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へっぽこモンスターな俺たちの異世界攻略法  作者: 小嵐普太
第4章 シャクヤクと捨て身アイドルのコンサート編
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第43話 シナリオ騙しのソロパート

チャムの特別な魔法(ユニークスキル)が洗脳を無効化する効果があることを判明したため、とりあえず洗脳されている仲間の耳にチャムホをぶち込み状況を説明することにした。


「なるほど。そんなことが‥‥。」

「アイツ嫌い。」


シャクヤクがまたしてもまんまと出し抜かれたことで、二人の表情が曇った。


「ヤマグチさん洗脳を解く方法を分かったんですか?あの‥‥もしよろしければ。洗脳を解く方法を教えてくれませんか?」


洗脳を解く方法に気づいたマサトを前に、コウは耳を塞いでいた手を静かに下ろし、ためらいもなくその場に土下座した。


「チャム後何人分出来る?」

「あと一人かな。これ以上ちぎったら力出なくなっちゃうし、宝箱の中身ぶちまけちゃう。」

「だってさ。どうする?」


マサトが少し意地悪そうに問いかけると、コウは決意を宿した瞳で顔を上げた。


「‥‥そんなの決まってるじゃないですか。」


コウはチャムホを受け取ると、ためらうことなくアイリスの耳にそっとつけた。


「うぅ‥‥。あれ?コー君?おかしいな。さっきまでライブしてた気がするんだけど‥‥。」

「良かったです。これで‥もう‥‥大丈――


安心したのも束の間、コウは限界を迎えそのままぶっ倒れた。


「コー君!?ちょっと、大丈夫!?」

「そいつは、お前を助けるために自分を犠牲にしたんだ。」


薄れゆく意識の中コウは、かすれた声でマサトに語りかけ始めた。


「ヤマグチ‥‥さん‥‥。アイリス‥‥ちゃんを‥‥お願いします‥‥。」

「コウ………。いやチャムホが無くても音聴かなきゃいいだけだから、お前は耳塞いで戦えよ。」


マサトの正論に少し不満げな表情を見せるも、チャムからコルク栓を受け取り、それを耳に押し込むと、無言で立ち上がった。


「えっと……コーくんの友達で合ってるかな?助けてくれて、ありがとう!うちの名前は、【ヒナタ・アイリス】。コー君と同じ転生者で、元気ハツラツ★マゾ系アイドルとして活動してるんだ〜!できることは少ないかもしれないけど‥‥力になれるように頑張るよ!」

「転生者でその設定はどうなんだよ‥‥。」

「それはまぁ‥‥異世界ってことで。」


転生者だと判明して、アイリスのヤバさがさらに浮き彫りになりつつも、ひとまず今の状況をざっくりと説明した。


「──ってわけ何だけど、シャクヤクのところには俺ひとりで行く。洗脳を無効化できることは、まだ知られたくない。それに、ある程度の根性があれば抗えるってこともわかったしな。お前らは、街全体の洗脳を解く方法を考えてくれ。」

「いやマサト殿。そんな回りくどいみみっちい事せず、一斉に奇襲してボコボコのフルボッコにして土に還すのはどうだろうか?」

「気持ちはわかるが一旦落ち着け。あとその釘バットどこから出した?」


マサト二説得され納得はしていない様子ながらも、チャムの中に釘バットをしまった。


「フィットニアの言う通り、その方がシャクヤクを倒せる確率は上がると思う。でも、あくまで倒せる確率だ。洗脳を解除したことがバレてないってことは、シャクヤクが一人一人を直接操作しているわけじゃないってことになる。裏を返せば『殺し合え』って命令ひとつで、街にいる人が動き出し俺たちは何もできずに詰むってわけだ。だから、指名されてる俺が一人で行くのが最適解なはずだ。」


マサトの考察には一理あり、彼の身を案じながらも、全員が納得せざるを得なかった。


「考えは分かったが‥‥。マサお前勝てる算段はあるのか?」

「まぁ‥‥。あるにはあるんだけどぉ‥‥。正直運頼みなんだよなぁ‥‥。」


作戦は立ててはいるものの、結局は運に頼るしかないことにマサトは不安を感じていた。だが福神は、それを当然のことのように受け止めていた。


「じゃあ大丈夫だな。今までの作戦も不確定要素の多い物ばっかだったんだ。今更そこ心配しても意味ないだろ。お前はいつも通り死ぬ気で作戦を実行すれば良いんだよ。」

「‥‥それもそうだな。じゃあ行ってくる!!」


シャクヤクを単独で迎え撃つ覚悟を決めたマサトは、急いで会場を飛び出した。


「さて、兎にも角にもまずは見つけ出さないとな。」


いつものように魔力探知を使ってみたが、感知できたのは洗脳された人々の微弱な魔力だけで、特に強い反応はなかった。


「クソッ‥‥。やっぱそう簡単にはいかないか。何か無いか?規則性…規則性……?」


シャクヤクの居場所を突き止めようと魔力探知に集中していたマサトは、ふとある異変に気づいた。


「ネズミ?」


洗脳された生き物たちのほとんどは、何かを探し回るように不規則な動きをしていた。その中で、ネズミだけが迷いもなく、一直線に同じ場所へと向かっていた。


「………一か八か行ってみるか。」


マサトは、なにか重要な鍵を握っていそうなネズミを追い出した。

2年前塾に行くといって

炎天下の中ひたすら自転車で走り回ってサボったのはいい思い出だ。


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