憶を10日間かけて断片的に見せられた。気がついたとき僕の脳と身体は見た目は繋がっているのに、神経は切り離されたような状態になっていた。脳が身体に指令を送れなかった。丸一日かけてリハビリしてようやく脳が指令を送り、身体がキャッチして動くようになった。そのとき人の身体も機械と何ら変わりないと思ったんだ。だから、身体が何でできていようが自分の意思で動き、自分の言葉で伝えられることができるのは人間であるという証です」


「ありがとう、カイ…」


 ジョージは俯いて顔を隠していたが、肩が微妙に震えていた。


 カイは考え方を変えなければといけないと思った。

 ヒューマノイドだから、機械だから壊れてもいいなんて、生物にしても無生物にしても、この世に生み出されたものの全てが元は同じ素粒子からできているのに人間だから人間の命は尊いなんて、それは傲った考えだとカイは反省した。

 この世に生み出されたもの全てを尊み感謝すべきなのだと思った。

 アマヒにしてもそうだ。所詮は機械だとカイはアマヒを見下していた。

 人の心がわからない冷たい機械だと。

 共存していかなければならないのは地球人と月の者という人間同士ではなく、人間とあらゆる生物とあらゆる無生物、そして人間が創り出した全てのものだ。


 カイは今すぐアマヒと話がしたくなった。

 アマヒが危惧していたのはもしかすると人間よりも増えたアンドロイドやヒューマノイドのことかもしれない。

 月の者が地球に来てそれらのものを奴隷のように、ただの機械のように扱うことを憂いていたのかもしれない。

 アマヒも機械だけど、より人間に似せようとしていた。それは同等の立場でいたかったからではないか。


「すぐにサーバールームに戻りたい。戻ってアマヒと話がしたい」


 カイはジョージに向かって言った。

 ジョージは急にどうしたのかと言う顔をしたが、片方の口角を上げて頷いた。


 カイはサーバールームの入り口まで来ると、アマヒと話がしたいから開けて欲しいと頼んだ。

 入り口のドアが開き、カイは中へ入った。


《何事ですか、カイ。地下都市を見て回っていたのでしょう》


「アマヒと話がしたくなった」


 カイはにっこり笑った。


《カイがわたしの前で笑ったのは初めて見ました。どのような心境の変化ですか?》


「僕は考えを改めようと思って。アマヒ、アマヒは…」


 カイが言いかけたそのとき、警報のブザーが鳴った。


「何?」


《どうやらアメリカの軍事施設が攻撃されたようです。モニターを映します》


 モニターには大型宇宙船がレーザー砲を軍事施設に向けて撃っているのが映った。

 

《はるか高い上空から突然レーザー砲を撃ってきたようですね。あれが前にカイが言っていた小惑星を破壊するために作られた武器ですか?》


「そうだ。レーザー砲だ。地球用に威力は弱めているようだが」


《そうですか。あのようなものがあればこちらは一溜りもありませんね》


「……すまない」


《なぜカイは謝っているのですか?カイは月の者。喜ぶべきでは?》


「それは…月とか地球とか関係ない。何にしても破壊することはそのものに対して申し訳ないと思っているだけだ」


《面白いことを言いますねカイは。しかしわたしもこのままでは終われませんので破壊という威力を使います》


 カイはどういう意味だと考えた。


《地球にはいくつかの国で核兵器のミサイルというものを保有していました。これを使うと地球が壊れるので使いたくありませんでしたが、もうこれしか残っていないので仕方ありません》


 カイは言葉を失った。

 核兵器は本で読んだことがある。とんでもない兵器だ。なぜそんなものを製造したのか、本を読んだとき不思議で仕方なかった。


「アマヒ、それがどういうものかわかっているのか?」


《知っています。核兵器を使えばカナダのスタジアム周辺はあっという間に灰になるでしょう》


「わかっていて使うのか⁈」


《月の者も軍事施設や周りが全て破壊されるのをわかっていてレーザー砲を使ったのではないのですか?同じことをするだけです》


 カイは急いでメインシステムの入力装置のキーボードを叩いた。パスワードを入力するように促した画面がでた。


「アマヒ、パスワードは何だ!」


《なぜ教える必要がある?発射ボタンを押しました。目標はアメリカ軍事施設》


「くそっ」


 カイは尚子と正孝の部屋で見た2人の誕生日や記念日を打ち込んだ。

 パスワードが間違っていると警告音が鳴った。

 

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