第8話 盗賊団との魔眼争奪戦➁
福神が最深部を目指さない理由。それは、奴のテンションが苦手だからだった。
「えーっと、さっきここ通ったからバーツっと……」
福神は地図を作り、行き止まりに印をつけながら少しずつダンジョンを攻略していく。
「よし、じゃあ次はこっちに――」
進もうとした瞬間、目の前を巨大な鉄球が横切った。
「……ギャアアアアアァァァァァ!!!」
「ガハハハハ!! 悪ぃ悪ぃ、強襲かけるつもりが外しちまった! ガハハハハ!!」
声のする方を見ると、髭面の大男が爆笑しながら現れた。
「な、何者だ!?」
「俺か?俺はハラン盗賊団のシンプリーだ!!」
「と、盗賊団……!?」
「あっ、やべぇ。自己紹介するなってお嬢に言われてたんだった。また怒られちまうな!ガハハハハ!!」
「何だ?このおっさん……」
テンションのおかしいおっさんが突然命を狙ってきた現実に、福神は困惑する。
「まあいい!喋れなくなるくらいブチのめせば関係ねぇ!!」
「えっ……」
「死ねぇぇぇ!!」
鉄球を振り上げ、襲いかかるシンプリー。
「イヤァァァァ!!!」(涙)
「ガハハハ! オラ待てコラァァ!!」
福神はこれまでの神生で最も全力のダッシュを見せた。
「安心しろ! お前は珍獣だから半殺しぐらいで済ませてやるよ!」
「嘘つけぇぇ!! 『死ね』言ってただろ!!」
『何なんだあのおっさん!! 怖すぎる!! どうしよう、倒す……?』(チラッ)
「ガハハハハハハハ!!!」
鉄球をブンブン振り回しながら、満面の笑みで追ってくる。
『いや無理!! 狂気しか感じねぇ!!』(涙)
福神は逃げることを選んだ――
「逃げてばっかでいいのか?弱虫!!」
「おい……待て」
「あ? なんだよ急に?」
福神は立ち止まり、剣幕を張り上げた。
「ワイは弱虫じゃねぇ!!」
「は?」
「あいつらと違って知識あるし、ワイ神だし!!お前より偉いんだぞ!!けちょんけちょんに出来るんだぞ!!だからテメェに弱虫呼ばわりされる筋合いはねぇぇぇ!!!」
福神は謎の持論を繰り広げると逃げるのをやめ、怒りに燃えて戦闘態勢に入った。
「俺とやるってことか?いいぜ!相手になってやる!!」
シンプリーが鉄球を振り下ろす――。
「【煙幕魔法】!!」
「ぬぅっ!? くっ……!」
辺り一面が煙に包まれる。盗賊スキル【煙幕魔法】。体から煙を噴出し、視界を奪う。
「クソ、目くらましか……。」
何かがシンプリーの近くを横切った。即座に鉄球を叩きつける。
「バレバレなんだよ!!ガハハハ!!」
「キャキャキャキャ!お前、いったい何に向かって攻撃してるんだ?」
鉄球を振り下ろした勢いで霧が衝撃で晴れていく。
「なっ……!?」
「「「「さーて、本物のワイはどれだ?」」」」
視界が戻ると、そこには大量の福神がシンプリーの周りを取り囲んでいた。
「【影分身】!!」
盗賊スキル【影分身】。自分そっくりの分身を出現させる。分身に攻撃能力はない。
「だから何だ!全部潰せば関係ねぇ!!ガハハハ!!」
シンプリーは分身を次々と叩き潰していく。
「ガハハハ……ハァ、ハァ……どうだ、これで終わりか?」
「いや、まだだ!」
シンプリーは、鉄球を振り回し次から次へと分身を破壊していった。
「君の敗因を教えてあげようか」
「オラァァァ!!」
すべての分身を消し飛ばし、勝利を確信したその瞬間。
「ニヒッ……! ぐっ!?」
シンプリーの背後に回った福神が【拘束魔法】で捕らえた。
「それはな。計画性がないことだ。攻撃が単純すぎるし、感情に振り回される馬鹿。ワイを見世物にするにしても、傷物にしたら意味がないんだよ。」
「ガハハハ……!感情で動くのはお互い様だろ!」
「とにかくお前は終わりだ!お疲れ盗賊サァァァァン!!」
福神は縄を掴み、思いっきり振り回した。
「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「おりゃあぁぁぁ!!【ゴッドスウィング】!!」
遠心力でシンプリーを吹き飛ばす。
マサト陣営【福神】VSハラン盗賊団陣営【シンプリー】。
勝者【福神】。
「フッ……神に歯向かうとは大した度胸だ。だが、君の発言は神への冒涜だったな。さて……出口を探そうか。」
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