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第一部 第六章 ①

 カイたち15人の捜索隊は小型宇宙船3機に5人ずつ分かれて乗り込み再び地球に向かった。

 カイ率いる小型宇宙船にはノアが操縦士として、副操縦士にマナ、他フラマとユートが乗っていた。カイは主に電波探知機を見る役目だ。

 2機目の小型宇宙船にはオリバーが操縦士として、副操縦士にハオ、電波探知機係がサラ、残りの二人はラージ、ニコルだ。ラージの腕の怪我はまだ完治してはいないが、支障はないからと本人たっての希望だった。

 3機目には操縦士のアラン、副操縦士のシャラ、電波探知機係のドユン、エリオス、ラスムが乗っていた。


 3機はアメリカとの国境沿いからとカナダの北の端とカナダの中央より南よりにそれぞれ分かれて東から西に向かって真っ直ぐに飛び、北に5㎞ずれて折り返しながら電波を探知する作戦だった。

 特に大型宇宙船が放置されている近辺は念入りに調べる予定だ。

 ただ、日中に飛行すると見つかる可能性が高いので太陽が沈んだ直後から明け方探知機をにかけて探索する。


 カイが開発した電波探知機は半径2.5㎞範囲内の電波をキャッチできた。

 3機が1日1往復したとしてカナダ全土を飛び尽くすのに1週間以上はかかる予定だ。

 10日分の非常食と燃料は準備してきていた。燃料は月で取れる鉱石で作られた固形燃料で10㎝角のもので一つあれば千㎞飛行できる優れものだ。


 3機は太陽が沈む直前に大気圏に突入した。


 カナダ上空まで行くと予定通り3機はそれぞれ出発地まで飛んで、西に向かって出来る限り低飛行をした。

 カイが乗っている小型宇宙船は国境近くを飛んだ。

 フラマはIRイルミネーターを使用しカメラで監視し、ユートは赤外線双眼鏡で地上を観察した。


「太陽が沈むと真っ暗だな地球って」


 フラマが言った。


「月だって真っ暗だよ。ルクススペス内がいつも明るいからそう感じるんだろう」


 ユートが双眼鏡を覗きながら言った。


 5時間かけて西の端まで飛んだがなんの収穫もなかった。5㎞北に飛んで東に向かって飛行したが、やはりなんの収穫もなかった。

 カイたちは山の中に隠れるように小型宇宙船を着陸させた。


「また日没から行動する。3時間交代で見張りをしよう。ノア、マナ、フラマ、ユートの順番だ。見張りは電波探知機を確認しながら宇宙船に誰かが近づいたらみんなを起こすように。僕は適当に休みながら見張りをする」


 カイは全員に伝えるとフラマが撮影していたカメラの映像を見てみた。

 映っているのは建物の残骸や荒れ果てた大地、およそ人が住んでいるような場所は見当たらなかった。

 人だけではない。野生動物すら見つけることができなかった。


「カイ、全部見てたら睡眠とる時間がなくなってしまうよ」


 フラマがカイに声をかけてきた。


「僕はずっと見てたけど、生き物の姿は全く見当たらなかったよ」


「そのようだ」


 カイは大きくため息をついた。


「カイ、はいこれ」


 フラマがカイに非常食を差し出した。


「ああ、ありがとう」


 2人は非常食を食べながら話した。


「カイはまだ生きていると思う?」


「…そう望んでいる」


「もし生きていたとして千人だよ。ちゃんと食べさせてもらってるかな?」


 フラマは心配そうに言った。


「3ヶ月分の非常食は大型宇宙船に積んでいたはずだ」


 カイはそう言うとハッとした。3ヶ月だ。もう3ヶ月経っている。


「カナダに向かってからちょうど3ヶ月ぐらいだよね」


 フラマもわかっていた。

 カイは急いで探さなければいけないと思った。


 マナが突然大きな声を上げた。今はマナが見張り時間だ。


「探知機に電波が!」


 全員が探知機近くに集まったが、もう消えていた。


「東から西に流れるように電波を感知した」


 マナが探知機を指差して説明した。


「パルス波か。通信に使われたのだろう。今日もこの辺りを徹底的にに捜索しよう」


 カイはそう言うと他の2機の小型宇宙船に連絡を入れ、自分たちは電波を拾った範囲内で動くからあとを頼むと伝えた。


 カイたちの小型宇宙船は陽が暮れてから近くを旋回しながら捜索したが、電波は拾えなかった。

 フラマとユートもIR イルミネーターカメラと赤外線双眼鏡で隈なく地上を観察したが特に変わったこともなく、人がいる気配もなかった。

 明け方まで捜索して昨日と同じ場所に着陸した。


「通信は日中に行っているんじゃないですか」


 ユートが言った。


「これだけ電波を拾えないということはここに人は住んでいないんじゃないかな」


 フラマがカメラの映像を確認しながら言った。

 カイは顎に手を当ててずっと考え込んでいた。


「危険かもしれないが日中に動いてみようかと思う」


 カイが顎に手を当てたまま眉をひそめて言った。

 みんなは黙って頷いた。



 サラたちが乗っている小型宇宙船はカイたちの小型宇宙船より遥か北を飛んでいた。

 ラージがIR イルミネーターカメラを確認してニコルが赤外線双眼鏡で地上を観察していた。


「ちょっとこの探知機全然反応しないのだけど、壊れてないわよね?叩いてみようかしら」


 サラが探知機を拳で叩こうとした。


「おいおいサラ、叩いたほうが壊れるぞ」


 オリバーがサラの言葉を聞いて止めた。


「冗談よ。カイに怒られちゃうわ。それにしても本当に何も引っかからないわね。ラージとニコルはどう?」


 サラが探知機を見ながら聞いた。


「何も写りませんね。猫一匹いませんよ」


 ラージが答えた。


「とても人が住んでるようには見えません」


 ニコルも答えた。


「この辺りにはいないようね…」


 サラが独り言のように言った。


 結局往復しても何も得られなかった。小型宇宙船は見つからないように森林の中に着陸した。

 着陸してしばらくするとカイから通信が入った。オリバーが対応した。


「カイの探知機に電波を一瞬だけキャッチしたらしい。今いるところを念入りに捜索するからあとは頼むって連絡だった」


 オリバーは全員に聞こえるように話した。


「そうなの?カイがいるあたりは大型宇宙船が放置されているところに近かったわよね?」


 サラは弾んだような声で言った。


「そうだな……アメリカとの国境沿いだから近くを飛んだだろうな」


 オリバーがパスコに描かれた地図を見ながら言った。

 サラが地図を覗きながらため息をついた。


「ここではホロスコープが使えないから不便ね」


「ははは、月まで電波は届かないからな」


 ハオが笑いながら言った。


「次地球に来るまでにカイに開発してもらわないと」


 サラが言ったがラージが首を横に振った。


「地球でそれなりの施設や通信基地を設備しないと無理だよ」


「あら、月から電波を送れるようにすればいいんじゃない?」


 サラが言うとラージがまた否定した。


「月からの距離じゃ難しいよ。地球と月の間に中継基地でも造ればいけるかもだけど」


「じゃ、それ造ってもらいましょ」


 サラは親指を立ててウインクした。ラージは呆れ顔になった。


 陽が沈むとサラたちが乗った小型宇宙船は5㎞北にずれて東から西へ、また5㎞北にずれて西から東に飛んだが結果は同じだった。

 みんな身体の疲れも相まって気落ちしていた。


「こうなったらカイたちに期待するしかないわね」


 サラは希望を持った明るい言い方をした。


「そうだな。俺たちは俺たちの出来ることを続けよう。まだまだ捜索範囲は残っているんだし」


 オリバーが言うとラージも頷いて言った。


「体力温存しなきゃ。さあみんな寝よう、次の飛行のために」


「あら、みんな寝てはダメよ。当番は起きていてね、あ、わたしからだったわ。みんなおやすみ」


 サラはそう言って探知機の前に座った。


 

 アランが操縦する小型宇宙船はカナダの北の端を飛んで往復したが、なんの情報も得られなかった。

 カイから電波を拾ったという連絡を受け、アランたちは少し安堵した。何も情報を得られず月には帰りたくないという気持ちをみんな持っていた。

 陽が沈むと南に5㎞ずれてまた東から西へ、西から東へ飛行して捜索したが、やはり情報を得ることはできなかった。

 みんな気落ちしていた。このまま何も情報を得られなかったら何のために地球まで来たのかという思いだった。

 アランはみんなの気持ちを汲んで言った。


「連日の夜間飛行でみんな疲れていると思うが、あと1週間あればカナダ全土を捜索できると思う。この1週間のうちに何か情報も得られるかもしれない。得られなかったとしてもここにいる者の責任ではないから、気負わずやろう」


「そうですね。まだまだ時間も捜索場所もあるし、カイが電波を拾ったのだから望はある」


 ドユンが自分にも言い聞かせるように言った。

 みんなも気持ちを奮い立たせていた。


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