表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/26

第一部 第六章 ②

 カイたちの小型宇宙船は夜明け前に上空へ飛んだ。

 電波が流れた西に向かいとりあえず飛行しながら電波を探すが、往復しても拾えなかった場合小型宇宙船が隠れそうな場所を探して着陸し、そこで電波を流れるのを待つことにした。電波が拾えればすぐに受信場所を追って行けるように待機しておくつもりだ。


 国境沿いに西に向かって飛行したが電波を拾うことはできなかった。折り返し東に向かって飛行した。

 国境沿いに飛行していると東から流れてくる電波をキャッチした。電波はすぐに消えたが、受信先は東へ2㎞先だった。

 小型宇宙船が2㎞先に進んだとき、ユートが「あれっ?」と大きな声で言った。


「どうしたユート。何かあったのか?」


 カイが聞くとユートは首を傾げながら答えた。


「今通り過ぎた白い大きなドーム、屋根が閉まったように見えた」


「どういうこと?」


 フラマが聞いた。


「僕が見たとき屋根がほんの少しの隙間が開いているように見えたのに数秒後に見たときには隙間がなかったんだ」


 ユートが言うとカイはドームの上空にもどるようにノアに伝えた。

 ノアは小型宇宙船を旋回させてドーム上空に戻った。

 太陽はほぼ沈んでいた。


「フラマカメラでしっかりドームを撮っておいてくれ。ユート、どうだ?何か変わっていることはないか?」


 カイは探知機を見ながら言った。この辺りは電波の受診圏内、ドームに何かあるに違いないと思った。


「特に変わったことはないです。屋根もきっちりしまってます」


 ユートが双眼鏡を覗きながら言った。


「明日の朝一からドームの上空に待機して観察してみよう」


 カイはそう言って小型宇宙船を山間の隠れそうなところに着陸するようにノアに言った。


 着陸してからもカイは探知機の前から離れなかった。


「きた!」


 カイが言うとフラマたちが集まって来た。

 探知機が電波を拾ったのだ。やはり東から送信されていてドームあたりで受信されている。

 カイは他の小型宇宙船にも報告した。

 明日上空から1日ドームを観察するのでその結果をが出るまで予定通りの飛行を続けて欲しいと伝えた。


「月の者たちがいますかね」


 フラマがカイに尋ねた。


「いたらいいが…地球人があのドームの中で生活しているのかもしれない。小惑星衝突後、あのドームが人類を守っていたのかも」


 カイは探知機を見ながら小惑星衝突後の地球の様子に思いを馳せた。

 地震、津波、噴火、大気汚染、太陽光遮断。生物が生きていける環境ではなくなるはずだ。その中で生き残った人類はどれほどの知恵や才能があったのだろうか。

 その生き残りの子孫である女帝のアマヒは人類生存のために尽くした人物の子孫なんだろうと思った。


「地球人だったらあってみたいです。兵士たちはヒューマノイドだったんでしょう?人間なら話し合いができるかも」


 フラマが希望に満ちた目で言った。


「どうだろうな。地球を統べる女王の言うことは絶対かもしれない」


 カイが言うとフラマは少し暗い顔になった。


「千年も経ったのに地球を見捨てた僕たち月の移住者を許せないんだね、アマヒは」


「アマヒにとってはまだ千年かもしれない。先祖の怒りや苦しみは代々言い継がれてきたのだろう。僕たちが千年経っても先祖から受け継がれてきた地球への想いが色褪せないのと同じだ」


 カイはその想いを踏まえた上でアマヒと直に話をしたいと考えていた。


「じゃあ、明日も早いから休むね。おやすみ、カイ」


 フラマはそう言って座席を倒した。

 カイは探知機を見続けた。東から電波が送られてきているということはそっちにも人類が住んでいるということだ。ドームにいる人が月の者ではなかったら今度はここから東を捜索すべきだと考えた。

 カイは燃料や食料のことを考慮して、10日以内に終わらせなければならないから明日結果が出ればすぐに東に向かって飛行しようと計画を立てた。



 次の日夜明け前、カイたちの小型宇宙船はドーム上空に向けて飛んだ。

 地上からでは肉眼では見えない程度の高度に小型宇宙船をホバリングさせ、人工衛星に映らないようになるだけ雲の下でドームを見張った。


 太陽が昇って明るくなってきた。ドームの白い屋根がキラキラして見えた。

 しばらくするとドームの屋根が開き始めた。


 双眼鏡を覗いていたユートが叫んだ。


「ドームの屋根が開き始めました!」


 フラマはじっと撮影を続けていた。

 カイはフラマが撮っている映像を覗き込んだ。

 白い大きな円形の屋根が折り重なるように開いていった。次に残っていた屋根が滑るようにドームを周り、折り重なった屋根の下に収納された。


「おおー」


 見ていた者は思わず感嘆の声を上げた。


「畑のようなものが見えます……あっ、人だ!兵士もいますが、人が何人も畑に入っていきます!」


 ユートが双眼鏡を覗きながら言った。

 カイとフラマも映像を見て、蟻ぐらいの何かが動いているのがわかった。


「地球人でしょうか?」


フラマが聞いた。カイは双眼鏡を取り出し、覗いた。


「確かに人ではある。地球人かもしれないし、月の者かもしれない。もしかしたらアンドロイドかもしれない」


 カイは少し考えてから小型宇宙船を山間の駐機した場所に戻るようにノアに伝えた。


 山間に戻ったカイたちはドームにいる人が何者かをどうやって確認するか話し合った。


「近くまで小型宇宙船で飛んで行って中に入るのが手っ取り早いけど」


 ユートが言った。


「小型宇宙船で近づくのはすぐ見つかって危険だと思います」


 ノアが言うとマナも頷いた。


「兵士も見えたからそれなりの武器の装備はしてるよね。小型宇宙船に気付いてレーザー砲やミサイルでも撃たれたらそれまでだよ。こっちはレーザーガンしか所持してないんだから」


 フラマが危険なことは断固反対とでも言うように強く言った。

 カイはフラマの撮ったドームの映像をずっと見ていた。


「カイ、何か見つけたのか?」


フラマが言うと、カイは映像をみんなの方へ向けた。


「ここを見てくれ」


 カイはそう言ってドームの円形の屋根の周りを指した。


「映像では小さすぎてわかりづらいが、この屋根の周りは通路っぽく見えないか?」


 みんなが目を凝らしながら映像を見た。


「そう見えないこともないけど、よくわからない」


 マナが言った。


「通路だったらどうするの?」


 フラマが聞いてきた。


「暗いうちにあそこに降りて屋根が開くのを待つ」


 カイが言うとみんなびっくりしたような顔をしてから不安げな顔をした。


「太陽が沈んだらもう一度ドームのところへ行って、もう少し近くで撮影しよう。周りがどうなっているかしっかり見極めてから改めて計画を練ることにする」


 カイがそう言うとみんな頷いた。


 ドームの人が寝静まった時間帯の方が見つからずに撮影できるだろうという話になってに夜中に飛行することになった。

 小型宇宙船はドームの上を何度も旋回して近くから撮影を繰り返してあらゆる角度から撮った。

 撮り終えると山間の隠れ場所に戻り、映像を確認した。


「屋根を収納できる側がかなり広い通路のようなものがあるね」


 フラマが言った。


「そうだな…だが屋根が開いてしまったら中に入れるかどうか…こっちの開いている方に回り込めそうにないしな」


 カイは朝撮影した屋根が開いていく映像と見比べながら言った。


「ここから降りていくにしても目立ちそうだ」


 ユートが言った。

 カイは頷きながら映像を見つめて考え込んでいた。

 しばらくしてカイは思いついた作戦を話し始めた。


 夜中に小型宇宙船でドームの屋根に近づき、屋根が開く側にカイ、フラマ、ユートが降りる。小型宇宙船は山間に戻ってカイが連絡するまで待機。

 屋根が開いたら屋根がある方まで行く。屋根の影で暗いだろうから開いている側より目立たないはずなので屋根側から双眼鏡で確認する。

 今回の任務は月の者の生死確認だけなので、騒ぎにならないように接触は禁止、顔の確認だけ行う。

 確認が取れたら深夜を待って小型宇宙船に来てもらう。


 カイの説明が終わるとフラマが言った。


「僕は顔を見ても知り合いはいないはずなのでわからない。カイは知っている人がいる?」


 カイはニヤリと笑い、手帳サイズのデジダルフォトフレームを取り出した。


「ここに千人の顔写真と個人情報が記録されている。もし月の者に会ってもお互い知らない者同士では疑いから始めなければならないからと言って本部長に借りてきた」


「さすがカイ!」


 みんな拍手をしたり、親指を立ててカイを褒め称えた。


「明日の深夜実行だ。今からしっかり休んでくれ」


 カイが言うとみんな明るい顔で頷いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ