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へっぽこモンスターな俺たちの異世界攻略法  作者: 小嵐普太
第4章 シャクヤクと捨て身アイドルのコンサート編
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第44話 蜜吸う小物の共犯者

「で、どうする?流石に一人一人耳栓してくのは時間的には無理だろ。」


福神達は、島中の人々の洗脳を、限られた時間内に解く方法を必死に模索していた。


「大きな音を出して音楽を聞こえないようにするのはどうでしょう?」

「なるほどね。チャムエアホーン缶出せ。」

「うい。」


福神は、チャムからエアホーンを受け取るとボタンを押し爆音を轟かせた。相手は耳をふさぐような反応を見せたが、意識は戻らず、洗脳も完全には解けていないようだった。


福神「効果はありそうだが、耳を塞ぐのと違って曲自体は微妙に聞こえてしまうようだな。流すとしても、かなりの爆音にしなきゃならない。……まあ、鼓膜をぶっ壊すって手もあるけどな」

アイリス「だめに決まってるでしょ。」


二人のやり取りを聞きながらコウは、ふと胸の奥に引っかかる疑問を覚えた。


コウ「あの一つ良いですか?気になったことがあるんですけど。」

福神「何だ?」

「外にいる人達は、おそらくヤマグチさんを探して徘徊してるんですよ。でも、この会場にいる人達って何もしてこないんですよ。一斉に同じ命令をしてるとしたらそれっておかしくないですか?」

「確かに……。」


福神はコウの疑問を耳にし、外とライブ会場との違いについて思考を巡らせた。


「待てよ?おい、ド変態女お前の特別な魔法(ユニークスキル)って何だ?」

「うちのスキル?【笑門福来(スマイルアップ)】って言ってうちが、幸福感を感じた時にステータスが上昇する能力なんだ。つまり、この能力さえあれば、半永久的にケツバットが……♡♡ はぁ…♡♡ はぁ…♡♡」

「それだ!!」


福神はアイリスを指差し、ひらりとステージへと飛び乗ると説明を始めた。


「歌っていうのは、魂を通わせるための素晴らしい手段のひとつだ。楽しい曲を聴けば心は弾み、悲しい曲を聴けば心は静まる。そして、特別な魔法ユニークスキルは魂に刻まれている。つまり、笑門福来スマイルアップが歌を通じて周囲に影響を与えるのは、何も不思議なことじゃないってことだ。要するに、こいつは無自覚のまま、ここにいる全員のステータスを上げて洗脳への耐性をつけてたってことになる!」

「……つまりどういうこと?」

「こいつの歌を街中に流し続ければ洗脳は解除されるってわけだ!」

「でもどうやって流すんですか?ここにあるスピーカーじゃとても街中には響きませんよ?」

「それなら大丈夫。一つ心当たりがある。」


アイリスに言われるがままついて行くと、やがて巨大な鉄塔にたどり着いた。


「ここは?」

「電波塔だよ。扱いとしては、東京タワーを思い浮かべてもらえればいい。この街には、あらゆる場所にスピーカーが張り巡らされている。そんで、それらを操作できるのは、この制御センターを備えた電波塔だけなんだ!」


電波塔の制御センターを目指し、登ろうとしたその瞬間、アイリスに向かって鋭いナイフが飛んできた。だが、間一髪、チャムがそれを空中でつかみ取った。


「ナイフ?」

「へぇ。あの方の洗脳を解くものが現れるとは驚きだね。」


島中の人間が洗脳されているはずだという違和感を抱きながらも、声の方へ目を向けると、ヒョロガリの男が不気味な笑みを浮かべ、ゆっくりと近づいてきた。


「マネージャー……。何でこんなところにいるの?ライブ会場はここじゃないよ?もしかして迷子?」

「あ、この状況で理解してないんだ。」


きょとんとした表情で疑問をぶつけるアイリスに、マネージャーは思わず混乱してしまった。


「マネージャーって?」

「ケツバットの時にバット振ってた人たちの仲間だと思えばいいよ。」

「おぉ!!」

「違う。そうだけど違う。」


明らかに馬鹿にされていることに、マネージャーの怒りがあらわにしはじめた。


「たく、状況わかってないだろ?お前らはここで、何もできずに死ぬんだよ!!アイリス、お前はなんであのライブ会場でライブができたか知ってるか?それはな――お前が人気があって、注意を引きやすいからだ!!俺たちは、ずっと前からこの街の発達した技術を狙っていた。だが、そう簡単に盗めるものじゃない。そこで、七花軍師シャクヤク様の能力を拡張する代わりに、ここの警備機能を一時的に停止させてもらったんだ。その準備のために、お前に気をそらしてもらったというわけだ!!だから、お前の歌自体には、価値なんてな――


勝手にべらべらと話し続けるマネージャーに、コウは思い切りのグーパンを叩き込んだ。


「何を言っているのかは聞こえませんが、アイリスちゃんを侮辱したことだけは、僕には誤魔化せませんよ!!」

「……良いね!今のはスッキリした!」

「もうちょっと気持ちよく喋らしても良かったと思いますけどね。」

「それは同感。」


アイリスは、ぶっ飛ばされたマネージャーを前に、仁王立ちした。


「別にうちの歌のことをどうこう言われるのは人の価値観だから別に良いけど、それを悪用されるのは許せないな。」

「……うるせえええ!!クソアマが!!!」


マネージャーが合図を出すと屈強な男たちがゾロゾロと現れ周りを囲い始めた。


「お前らも全員ぶっ潰してやる!!」

素麺って腹にたまる前に飽きるよね

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