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第52話 雅人の秘密

「……眩しい…。どこですかここ?……書庫?」

「よくぞ来た勇敢なる強き冒険者よ。」


強い光に包まれて眩んだ視界をゆっくりと開くと、そこは壁一面が本で埋め尽くされた書庫だった。その中央には、白と黒の派手なゴスロリ服を身にまとった、黒髪の高校生くらいの少女が立っていた。


「私様はこの書庫に――

「うぁぁぁあーーーっ!!がぁぁっ!!ああっ…目がっ…!目がぁぁぁぁあっ!!」

「うるっせえ!!!本読んでるだろが!!こういうときぐらい黙れないのか!!あとお前は本を食おうとするな」

「だってお腹すいたんだもん。」


少女がミステリアスな雰囲気で口を開こうとした瞬間、いつものうるさい連中がそれぞれ好き勝手に騒ぎ始め、少女の言葉はあっさりかき消された。彼女は肩を落とし、しょんぼりとうなだれてしまった。


「やっぱり私の話なんて聞く価値ないよね……ハハッ…ハァ〜…。」

「すいません。すぐに黙らせます。」


ユーリンは、失明して悶え苦しむ某人物の真似をして騒いでいたリーダーを容赦なく蹴り飛ばした。そのまま軽くボコボコにして見せしめにすると、ほかのメンバーは一瞬で静まり返った。


「で、何なんだここは?説明しろ……。やっぱ待て。長くなりそうな気がするから俺から自己紹介する!俺の名前はヤマグチマサト。17歳3月10日生まれうお座血液型B好きな食べ物はカステラ!!で、右からユーリン、福神、チャムだ!」

「初めまして。」「うい。」「カステラかぁ〜。」


少女は興味深そうにマサト見た後、中央に鎮座する巨大な椅子に腰掛けカッコつけながら自己紹介を始めた。


「私様の名前は……そうですねぇ〜『管理人』っとでも言っておきましょう。」

「管理人?」


管理人は、大げさに胸に手を当てると誇らしげに頷いた。


「はい!私様の特別な魔法(ユニークスキル)は、『人生の書庫』。この世界に存在するすべての生き物の記憶を閲覧することができる。つまり人の記憶を管理しているというわけだ!!」

「そうか…。じゃあまたな。」

「オイ待て!!」


マサトは、誇らしげに語る管理人とは対照的に一切興味を示さず、そばに立つ『EXIT』と書かれた扉へ迷いなく歩き出していた。


「気にならないのかよ!!おい!!誰のどんな記憶でも分かるんだぞ!!」

「うるせぇ、厨二病キャラ2!!そんなプライバシーもクソもない能力気になるわけねーだろ!!てか、そもそもこんな変な場所につれてこられてそんな胡散臭いこと言われても信用するか!!」


嘘である。本当は厨二心を燻られめっちゃ気になっているが、黒歴史を暴露される可能性があるので確実にバレないようにするために一刻もここを離れたいだけである。


「でもさ!でもさ!何にもしないで帰るなんて寂しいじゃん!!自信あるから!!なんでも分かるから私!!」


管理人は、駄々をこねる幼稚園児のように半べそをかきながら、帰ろうとするマサトを必死に引き止めた。


「はっ!そこまで言うなら当ててみろ!俺が引きこもりになった理由をな…。」

「いいだろう。確か山口雅人といったな。」


唐突に冷静さを取り戻した管理人を見て、自分の黒歴史が暴露されることが確定しマサトは絶望した。そして、自分が余計なひと言を口にしてしまったことを、今さらながら深く後悔し始めていた。


「……4月7日酒見野坂高等学校入学式当日。中学校の友達が少ないことを良いことに高校デビューができると勘違いした山口雅人は、一軍に入るために自己紹介で大量の一発ギャグ、モノボケ、モノマネを行い盛大に滑っ――

「分かった!!分かったから!!黒歴史を音読するのをやめろ!!」


マサトは、スラスラと黒歴史を暴露していく管理人を顔真っ赤にして全力で止めようとした。


「正直見てて傑作だったぞあれは。」

「うるっせぇ!!黙りやがれ!!……おい何でオマエラは、離れてくんだ…。」

「い、いや……なんか…普通に痛いやつで無理だわ。」

「シンプルにドン引きするのやめて!一番傷つくから!!」


冷たい目で後ずさる福神たちの姿を見て、マサトは思わず入学式当日の記憶がフラッシュバックした。


「俺だって後悔してるよ!もし戻れるならコークスクリュー・ブロー使って全力で止めて説得するっつーの!脱ぐならパンツまでにしとけって!!」

「そういうとこだぞ。…てか、学校で脱ぐなよ」


管理人は再び椅子に腰を下ろすと、得意げに決めポーズを取り直し、自信たっぷりに自分の能力を誇らしげに見せつけた。


「と、まぁこんな感じにこの書庫では名前さえわかれば誰のどんな情報もわかるそれが私様の能力だ!」

「はッ!!どこで使えるんだよ!!こんな能力!!」

「悪いがめちゃくちゃ実用性あるぞこの能力。」


実用性という言葉に、管理人は満面の笑みを浮かべ、まるでマサトを嘲笑うかのようにじっと見つめた。マサトは黒歴史を暴露された挙げ句、追い打ちをかけるように煽られたことで、思わず壁の方を向いて拗ね始めた。


「2人調べたい記憶がある。」

「さあ! 何でもお聞きください!!もし見つからないのなら、一緒に探して差し上げますよ?気になるあの子、ムカつく相手、尊敬する者、誰であろうと、知りたい相手がいるなら何なりと私様にお申し付けくださいませ!!」

「ッ……………!!」


自信満々にまくし立てる管理人の言葉を聞いているうちに、福神はまるで何かを思い出したかのように、ふいに目を見開いて固まった。


「福神さん、どうかしました?」

「………あ、いや。何でも無い。ちょっと思い出したことがあって……。あ、そうだ。聞きたい記憶があるんだった。」


ユーリンに声をかけられ、一瞬動揺を見せたが、すぐに呼吸を整え、本題へと話を戻した。


「1人目は――『ユーリン』だ。」

お陰様で1周年を迎えました!!

というのを初回投稿日の日にやろうと

思ってたのに普通に日付間違えてました

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