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へっぽこモンスターな俺たちの異世界攻略法  作者: 小嵐普太
第6章 可能性厨とホーンテッドハウス編
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第60話 空腹の秘密

「う〜……。やめだ!デュラハンについては後で考えよ。兎にも角にも今はチャムだな。」


先に倒しても外へ出られる保証がないため、マサトはデュラハンについての思考をいったん打ち切り、元に戻す方法を探るべくチャム暴走の原因を考え始めた。


『チャムが暴走したトリガーは何だ?乗っ取られた?いや、アイツの言い方的に暴走するのが分かってた感じだった。じゃあ、意図的に暴走した?それはないか、いくらチャムでも人の命に関わるようなことはしない。ましてや、ツボミも襲う可能性もあるしな。………え、マジで何で暴走した?』


ドロドロに形を崩したチャムホの残骸を見つめながら、マサトは思考を巡らせた。その時、横から緊張感の欠片もない声が割り込んできた。


「そういえばさ!ボクのお寿司ってどこ?誘い出すためとはいえ、お寿司は本当に楽しみにしてたから!」

「うるせぇな!!寿司なんか食ってる場合じゃ――待てよ?」


テンジクの能天気な発言にキレかけたその瞬間、マサトの脳裏に一つの仮説が閃いた。彼は顎に手を当てると、ブツブツと独り言を漏らしながらその場を行き来し始めた。


「アイツ確か……でもそれだけで暴走するか?……いや、福神が言ってたことが本来の性質だったとしたら……。」


気になっていた点の仮説を補強するように、マサトはこれまでの出来事を振り返り、点と点を結び始めた。


「リーダーさん、何かわかったの?」

「寿司だぁぁぁぁぁああああああ!!」

「ヒェッ!!」


突然叫び声を上げたマサトに驚き、ツボミは近くの物陰へ身を潜めた。だがそのことに気づかないほど興奮したマサトの瞳には、確信めいた光が宿っていた。


「ヤマグチ君も食べたくなったの?カリフォルニアロール!」

「俺の前でカリフォルニアロールを寿司扱いするな。そんなことより分かったんだよ!!チャムを元に戻す方法がな!!」


「へぇ~スライム君戻すかぁ!どんな方法か是非聞かせてくれよ!!」


テンジクは面白そうに目を細めると、物語を聞かせてもらう子どものように前のめりになり、マサトへ期待の眼差しを向けた。


「それはな……『寿司を食べさせる』だ!!」


自信満々に宣言するマサトをよそに、テンジクは拍子抜けしたように肩をすくめた。


「だろうね!この流れでそれじゃなかったら逆に変だよ!」

「うるっせぇーな、マスキングテープで口塞ぐぞ。」


茶化すようなテンジクの態度を鋭い視線で黙らせると、マサトは自らの仮説を一つずつ整理するように語り始めた。


「前提として、この世界の一般常識だとスライムは飯を食べる必要がないんだろ?」

「一定以上の魔力は必要らしいけど、そうみたいだね。」


マサトの問いに、テンジクは事もなげに答えた。一般常識の再確認に退屈したのか、ひらひらと手を振って先を促す。その横でツボミは、スライムが食事をしないという事実に驚いたのか、不思議そうに首を傾げていた。


「けど、アイツは事あるごとに『お腹すいた』と口にする。俺は、チャムを例外だからだと思ってた……。でも、それは多分違う。」

「というと?」

宝箱(ミミック)だよ。チャムに無敵の防御を与え、暴走させた張本人。」


マサトは正面を見つめたまま、ミミックに見立てるように近くにあった古い箱を指さした。そして、仮説を補強するための考察を語り始めた。


「チャムが宝箱から出れない理由、アイツはハマったからって言ってたけどミミックがかぶりついて逃げれないようにしてたからだと思う。きっとそっちのほうが効率よく食料にありつけるからだ。…いや、もしかしたらそれが暴走の抑止力になってたのかも。」


チャム自身の意思ではなく、その殻となっていたミミックが空腹を満たすために暴走させたのではないか――。その推測を聞き、テンジクは手を叩いて楽しげに笑った。


「なるほどね……。スライムに寄生するミミックかぁ……。面白いね!」


生命の神秘を解き明かした学者のようなテンジクの称賛は、どこまでも他人事のようだった。


「とにかく、今のチャムの体の主導権は飢餓状態のミミックが握ってるはずだ。だから、何か食べさせることができたらきっともとに戻る……はず。」


マサトは言い切りながらも、わずかに語尾を濁した。それを突くように、テンジクは厭味ったらしく笑い、問いを投げかけた。


「叫んだ割には自信なさそうだね。」

「アイツの言い方的に戻りはするんだろうけど、これで戻るかどうかは正直微妙なんだよなぁ…。一定時間経つまでずっと暴走の可能性もあるし、まぁやってみるに越したことはないんだろうけどさ。」


テンジクの問いに、マサトは頭を掻きながら答えた。根拠はあるが、確証はない。そんな綱渡りのような状況に、マサトは不安を拭えずにいた。そのとき、ずっと沈黙していたツボミがマサトの袖を引き、腑に落ちない様子で問いかけた。


「ねぇリーダーさん、聞きたいことがあるの。」

「どうした?」

「あのね、ずっと気になってたんだけど………お寿司ってどこ?」

「………え。」


ツボミの言葉に思考が止まったマサトは、しばらく辺りを見渡した。やがて頭を抱え、思いきりのけぞりながら大声で叫びだした。


「やらかしたぁぁぁぁああああ!!!」

「ヒェッ!!」


致命的すぎるミスが判明し、絶望して叫ぶマサト。その姿には、数分前まで『伝説的快挙』を豪語していた男の面影はどこにもなかった。あまりにも間抜けな展開に、テンジクは毒気を抜かれたように目を丸くした。


「そういえば逃げた時に放り投げてた気がする……。」

「どういうことだい、ヤマグチ君!!ボクのお寿司を落としたっていうのかい!?」

「元々テメーに食わせるつもりねーよ!!」


この期に及んで寿司を食べられると思っているテンジクに、マサトはツッコミを入れた。そしてすぐさまツボミの方へ向き直り、手を合わせて頼み事をした。


「ツボミ、チャムが暴走した場所らへんに飛ばせるか?」

「う、うん。」

「俺がすぐに取ってくるから、火の玉(ファイヤーボール)で合図したら回収してくれ!!」

「分かった。【影移動(シャドウワープ)】」

「待って、心の準――」


焦るマサトに気を遣い、ツボミは頼み事に即答した。そして有無を言わさず、マサトを影の中へ落とした。

鬱アニメ最高!!

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