第49話 傲慢な終演のフィナーレ
「グハハハ!!グハハハ!!グハハハハハハハハ!!!」
変形したマサトの体は異形へと変わり果てていた。ケモミミはねじれた角へと変わり、顔には黒い波線状の痣が浮かび上がる。背中からは漆黒の翼と尻尾が生え、手足には鋭い爪が突き出ていた。
「何?その姿…黒龍のコスプレ?全然似てませんけど。」
「グハハハ!!コスプレなわけねーガオ!!体の構造ごと変えてるんだガオ!!」
困惑するシャクヤクを前に、マサトは空を舞い上がり、狂ったようにくるくると回転しながら爆笑を響かせた。
「その理解力の低い頭でも、よーーーく分かるように教えてやるガオ!!これはデルフィニウムの能力だガオ!!あの馬鹿は、俺様に負けたあと、どーーーしても生き延びたかったみたいガオ!!だから、俺様の魂に寄生しようとしたんだガオ!!でも瀕死も瀕死、そのまま俺様の魂と混ざり合わさって取り込まれたって訳だガオ!!そしてシェードでの黒龍戦!!俺様は、黒龍の中で爆発して魂が散る瞬間を間近で感じ取ったガオ!!それに反応したデルフィニウムの魂を奪い取るスキルが発動して、黒龍の力を奪い取ったってわけだガオ!!」
まるで自分が世界の中心にいるかのようにペラペラと意気揚々にハイテンションで喋るマサトにシャクヤクは、怒りを募らせていった。
「あのクソが、無能なくせに余計なことしやがって。」
「お話はここまでだガオ!!この最強の俺様の力でボッコボコにしてやるガオ!!!」
翼を羽ばたかせ勢い任せにものすごいスピードで猪突猛進し始めた。
「急に動きが単調になったね。そんなんじゃさっきの二の舞いだよ。【ロックノート】」
シャクヤクはエレキギターを掴み、弦をかき鳴らした。爆発するような轟音が響き渡り、その音から生まれた無数の音符が実体となって宙を舞い、マサトの前に壁のように立ちふさがる。だが、マサトは意に介さず突進した。音符がその体に触れた瞬間、炸裂音とともに爆発し、連鎖するように周囲の音符も次々と爆ぜていった。
「勢いだけじゃ何も変わらn――
「グハハハハハ!!!」
「は!?」
勢い止まらず爆煙の中から現れた無傷のマサトにシャクヤクは、驚き恐怖した。
「お前が『復活してくださ〜い♪』って願っていた黒龍様のボディだガオ!!この程度の攻撃効くわけ無いガオッ!!」
「―――ガッ!!」
一気に間合いに詰めたマサトは、スピードを乗せた拳をシャクヤクの腹にクリーンヒットさせた。重い一撃を食らったシャクヤクは、予想外の出来事に反応できずそのまま吹っ飛び柵へ体を打ちつけられた。
「グハハハハハ!!どうだ!!これが俺様の力だガオ!!今降参するなら許してやっても――
調子に乗って格好をつけていたその瞬間、突如に斬撃が閃き、マサトの左の角が無惨に切り落とされた。
「うちに攻撃できたことが、よっぽど嬉しかったんだろうけど…。勘違いするなよ、ヤマグチマサト。その形態は所詮、一時的な強化だ。欠損すれば黒龍化は解除されるんだろ?角がただの耳に戻ってるのが証拠だ。教えてやる。うちの特別な魔法の本質は、感情が高ぶれば高ぶるほど能力が強化されること。【感情の《ジャンブル》 管弦楽団】。ここからが本番だ。覚悟しろよ?」
シャクヤクは指揮棒を抜き放つと、それを剣のように伸ばした。憤怒に燃える瞳で、真正面からマサトを睨みつける。
「歌が終わる前にお前を殺してやる。」
「やれるものならやってみろよ!!情緒不安定ぶりっ子野郎!!俺は男女平等主義者だからな!!女だろうと悪人は、容赦なくぶっ殺してやる!!」
超スピードで再びシャクヤクに接近しようとするマサト。しかし、威力を増した音符と指揮棒の斬撃が次々と飛び、徐々に行動を制限されていった
『……やばい。体が削られてきたせいで傲慢の影響で出たアドレナリンが減ってきた…。体中が痛い。でも、お陰で冷静にはなってきた考えろ。この能力を最大限活かして勝つ方法、勝つ方法……。』
「相手するのも疲れてきた。これ以上やっても意味がない。次で終わらせる。」
シャクヤクが指を鳴らすと、背後から大量の楽器が溢れ出した。クラシック、ロック、ヒップホップ……ジャンルの壁を超えた一流の音楽が混ざり合い、耳を刺すような不協和音を奏で始める。
「……ああああああ、もうっ!うるせぇえええ!!アイドルの喘ぎ歌だのクラシックだので、頭おかしくなりそうなんだよ!!てかよく考えたらここに来てからいいことなしじゃねーか!!もういい、やめだ!!勝つ方法?島の人を助けるため?周りへの被害?関係ねぇ!!なんのひねりもないゴリ押しで終わらせてやるよ!!!」
爆音の不協和音で頭がやられたマサトは、決着をつけるべく、勢いよく上空へと飛び上がった。
「【魔力増加魔法】×【火の玉】」
魔力増加魔法と火の玉を同時に発動させ、膨大な魔力を一気に炎の玉へと変換。その炎を拳に固定し、まさに爆発するほどの威力を宿らせた。
「アチチチチチチチ!!!」
「いい加減諦めろ!!【怒りの交響曲】」
音楽のスピードと音量が徐々に増し、ついには周囲一帯を破壊するほどの衝撃波を解き放った。あまりの衝撃にほとんどの黒龍化が解除され意識が飛びかけるも気合で正気に戻り、残った黒龍の拳でシャクヤクに殴りかかった。
「【火炎の拳】
「!?【シャープシールド】」
あまりの迫力に危険を察したシャクヤクは、急いでシールドを展開した。しかし、それも無慈悲に破壊され、腹を一撃で殴られる。衝撃は絶大で、シャクヤクは地下深くまでめり込んだ。
「………お、終わった。」
体の構造を無理やり変えた弊害で、全身に筋肉痛が走り、炎で右手は大火傷した。しかし、島中に流れていたクラシックが消えたことに安堵し、マサトは死んだようにぶっ倒れた。
VS七花軍師 憤怒戦
勝者
【マサトパーティー&厨二病兄弟&超人気アイドル&オタク】
あーあ、負けちゃった。ホント最悪。
『』
あ、アンタもいたんだ。
『』
は?なにそれ?
『』
……なるほどね。……アンタと一緒にいないといけないのは不愉快だけど…。いいよ♪協力してあげる♪
思った以上に長くなったなこの章




