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第二部 第六章 ①

 カナダのドームを月の者が占領して半月が経った。

 はじめに攻撃を仕掛けてから地球人は現れていない。

 地球外にいた大型宇宙船もドーム近くに着陸していた。

 アランたちは警戒態勢を続けたまま、ドームで暮らしていた月の者千名を自由にドームの外へ出入りできるようにした。

 ドームの周りの朽ちた建物の探索を行なって使える物がないか探したり、畑になりそうな土地を探したりした。


 小型宇宙船は毎日2機で戦闘機が逃げた方向を捜索した。

 戦闘用の基地があるなら基地ごと破壊しておくと、開拓地を安心して広げていくことができるからだ。

 その任務に着いてのはオリバーとドユンとラージとユートだ。それぞれ2人ずつ小型宇宙船に乗ってドームから500㎞以上離れた西の方向を毎日範囲を広げながら探していた。


「今日はまっすぐ西に海に出るまで飛んでみるか。距離にして4000㎞ぐらいだ。2時間もあれば着くだろう」


 操縦しているオリバーがドユンに言った。


「いいですね。海をゆっくり見てみたいと思っていたんです」


 ドユンは嬉しそうに言った。


「遊びに行くんじゃないぞ。地球の基地を探しに行くんだ」


 オリバーはそう言いながらも笑っていた。

 オリバーはもう1機の小型宇宙船に乗っているラージとユートに捜索する場所を伝えた。


「了解です。では僕らは1000㎞辺りの内陸部を捜索します」


 ラージがオリバーに伝えた。


 オリバーたちはドームからまっすぐ西に向かって飛んだ。2時間ほど飛ぶと海が見えた。


「おー、海ですね。青いと聞いていたけど近くで見ると黒いなぁ。」


 ドユンが少しガッカリしたように言った。


「火山灰やら塵やらが溜まっているんだろう。もっと先の広いとこなら青いかもしれない」


 オリバーが言った。


「そういえば砂漠も白くなかった。黒みを帯びた灰色だったですね。あれも灰だったんですね」


 ドユンはエジプトを思い出しながら言った。


「月で育ったせいか今の地球も美しく見えるけど、本来の地球はもっと綺麗だったんでしょうね」


 ドユンが言うとオリバーは頷いて言った。


「そうだろうな。俺たちが生きている間に見れたらいいな、元の美しい地球を」


 そう言いながらオリバーは陸地を超えて海の上を飛んだ。


「あ、あの辺りは青いです。青というより緑がかった色ですね。太陽の光に照らされてキラキラしてますよ」


 ドユンははしゃいでいた。


「Uターンするぞ」


 オリバーはそう言って小型宇宙船を旋回させ陸地に向かった。


「往路より南下して帰る」


 オリバーはドユンに伝えて来たときより100㎞ほど南下して飛行した。

 30分ほど飛行したとき、突然レーダーが戦闘機をキャッチした。真下だ。

 オリバーはすぐに小型宇宙船の高度を上げ戦闘機が飛行できないところまで上昇した。


「いきなりレーダーに表れたということはこの真下に基地があるということですね」


 ドユンが言った。


「おそらくそうだろう。とりあえずドームに戻って報告だ」


 オリバーはそう言って高度を上げたままドームに向かった。


 ドームに戻ったオリバーとドユンはすぐに大型宇宙船に乗り込みアランに報告に行った。

 アランはサラと今後の行動を考えていた。

 オリバーはアランに飛行中、突然レーダーが戦闘機をキャッチしたことを伝えた。

 アランは地図を広げた。

 オリバーは地図上を指で差しながら説明した。


「この海岸沿いからここに向かって30分ほど飛行したときだった。いきなりレーダーがキャッチして。小型宇宙船の真下だった。急いで高度を上げたので無難を得たが」


「アメリカのネバダ州辺りだな。基地を破壊するとなると小型宇宙船のレーザー砲では時間がかかる。大型宇宙船に積んでいるレーザー砲なら一気に肩がつく」


 アランはそう言って作戦を練った。

 大型宇宙船で敵基地を破壊するが、小型宇宙船7機は大型宇宙船を戦闘機から援護するために一緒に向かう。

 大気圏ギリギリを飛行して現地に向かい、一気に降下して大型宇宙船のレーザー砲で爆破する。戦闘機は小型宇宙船が撃破する。

 決行は明日の夜明け前に出発する。


「敵基地に生身の地球人がいたらどうするの?わたしは……助けたいわ」


 サラは視線を落として言った。


「破壊するのは格納庫や軍事設備だけだ。これまで前線で戦っていたのはアンドロイドやヒューマノイドばかりだ。地球人がいたらおそらく地下施設にいるだろう」


 アランが言うとサラは心配そうに頷いた。

 アランは各小型宇宙船に乗り込んでいる隊員に通信し作戦を伝えた。

 明日の夜明け前に出発ということで、隊員たちは交代で仮眠した。


 深夜、見張りをしていたノアが、レーダーが戦闘機をキャッチしたのを見つけ大型宇宙船にいるアランと各小型宇宙船に連絡を入れた。

 戦闘機は西に200㎞の方角に10機レーダーが感知していた。


「全員戦闘態勢に入る!大型宇宙船はドーム上空にて待機、明朝出発予定だった小型宇宙船7機は西に向かって戦闘機に攻撃、残り2機はドーム周辺で待機!」


 アランが指示を出し、それぞれ任務に着いた。


 小型宇宙船7機は高度を高く上げ、戦闘機目指して西に向かった。

 西に100㎞ほど飛行すると戦闘機と遭遇した。戦闘機は高度ギリギリまでの高さで飛行していて小型宇宙船を射程距離範囲内に捉えるとすぐにミサイルを撃ってきた。

 小型宇宙船7機はさらに上昇してミサイルの届かないところまで高度を上げるとそこからそれぞれ10機の戦闘機目掛けてレーザー砲を撃った。

 距離があったので戦闘機はギリギリで避けた。


「俺が戦闘機を惹きつける。その間にレーザー砲を撃ってくれ」


 オリバーは他の6機の小型宇宙船にそう伝達すると、高度を下げて戦闘機の後ろに回ってレーザー砲を撃った。レーザーは戦闘機1機に命中し、墜落した。

 他の戦闘機がオリバーの小型宇宙船を狙ってミサイルを発射した。オリバーはミサイルを紙一重で交わし、高度を上げずに逃げた。3機の戦闘機がオリバーの小型宇宙船を追ってきてミサイルを撃ってきた。

 その間に3機の小型宇宙船が3機の戦闘機の真上に近づきレーザー砲を撃った。

 3機の戦闘機はレーザーに当たり墜落した。

 さらに4機の戦闘機がオリバーと他の3機の小型宇宙船を追いかけミサイルを発射した。

 残りの3機の小型宇宙船が高度を下げて戦闘機に向けてレーザー砲を撃った。

 その隙にオリバーたち4機の小型宇宙船は上昇して再び、下降して戦闘機の真上からレーザー砲を撃った。

 3機の戦闘機に命中した。残りの戦闘機は後3機。

 3機の戦闘機は小型宇宙船目掛けてミサイルを何発も発射した。

 小型宇宙船の1機がミサイルを避けきれず後尾に当たった。乗っていた2名の隊員は射出座席で小型宇宙船から脱出した。

 オリバーたち4機は射出座席で脱出した隊員を援護するために3機の戦闘機の前方に出てレーザー砲を撃った。戦闘機もミサイルを撃ってきた。

 3機の戦闘機全てレーザー砲が命中したが、小型宇宙船の方も2機ミサイルに当たった。当たる直前に2機とも射出座席で脱出したが、爆破した小型宇宙船の破片で負傷した。

 

 オリバーたちは10機の戦闘機全てを墜落させたので任務完了ということで、射出座席で脱出した隊員を拾ってドームに戻った。


 怪我をした隊員はすぐに大型宇宙船内で手当てを受けた。

 オリバーはアランに今回の戦闘機討伐の報告をして、小型宇宙船が残り6機になったので、今回のように突然戦闘機で攻撃されるようなことがあれば不利だと伝えた。

 アランは次発隊を急いで出発させるように伝えるため、大型宇宙船を地球外に飛ばし月へ連絡した。

 地球の軍事基地爆破の作戦は月の次発隊が到着してから行うことにした。


「ドームの外の開拓は地球の軍事基地を破壊してからでないと安心して作業ができないわ」


 サラはアランと今後のことを話し合っていた。


「そうだな。今回みたいに不意打ちをかけてこられたら、ドームの中にいてもらった方が安全だ」


「カイはどうなったのかしら?こんな風に攻撃を仕掛けてくるということはまだ話し合いができていないか、失敗したかよね」


 サラは心配そうに言った。


「カイのことだから上手くことを運ぶと信じてるよ。俺たちは俺たちのやれることをやるしかない」


 アランも顔はカイを心配しているようだったが、言葉は自分を奮い立たせるように強い口調で言った。


「そうね。カイの心配どころじゃないわね。カイが聞いたら自分のことを考えろって叱られそうだわ。今はここに集中ね」


「ああ。とりあえず次発隊が到着すれば予定通り、大型宇宙船と小型宇宙船7機でアメリカのネバダ州の軍事基地を破壊しに行く。それまではドームを守り抜くことを考えよう」


 アランが言うとサラは頷いて口元を引き締めた。


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