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第一部 第六章 ④

 カイとアランとサラとオリバーはエジプトに向かって出立した。


「エジプトまでどれくらいかかるの?」


 サラが操縦しているアランに聞いた。副操縦をしているオリバーがモニターを見ながら答えた。


「約1万㎞の距離だから10時間弱ってところかな」


「そんなにかかるのね。地球って広いわ。着くのが夜中じゃない?」


 サラが言うとカイが答えた。


「夜中ぐらいになるだろう。暗い方が見つかりにくいから丁度いいんじゃないか」


「まだあるかしらね…」


 サラがボソリと言った。


「あれから1ヶ月近く経つ。あってもかなり腐敗してるはずだ」


 アランが操縦しながら言った。


「ピラミッドの地下に置きっぱなしにはしないわよね、あそこは基地のようだし。そうなったら探すの大変よね」


 サラは心配そうな顔をした。


「……ピラミッド周辺になければ探しようがないから即退去だ。見つかればこっちがやられる」


 アランがそう言うと、カイは不本意だが同意するしかなかった。


 計画はピラミッドに着くとカイとサラが宇宙船を降りてピラミッド内の様子を伺い、侵入できそうなら侵入する。捕虜を監禁するための施設だったようなので、捕虜がいなければ誰もいない可能性が高いと予測したのだ。

 アランとオリバーはピラミッド周辺をなるべく低空で飛行してジョージの遺体が放置されていないか捜索する。


 エジプト上空に着いた。

 カイは遺体を収納するためのターポリン生地の袋とロープを腰袋に入れレーザーガンと通信機を手にして、暗視スコープを装着した。サラもレーザーガン2挺をと通信機を準備し、暗視スコープを装着した。

 小型宇宙船はピラミッドの上空を何度も旋回して誰かいないか、戦車などないかを確認して、エレベーターがあった入り口の反対側に着陸した。

 カイとサラは周りに注意を払いながら小型宇宙船から降りて、ピラミッドに近づいた。そしてピラミッドの石段を数段登り、ゆっくりと石に沿って歩き、エレベーターがある入り口に向かった。

 小型宇宙船はそのまま離陸して周辺の捜索を始めた。

 入り口がある側面の手前で慎重に周りの様子を伺い、誰もいないことを確認して入り口の上までたどり着いた。

 エレベーターは壊れたままだった。


「カイ、どうする?エレベーターのボタンがないと降りれないわよ」


 カイはエレベーターまで降りてエレベーターの周りを見た。


「この隙間からなら何とか下へ降りれそうだ。ロープで降りるからここで見張りを頼む」


 カイはそう言うとロープを取り出して降りる隙間の反対側のエレベーターの床の角2ヶ所にロープを巻きつけて縛り、自分の身体にも巻きつけた。


「行ってくる」


 カイはそう言うと床と壁の隙間からゆっくりと降りて行った。下まで着くとカイは身体に巻きつけたロープを外した。


 中は真っ暗だった。どうやらカイたちが争った状態のままのようだ。ヒューマノイドの兵士がそこら辺中に倒れている。

 これならジョージもそのままかもしれないとカイは思ったが、ジョージが負傷した場所にはいなかった。ホールだけでなく奥の個室部屋や大部屋の方も探したがジョージの遺体は見つからなかった。

 カイは諦めて上に上がろうとエレベーターのボタンを押してみたが全く反応がなかった。

 カイは再びロープを使って上へ昇っていった。足を壁とエレベーターの動力柱に突っ張りながらロープを握り少しずつ昇った。かなりの体力が必要だった。

 エレベーターの床まで来るとカイは何とか床に手をかけた。サラが気づいて手を引っ張ってくれたので上がることができた。

 カイは息を切らし仰向けに寝そべった。


「ジョージは?エレベーターは動かなかったの?だから運べなかったの?」


 サラは捲し立てるように質問した。カイは荒い息遣いをしながら答えた。


「ハァ、ハァ…ジョージは…いなかった…ハア、ハァ」


 サラはもっと詳しく聞きたかったが、カイが落ち着くまで待った。

 カイは落ち着くと地下の様子を話した。


「兵士はそのままなのにどうしてジョージの遺体だけがないの⁈」


「僕にもわからない」


 カイはそう言うとアランに連絡を取った。すぐに小型宇宙船が来てカイとサラは乗り込んだ。


 カイはジョージの遺体がピラミッドの地下になかったことを話した。

 アランたちもピラミッド周辺を隈なく探したが見える範囲にはなかったと言った。


「とりあえず任務は終了ということで月に戻る」


 カイが言った。


「了解」


 アランは答えると小型宇宙船を離陸させた。


「どうやらピラミッドの基地はもう使っていないようだ。動力源が作動してなかったし、ヒューマノイドの兵士も倒れたまま放置されていた」


 カイが言うとオリバーが不思議そうに言った。


「どうしてジョージの遺体だけが消えていたんだろう?」


「そうよ、それ!」


 サラがすかさず言った。


「まさか、まだ生きていたんじゃ……」


 オリバーが言うとカイとサラが同時に言った。


「それはあり得ない」


 カイとサラは顔を見合わせた。


「たとえ息があったとしてもあの怪我では動けないわ。大砲にやられたのよ。身につけていた鎧もボロボロだった」


 サラが苦々しく言った。


「僕は息を引き取る時にジョージの側にいた」


 カイも辛そうに言った。


「ごめん、余計なこと言ったな」


 オリバーが謝った。


「とにかく今回の任務2つとも完遂できた良かったよ。ジョージの遺体はなかったがそれは仕方ないとして」


 アランが言った。


「そうね、カナダに向かった者も生きてることもわかってよかったわ。あとは全員が無事であることを祈るだけね」


 サラが言うとオリバーが畳み掛けるように言った。


「おいおい、祈るだけではだめだろう。何とか接触して助け出さないといけなのにもう終わりみたいな言い方して」


「わかってるわよ。とりあえず今はって話よ。助けるにしてもまた綿密に計画を立てないと、でしょ、カイ」


 サラはカイを見て言った。


「何、サラ?それは僕にまた任務背負わせるつもりか?」


 カイは冗談混じりで言った。


「当然でしょ」


 サラは澄ました声で言い返した。

 カイは何も言わず微笑んだ。



 4人は月に戻るとすぐに地球帰還対策本部に直行した。

 本部長は先に帰ったフラマたちから報告を受け、映像も確認していた。

 カイたちはジョージの遺体のことをピラミッドの地下のことを含めて報告した。


「ご苦労だった。毎度任務を成功させてくれる君たちには頭が下がるよ。本当にありがとう。映像も確認した。全員ではないのが残念だが、これで生きているという確証がとれた。次の計画が立てられるよ」


 本部長は心から礼を述べた。


「とにかく今日のところは帰ってゆっくりしたまえ。次の計画は要人たちと話し合ってからまた君たち集まってもらうよ」


 本部長が言うとカイとアランとオリバーは頭を下げて、退室した。

 サラが退室しようとしたとき、本部長が呼び止めた。


「サラ、君のお兄さんが映像に映っていたよ。見るかね」


 サラは驚いたあと、顔を綻ばせた。


「はい、見たいです」


 本部長は頷くと壁に掛けているモニターに映像を映した。

 何十人かで畑仕事をしている向こうで小屋を建てている人が映っていた。


「兄さん!」


 サラは震える唇を両手で覆い、涙を流した。


「カメラのモニターでは小さくてわからなかったのだが、大型モニターに映して調べたら君のお兄さんということがわかったんだよ」


 本部長はサラの肩をポンポンと叩いて言った。


「ありがとうございます。これで姪にもパパはお仕事だよ、すぐ会えるよってはっきり言えます」


 サラは涙を拭って本部長にお辞儀をして退室した。サラは軽快な足取りで父母と姪の待つハウスに急いで帰った。


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