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第一部 第二章 ③

 捕虜奪還の任務遂行の日が来た。

 小型宇宙船にはカイ、サラ、ラージ、ドユン、ノア、ニコル、オリバーの7人が乗り込み、大型宇宙船にはアラン、ハオ、マナ、エリオス、シャラの5人が乗り込んだ。

 

 本部長からお守りがわりだと全員にレーザーガンが配られた。大型宇宙船にはレーザー砲も搭載されていた。

 2機の宇宙船は地球を目指し、月を出た。


 大型宇宙船は大気圏上空で待機し、小型宇宙船は大気圏に突入した。

 小型宇宙船はアフリカ上空を旋回し、ジョージが操縦していた高速ミサイル搭載の宇宙船を探した。

 しばらくして宇宙船を見つけたカイたちは小型宇宙船を少し離れたところに着陸させた。

 1時間ほど小型宇宙船の中で待機し、地球人が来るかどうか待ってみた。

 あれほど小型宇宙船を旋回させたが、地球人は現れなかった。


「やはり人工衛星で監視していたようだ。まだ気が付かれていない。宇宙船近くまで移動する。周りに気をつけながら行くぞ」


 7人は小型宇宙船を降りてジョージが操縦していた宇宙船に向かった。

 宇宙船に無事着いた7人は中に入って捜索した。

 高速ミサイルは取り除かれていた。おそらく地球人が持ち去ったのだろう。他には宇宙船は異常が見られなかった。


「プロジェクターを見つけて破壊したら、サラとラージ以外の4人はバラバラにこの宇宙船に隠れてくれ。僕は小型宇宙船の中に潜んでおく」


 カイはそう言うとプロジェクターを探すように指示した。7人でプロジェクターを探したが見つからなかった。


「プロジェクターがないなんて、あれは3D映像ではなかったのか?……作戦を少し変更する」


 カイはそう告げるとドユン、ノア、ニコル、オリバーに宇宙船に隠れるように指示し、サラとラージを連れて小型宇宙船に戻った。

 カイは目立つように広範囲に低空飛行を続けた後、前に映像で見た要人たちが捕まった場所とよく似た場所を見つけ着陸した。

 サラとラージを操縦席に座らせ、カイは最後部の座席の下に見えないように隠れた。


 しばらくすると小型飛行機が現れ、中から小型大砲を持った兵士が降りてきて小型宇宙船の前で構えた。

 兵士は操縦席の2人に降りるように命令した。

 サラとラージは小型宇宙船から降り、両手を頭の上に挙げた。

 別の兵士が2人に目隠しと猿ぐつわをかませ、手を後ろで縛った。

 また別の兵士は小型宇宙船に乗り込み他にはいないか探した。兵士は最後部まで歩み寄った。

 カイは呼吸を殺した。

 兵士は最後部の座席を見ると戻って行った。

 

 サラとラージは小型飛行機に乗せられ、小型飛行機は飛び立った。

 カイは大きく息を吐き座席下から出てきた。

 小型飛行機が見えなくなるのを待って操縦席に座り、小型宇宙船を上昇させた。

 肉眼では見えない距離まで小型飛行機に近づき、発信機を追った。


 発信機はある場所で止まった。カイはレーダーを広域から狭域に変えた。するとまた少し動いたが、すぐに止まった。カイは動かないことをしばらく確認してから高度を下げた。肉眼でなんとか見えるぐらいの高さまで降りた。

 四角錐の山のようなものが無数に見えた。中でも1番高いところから発信されていた。


「あれがピラミッドっていう遺跡か」


 カイは地球のことをよく調べていた。特に世界遺産に登録されているものは月の移住者の始祖が地球から持ち出した本の中の写真を見てその美しさに感動した。

 カイは再び高度を上げて引き返した。




 サラとラージはホールに連れて行かれ、目隠しと猿ぐつわを外された。

 扇形の階段の上に仮面をつけ椅子に座った人がいた。

 サラとラージはあれが地球の女王なのかと思った。


「わたしは地球帝国の女王アマヒ。お前たちも月の者か?」


「そうです」


 サラが答えた。アマヒは目を細めて言った。


「2人だけで何しに来た?」


 サラが再び答えた。


「家族を探しに来ました。大型宇宙船でカナダに行く予定だった家族です」


「カナダとは随分違う場所にいたようだが?」


「月には内緒で出てきたのでカナダの場所がよくわからず…宇宙船を見つけたので降りてみたのです」


 サラは捕まったときの言い訳を考えていた。


「家族の名前を言ってみよ」


 サラはドキンとした。なぜ自分ではなく行方不明の家族の名を聞かれたのか。


「……レックス・クライトンとアイラ・クライトン、わたしの兄とその妻です」


 嘘ではなかった。本当にサラの兄夫婦はカナダ行きの大型宇宙船に乗っていたのだ。先に行って開拓してから呼び寄せると言って、幼い我が子と年老いた両親を残して。

 サラの目から涙が流れた。

 アマヒはしばらく黙っていた。


「嘘ではないようだな」


 アマヒはそう言うと兵士に2人を部屋に連れて行くように命じた。


「嘘ではないとはどういう……」


 サラが言いかけたが、すぐにラージと共に別の部屋に連れて行かれた。

 2人が連れて行かれた部屋は、カイとフラムが過ごした部屋だった。


「ほんと、カイの言う通り、風呂もトイレもあるわね」


 サラが言うとラージが頷いた。


「ベッドもフカフカだよ」


「でもひとつだけ大きな不満があるわ」


 サラは手を腰に当てて言った。


「何?」


 ラージが聞いた。


「着替えがないことよ!風呂でせっかく身体をキレイにしたのに、また汚れた服着るなんてまっぴらごめんだわ!」




 カイが4人が隠れている宇宙船のところに戻る頃には陽が沈みかけていた。

 カイは小型宇宙船から降りると、急いで隠れている任務遂行メンバーを呼んだ。

 4人はそれぞれ隠れているところから出てきた。

 カイは外に出るように伝えた。


「外に出て見てみろ」


 カイと4人は夕陽が沈むのを初めて見た。なんて美しい光景だろうと誰もが思った。こんなに美しいところに祖先は住んでいたのかと思うと感慨深かった。

 大地に沈んでいく太陽を見ながら地球での永住をさらに深く願った。


 カイは沈む夕陽を見終わると気持ちを引き締めて言った。


「2人が捕えられている場所が特定できた。今から行く。ノアとニコルはここに残って、こちらからの連絡を待ってくれ。もし何かあったらかまわずこの宇宙船で逃げるんだ。いいな」


 2人は頷いた。

 カイはドユンとオリバーを連れて小型宇宙船に乗り込み、エジプトに向かった。

 

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