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第一部 第六章 ③

 深夜、カイたちの小型宇宙船は山間を飛び立った。

 小型宇宙船はドームまで飛び、カイとフラマとユートがドームの屋根の周りの通路のようなところに降りた。

 小型宇宙船は再び山間の隠れ場所に向かって飛んで行った。


 3人は足元だけを照らすほのかな灯りの懐中電灯をつけて通路のようなところを一通り歩いて確認をした。フラマはカメラを持ってきていて一応撮影もした。

 3人は折りたたみ式の屋根の近くまで来た。


「これは…高さがあるな」


 カイが言った。


「屋根が開いてみないとわからないけど、登れるかな」


 フラマが心配そうに言った。


「開くのを待つしかないな」


 カイは言って座り込んだ。フラマとユートも座り込んで屋根が開くのを待った。


「一昨日と同じ時刻に屋根が開くならあと4時間はありますね」


 ユートが小声で言った。


「そうだな。今日も屋根が開くことを祈らなければならないな」


 カイは少し笑いながら言った。


「本当だ、開かないという選択が僕にはなかった…」


 ユートは落ち込んだように言った。


「開かなかったらどうする、カイ?」


 フラマが聞いた。


「明日までここで待機かな?」


 フラマもユートも目を見開いてカイを見た。


「仕方ないだろう、日中に小型宇宙船呼べないし。深夜まで待つなら明日屋根が開くのを待つのも同じだろ?」


 フラマもユートもカイの言う通りだと認め、今日屋根が開くことを心底祈った。

 3人はたわいもない話をしながら時間を潰した。

 

 フラマとユートは同級生でカレッジに通っている。

 ルクススペスではカレッジは一つでその中で経済、法学、工学、文学、理学、農学、医学と6つの学部に分かれている。そして学部の中でさらに専門分野に分かれて実践を主体に学んでいる。基礎学力は12歳までに終えさらに3年自分の得意分野を見つけるためのスクールに通い、カレッジへと進むのがルクススペスでの通常だった。ただし、基礎学力の間に得意分野が見つかった者はそのままカレッジに進むことができる。

 カイもその一人だった。カイは基礎学力の課程を経た後、理学を5年学びその後工学を5年学んだ。今は開発者としてルクススペスの通信インフラ専門機関に従事していた。

 フラマとユートは3年のスクールを経て工学部に進んだ。後一年で卒業だった。卒業後、フラマはエネルギー開発研究所、ユートは乗り物開発機関に配属が決まっていた。


 3人がカレッジでの話や配属先での話に沸いていると空が白々と明けてきた。

 太陽が昇ってしばらくすると機械が動く音がした。


「開くぞ」


 カイが言うと、屋根がゆっくり動き始めた。高い屋根が折り重なるとカイたちがいるところの屋根が動き始めた。

 カイたちは全ての屋根の収納が終わるのを待って行動した。


 カイは壁に手をつきしゃがんだ。


「フラマ、おまえが1番軽そうだから僕の肩に乗って中の様子を見てくれ」


 カイにそう言われてフラマはユートに手助けをしてもらい、カイの肩に乗ってしゃがんだ。カイはゆっくりと壁に手をついたまま立ち上がった。

 フラマも壁に手をつき、カイが立ち上がるとゆっくり立ち上がった。

 フラマは壁の頂上に手をかけ壁から顔を出して見た。


「この上に登れば本当の通路に降りれそうだよ。手すりが見える」


「僕の手の上に足を置いて登るんだ」


 カイはフラマに言い、フラマは足をカイの手に乗せ壁をよじ登った。

 続いて同じようにユートがカイの肩に乗り、フラマに引っ張ってもらった。

 フラマとユートが上から手を伸ばし、カイは助走をつけて壁をよじ登りながらフラマとユートの手を取って上に登った。

 屋根近くに降りる階段があった。3人は階段を降りて屋根の中に入った。


「とりあえずここなら人目につかないね」


 フラマが言った。


「すごい数の観客席がある。ここはもともとスタジアムだったのかな。こんなところでスポーツしていたんだ。やっぱり地球はすごい」


 ユートが感激していた。


「人が出てきた」


 カイはそう言うと双眼鏡を取り出して覗いた。

 何十人という人が出てきて畑仕事を始めた。小屋を作っている人もいる。


「ここからでは顔をはっきりと認識できないな」


 カイが言うと双眼鏡を覗いていたユートも頷いた。


「僕とフラマは観客席に降りて顔が認識できる位置まで行ってくる。ユートはここで待機して僕たちに近づくものがいないか上から見張っていてくれ。何かあったらレーザーガンで援護を頼む」


「了解です」


 ユートは返事をしながら内心ドキドキしていた。もし何かあったとき、今度はちゃんと引き金が引けるだろうか、二人を援護することができるだろうかと不安な気持ちでいっぱいだった。


 カイとフラマは柵を越え、観客席に降りて行った。二人は下から見えないようにしゃがんで椅子の間を降りた。

 中間ぐらいまで行って双眼鏡を覗いて見ると顔が認識できた。フラマはカメラで撮影した。


 ユートは二人の姿を確認しながら周りを注意深く観察した。屋根の下に無数の窓があるが、部屋のようだった。

 ユートは二人を気にしながら窓がある方へ近づいて行った。端にある窓を覗いて見るとやはり部屋になっていたが、誰かがいる様子はなかった。

 ユートが大きなパネルがあるところの窓に目をやると明かりがついている窓がいくつかあった。

 ユートはカイとフラマを見た。あの部屋から二人が見えるのではないかと胸がドクンと鳴った。ユートは急いでカイのレシーバーに連絡した。


 カイがつけているイヤホン型レシーバーにユートから通信が入った。

 大きなパネルがある周りの窓は部屋になっていて、明かりがついている部屋があるから人がいるかもしれなくて、二人が見える可能性があるとのことだった。

 カイとフラマは急いで上に上がってユートと合流した。


「とりあえず撮影ができたから後でフォトと照らし合わせよう」


 カイがそう言うとユートが慌ててしゃがむように言った。


「兵士が下の出入り口から出てきた」


 ユートが小声で言った。

 カイはしゃがんだまま兵士を探した。兵士はさっきまでカイとフラマがいた場所に行こうとしているらしく降りていった。


「今のうちにもとの場所に移動しよう」


 カイたちは静かに迅速に柵を越え、階段を登り壁の上からしたへ飛び降りもとの場所に戻った。


「ここまで探しに来ないかな」


 フラマは不安そうに言った。


「それはわからない。いつでも対応できるようにレーザーガンを構えておけ」


 カイはそう言ってレーザーガンを手にして壁の上を見た。

 フラマとユートもカイと同じようにレーザーガンを構えて壁の上を見ていた。

 3人は何時間も緊張状態で陽が沈むのを待った。


 太陽が西に傾き、空が赤く染まり始めたとき、ドームの屋根が動き始めた。

 3人はホッと胸を撫で下ろした。

 あとは深夜に小型宇宙船が来るのを待てばいい。

 屋根が全部閉まると3人はその場に座り込んで、持ってきていたスティックタイプの非常食を頬張った。今日初めての食事だ。


「はあ〜、やっと一息つける」


 ユートが食べながら言った。フラマも食べながら頷いた。カイは食べながら笑った。


 深夜になり小型宇宙船が迎えにきた。3人は小型宇宙船に乗り込みさらに安堵した。

 山間の隠れ場所に着陸すると早速カメラの映像に映った人物が、デジタルフォトフレームに載っている人物と該当するか確認した。


「あ、映像のこの人、ほらこの人じゃない?」


 フラマが映像を指差し、デジタルフォトフレームに写し出された写真を見せた。

 カイとユートも確認すると間違いなかった。

 映像に映っている人物全てがデジタルフォトフレームに写っている人物に間違いなかった。


「よし!」


 カイは思わず声を出した。みんなもお大喜びした。

 カイはサラたちの小型宇宙船とアランたちの小型宇宙船に報告をした。


「第1任務終了だな。そっちの山間にまだ小型宇宙船を駐機できる場所はあるか?」


 アランが聞いた。


「ああ、サラもこっちに来ると言ってたから2機分ぐらいあるよ」


 カイが答えるとアランはまた後でと通信を切った。

 カイとアランの話を聞いていたノアが不思議そうに聞いてきた。


「第1任務とはどういうことですか?」


「ああ、悪い。君たちには話していなかった。みんな聞いてくれ」


 カイはみんなを集めて次の任務の話をした。

 次の任務はジョージの遺体奪還だった。

 この任務に携わるのはカイとアランとサラとオリバーの4人だけで、あとのメンバーは月に戻るということだった。

 第1人任務が1週間以内に終われば残りの3日で次の任務を遂行しても構わないと本部長から許しを得ていた。


「4人だけで行くのですか?僕も一緒に行きます」


 ユートが力強く言った。


「ユートの気持ちは嬉しいが人数が多いとそれだけ目立つし、もう4人で作戦を立てている」


 カイがユートを宥めるように言った。ユートは少し残念そうにしたが明るく言った。


「わかりました。無事に任務遂行出来ることを祈っています」


「ありがとう」


 アランとサラたちの小型宇宙船が着くと、カイとサラとオリバーはアランの操縦する小型宇宙船に乗り込み、他のメンバーは2機の小型宇宙船に乗って月へと戻って行った。


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