第一部 第二章 ②
カイは地球帰還対策本部に行き、まずは要人たちに怒りの感情をぶつけた。
「一体あなたたちは何人殺せば気が済むのですか!ろくろく対策も練らないで行き当たりばったりで行動しようとするからこんなことになるんです!だいたい地球がどのくらい技術を発展させているか知っている人いますか!」
要人たちはざわついて、カイに口々に文句を言った。
「若造が出しゃばるんじゃない!」
「誰の許可を得てここにいる!」
「何偉そうに、我々を誰だと思ってるんだ」
カイは鬼のような形相になり、要人に向かって言いかけたとき、先に本部長が大声を出した。
「いい加減にしろ!千人の移住者と50名の若者の命が消えたんだぞ。お前らの判断で決定を下したことの結果だ!若者を馬鹿にする前に、己の愚かさを自省しろ!」
室内は静まり返った。
「カイ、すまなかった。もっとお前の言うことを真剣に考えるべきだった。本当に申し訳ない」
本部長は深々と頭を下げた。
「本部長……」
カイは何も言わなかった。カイが許していい問題ではなかったからだ。亡くなった者やその家族の気持ちを考えるとカイが答えるべきではないと思った。
「本部長、実は気がついたことがあって報告に来ました」
「どうした?」
カイはチラリと要人たちの方を見てから言った。
「今から話すことは上層部に聞かれたくありません。またいらない判断をして犠牲者を出したくないです。別室で話すか、要人たちを退室させてください」
カイは要人に聞こえるようにはっきりと言った。
要人たちは黙って退室する者やブツブツ言いながら席を立つ者や最後まで粘ろうとする者がいた。
「では、別室に行こうか、カイ」
本部長はそう言うと続き部屋になっている本部長室の扉を開けた。
カイは要人たちを横目で見ながら本部長室に入った。
カイと本部長はテーブルを挟んでソファに座った。
「それで、気づいたこととは?」
「アランたちが見た巨大戦車ですが、あれは3D映像の可能性が高いです」
「何⁈」
カイは自分が人質になっていたときに見せられた映像やアマヒのことを改めて話し、それを踏まえて高速ミサイルやレーザー砲がなぜ効かなかったのか説明した。
「なるほど、地球は3D映像の技術がかなり進んでいるということか」
「はい。だからといって全てが映像ではないと思うので油断は禁物です」
カイはしばらく黙り込んで考えた。
全ての映像はおそらくアマヒがいるとこで操作していると思うが、そこがどこだが皆目わからない。しかし、映像を映し出すためのプロジェクターが映し出された近くに必ずあるはずだ。
それに地球全体を一箇所で監視するためには人工衛星があるはずだとカイは思った。
「映像を映し出すためのプロジェクターがどこかに隠されているはずです。相手がどこにいるか、実際にはどれだけの武器を所持しているか全くわからないのですから、我々がまずできることはプロジェクターを壊すことです」
「しかし、地球に侵入した時点で見つかってしまうのではないか。今までがそうだったように」
「今のままではすぐに見つけられてしまうでしょう。だから監視の目を壊すんです」
カイはニヤリとした。本部長は首を少し傾けた。
「監視の目とは?」
「人工衛星です。地上から地球全体を把握することは不可能に近いです。でも地球人は広範囲で我々の宇宙船を見つけている。つまり人工衛星で監視している可能性が高いです」
カイは身を乗り出して言った。
「地球の周りにある人工衛星を全て爆破します」
「なるほど、我々にとっては人工衛星を壊すことは簡単だ。監視がなければプロジェクターを探すこともできるようになる。よし、レーザー砲を積んだ宇宙船で人工衛星を破壊するよう計画を立てよう」
カイは頷いたが、険しい顔をして言った。
「本部長、僕がこのことを伝えたのは戦争をするためではありません。地球に行った月の者を助けるためです。まだ生きて捕虜になっている者がいると信じているからです。くれぐれもそれを忘れないでください」
「……わかった」
カイが本部長室から出ようとすると、本部長が引き留めた。
「カイ、君に参謀長として地球帰還対策本部に所属してもらいたい」
「……戦争を仕掛けないと約束していただけるならお受けします」
「それは……」
本部長は目を逸らした。月の者が早く地球に移住するには戦争は避けられないと考えているのだろう。
「それでは失礼します」
カイは冷たく言い放って本部長室を出た。
数週間後地球の人工衛星を破壊するためレーザー砲を積んだ宇宙船が月から出立した。
宇宙船にはカイが司令官として乗り込んでいた。
数日前、本部長から呼び出しがあり、捕虜奪還まででいいから司令官として動いて欲しいと頼まれた。それまでは絶対に戦争は起こさないという契約も交わした。
「人工衛星はおそらく数十基はあると思う。素早く破壊していく。近くにあるものは一度に狙え」
カイは砲手に指示した。
人工衛星破壊は順調に遂行された。
任務を終えて月に帰ったカイは対策本部で次の作戦を立てた。
本部長とアランと数人の戦争反対派要人、捕虜奪還のために募った任務部隊10人が集まった。
「人工衛星はおそらく全て破壊できたと思う。地球に降りてもすぐに気づかれることはないだろう。次はプロジェクターの破壊だ」
本部長が言った。カイが作戦を話した。
「7人を乗せた小型宇宙船と5人を乗せた大型宇宙船で地球に向かう。大型宇宙船は地球の大気圏外で待機。小型宇宙船はおそらくまだあるだろう高速ミサイルを積んだ宇宙船近くに着陸する。前回巨大戦車が現れた辺りにプロジェクターが存在するはずなのでそれを見つけ破壊をする」
カイは一旦そこで話をやめた。そして本部長とアランを見た。本部長もアランも真剣な顔で頷き、カイも頷き返した。
「ここからが本題だ。プロジェクターが破壊されればすぐに兵士が駆けつけるだろう。そこで二人捕虜になってもらう。二人には盗聴器を身につけてもらい、発信機は手に埋め込ませておく。残った5人はバラバラに隠れる。隠れる場所は行ってから決める。捕虜になる二人は小型宇宙船の中にいてもらう」
ここまで言うとカイは本部長を見た。本部長はカイに頷いてから言った。
「捕虜として捕まってもらう者を募る。誰かいないか?」
困惑な顔をして誰も手を挙げない。
「捕虜になったからといって殺されたり、拷問を受けることはたぶんない。僕が捕まったときは風呂、トイレがついたきちんとした部屋で3食与えられ、部屋以外出られなかっただけだ」
カイがそう言うと一人手を挙げた。
「わたしがなります。サラ・クレイトンです」
もう1人手が挙がった。
「僕もなります。ラージ・シャルマです」
「2人ともありがとう。期待してる」
カイは2人に微笑んでから次の話に入った。
「2人が連れて行かれた後、残った4人で発信機を使って小型宇宙船であとを追う。もし、2人が捕まった後に小型宇宙船を壊されたら、待機している大型宇宙船に載せている小型宇宙船に来てもらう」
その後もカイの話は続いた。任務部隊の者たちは様々な表情を出しながら真剣に話を聞いた。それぞれの役目も事細かく話し合われた。
任務はは2日後に決行されることになった。




