第51話 超お手軽ダンジョン攻略法
「クッソォォォォ!!!完全に忘れてたァァァ!!!」
マサトは、再生したばかりのガタガタの体に鞭を打ち、下僕のようにチャムを持ち上げて運んでいた。
「こんなことなら賭けなんてせず大人しく買ってやるんだった!!」
「まぁミニ大砲2回も使うなんて誰も予想できないですしね…。」
「大砲にしてもチャムホにしても、コイツ関連のアイテム、毎回強敵のギミックぶっ壊すトリガーになってるのやばすぎんだろ……。」
「リーダー、オイラベイクドモチョチョ食べたい。」
「俺の小遣いがァァァァ!!!!」
こうしてマサトたちは、島の復興を手伝いつつ気ままにフェイバリルの観光を満喫した。
数週間後…
「ついに完成だ!!カッケェェェェェ!!!」
マサトは、今後の旅を楽にするために黒龍戦で手に入れた5億ルミナを使い最先端の水陸両用の船を依頼しており、ついに完成したのだ。
「流石マサの世界とこの世界の技術の統合。モーターだのレーダーだのハイパースペースジャンプだの最先端の技術がてんこ盛り、黒龍戦の報酬全部注ぎ込んだだけあるな…。」
「ハイパースペースジャンプって5億程度の船につけていいものなの?」
船はものすごいスピードで目的地を目指して進んでいった。そして、出航からわずか三十分ほどで沈没した。
「オイ!!おかしいだろ!!何で沈んだんだよ!?」
「お前が唯一操縦できるワイがいない間に、氷山に近づいて追突させたからだよ!!!」
「でも、5億もかけてるのにちょっとカスッた程度で沈むのおかしくない!?」
「お前が戦闘用でもないのに無理言ってミサイルなんて取り付けたせいで、氷山にぶつかったときに暴発したからだよ!!」
「……犯人探しはやめよう。この事件は誰も悪くないんだ。」
「10:0でお前の責任だけどな!」
「本当に申し訳ない。」
五億があっけなく海の藻屑となってしまったが、現在進行形で海のど真ん中なので、悲しんでいる暇なんて普通になかった。
「で、マサトさんどう責任取るんですか?チャムさん半分ぐらい沈んでますけど…。」
「84g6eom4a9zswczaieh,……。」
「…うん、急ごう。」
マサトは、沈みかけているチャムの上に飛び乗ると、チャムの宝箱の中からミニ大砲を取り出し弾を投入した後ガムテープでチャムにぐるぐるに巻き付けた。
「じゃ、点火するからちゃんと捕まってろよ。」
「福神さんあれなんでしょう?」
「あれ?」
福神はユーリンの指す方向を見ると巨大な影がウネウネと近づいて来ていた。
「シ、シーサーペントだ!!マサ急げ!!確実に食われるぞ!!」
「え、あ!!うん!!」
マサトは慌てて点火したが、発射の寸前シーサーペントが捕食しようと突撃をした。その影響で、大きく方角が逸れて空を飛んでしまった。
南西遥上空――
「「「アバッアバババッババババババババッバババッババッバッババババ!!!」」」
マサトはズレた方角を修正しようと輪廻に手を伸ばしたが、空気抵抗に阻まれ、どうすることもできなかった。
しばらく空を舞ったのち、ある森に勢いよく不時着したが、マサトをとっさにクッション代わりにしたおかげで、大した怪我もなく無事に生還することができた。
「お前ら…一応俺このパーティーのまとめ役だぞ……。尊敬とか忠誠とかはないのかよ……?」
「あるわけないだろ。何を今更。」
「まぁ私達の関係って絶対そういうのじゃありませんしね。」
自分の扱いに文句を言うマサトを見て、ユーリンはふっと微笑んだ。その笑みは、少し照れくさそうでありながらも、どこか嬉しそうだった。
「で、チャムは?」
「そのダンジョンへ突っ込んでったぞ。」
「えぇ…マジかよ。しばらく戦闘はないって思ったのに…。」
「でも、見てください。」
ユーリンが指差した先には、ぽっかりと穴の空いたダンジョンがあった。
「チャムさんが落ちた衝撃でダンジョンに穴が相手最深部まで繋がってそうですよ。」
「……ダンジョンってそう簡単に壊れるものなの?」
「いや…。ダンジョンってそもそも結界の一種だから媒体になってる核を破壊しない限り基本壊すことができない…。超一流の魔法使いとかの攻撃とかは例外だけど…。それこそ400年前の勇者パーティーの魔法使いとかな…。」
「………あいつどんだけ硬いんだよ。」
硬さの限界が見えず、改めてチャムの異常さを再認識したマサトたちは、ギミックを無視して開いた穴の奥へと進んでいった。やがて最深部に辿り着くと、そこは広々とした部屋になっており、階段があり、祭壇のような構造物がそびえていた。落下していたチャムは勢いを失い、地面に深々とめり込んで静かに佇んでいた。
「お、セーフ。ちょうど最深部で落下運動止まってる。」
「もしダンジョンにぶつかってなかったら発掘作業が始まってたって思うとマジ運良かったな…。いやそもそも誰かさんが船ぶっ壊さなかったらこんな面倒なことにならなかったんだけどな!!方角結構ズレてるし!!!」
「本当に申し訳ない。」
めり込んでいるチャムを、チャムホを使って大きなカブの容量いっぱいで引き抜いた。チャムは呑気にあくびをしながらお腹を鳴らしており、怪我はおろか、傷ひとつついていなかった。
「さて……。ボスもいないことだし、お宝だけありがたあああぁぁぁく頂戴していきましょう!!」
「ウワ最低。」
「見損なったぞリーダー!!」
「うるせぇ!!もとはといえばお前がぶっ壊したんだろ!!」
マサトはお宝への期待に胸を膨らませながら階段を登ると、そこには一冊の本が石板に埋め込まれていた。
「え、これだけ?ここに来るまで結構な階層あったから期待してたんだけどなぁ……。あげるよ福神。」
「ったく、お宝は宝石だけじゃないっつーの。それにしても見たこと無い本だな。この世界の本は読み尽くしてるつもりだったけど、まだまだ色々あるんだな。」
福神が何気なく本を開いたその瞬間、ページの中からまばゆい光が溢れ出し、空中に魔法陣が浮かび上がった。マサトたちは反応する間もなく、その光に包まれ、本の中へと吸い込まれていった。
500円何に使おう




