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へっぽこモンスターな俺たちの異世界攻略法  作者: 小嵐普太
第1章 始まりのチュートリアル編
8/52

第8話 盗賊団との魔眼争奪戦➁

福神が最深部を目指さない理由。それは、奴のテンションが苦手だからだった。


「えーっと、さっきここ通ったからバーツっと……」


福神は地図を作り、行き止まりに印をつけながら少しずつダンジョンを攻略していく。


「よし、じゃあ次はこっちに――」


進もうとした瞬間、目の前を巨大な鉄球が横切った。


「……ギャアアアアアァァァァァ!!!」

「ガハハハハ!! 悪ぃ悪ぃ、強襲かけるつもりが外しちまった! ガハハハハ!!」


声のする方を見ると、髭面の大男が爆笑しながら現れた。


「な、何者だ!?」

「俺か?俺はハラン盗賊団のシンプリーだ!!」

「と、盗賊団……!?」

「あっ、やべぇ。自己紹介するなってお嬢に言われてたんだった。また怒られちまうな!ガハハハハ!!」

「何だ?このおっさん……」


テンションのおかしいおっさんが突然命を狙ってきた現実に、福神は困惑する。


「まあいい!喋れなくなるくらいブチのめせば関係ねぇ!!」

「えっ……」

「死ねぇぇぇ!!」


鉄球を振り上げ、襲いかかるシンプリー。


「イヤァァァァ!!!」(涙)

「ガハハハ! オラ待てコラァァ!!」


福神はこれまでの神生(じんせい)で最も全力のダッシュを見せた。


「安心しろ! お前は珍獣だから半殺しぐらいで済ませてやるよ!」

「嘘つけぇぇ!! 『死ね』言ってただろ!!」

『何なんだあのおっさん!! 怖すぎる!! どうしよう、倒す……?』(チラッ)

「ガハハハハハハハ!!!」


鉄球をブンブン振り回しながら、満面の笑みで追ってくる。


『いや無理!! 狂気しか感じねぇ!!』(涙)


福神は逃げることを選んだ――


「逃げてばっかでいいのか?()()!!」

「おい……待て」

「あ? なんだよ急に?」


福神は立ち止まり、剣幕を張り上げた。


「ワイは弱虫じゃねぇ!!」

「は?」

「あいつらと違って知識あるし、ワイ神だし!!お前より偉いんだぞ!!けちょんけちょんに出来るんだぞ!!だからテメェに弱虫呼ばわりされる筋合いはねぇぇぇ!!!」


福神は謎の持論を繰り広げると逃げるのをやめ、怒りに燃えて戦闘態勢に入った。


「俺とやるってことか?いいぜ!相手になってやる!!」


シンプリーが鉄球を振り下ろす――。


「【煙幕魔法スモーク】!!」

「ぬぅっ!? くっ……!」


辺り一面が煙に包まれる。盗賊スキル【煙幕魔法(スモーク)】。体から煙を噴出し、視界を奪う。


「クソ、目くらましか……。」


何かがシンプリーの近くを横切った。即座に鉄球を叩きつける。


「バレバレなんだよ!!ガハハハ!!」

「キャキャキャキャ!お前、いったい何に向かって攻撃してるんだ?」


鉄球を振り下ろした勢いで霧が衝撃で晴れていく。


「なっ……!?」

「「「「さーて、本物のワイはどれだ?」」」」


視界が戻ると、そこには大量の福神がシンプリーの周りを取り囲んでいた。


「【影分身クローン】!!」


盗賊スキル【影分身】。自分そっくりの分身を出現させる。分身に攻撃能力はない。


「だから何だ!全部潰せば関係ねぇ!!ガハハハ!!」


シンプリーは分身を次々と叩き潰していく。


「ガハハハ……ハァ、ハァ……どうだ、これで終わりか?」

「いや、まだだ!」


シンプリーは、鉄球を振り回し次から次へと分身を破壊していった。


「君の敗因を教えてあげようか」

「オラァァァ!!」


すべての分身を消し飛ばし、勝利を確信したその瞬間。


「ニヒッ……! ぐっ!?」


シンプリーの背後に回った福神が【拘束魔法バインド】で捕らえた。


「それはな。計画性がないことだ。攻撃が単純すぎるし、感情に振り回される馬鹿。ワイを見世物にするにしても、傷物にしたら意味がないんだよ。」

「ガハハハ……!感情で動くのはお互い様だろ!」

「とにかくお前は終わりだ!お疲れ盗賊サァァァァン!!」


福神は縄を掴み、思いっきり振り回した。


「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「おりゃあぁぁぁ!!【ゴッドスウィング】!!」


遠心力でシンプリーを吹き飛ばす。


マサト陣営【福神】VSハラン盗賊団陣営【シンプリー】。

勝者【福神】。


「フッ……神に歯向かうとは大した度胸だ。だが、君の発言は神への冒涜だったな。さて……出口を探そうか。」

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