第34話 中身のないプレゼント
マサト達は、トラブルも解決しシェードを離れチャムがいるフェイバリルへと向かっていた。
「オロロロロロロロロ‥‥俺もう船乗りたくない‥‥オロロロロロロ。」
「は、はは残念だったな。フェイバリルは島国離れるときには、もう一回船に乗らないといけないんだ‥‥オエエエエエェェェェェ!!」
あいも変わらず船酔いに負けて海に向かって嘔吐をしていた。そこへ船酔いから復活したユーリンが、医務室から酔い止めを持ってきた。
「2人とも持ってきましたよ。」
「ま、マジでナイス‥‥。」
酔い止めを飲みしばらくすると2匹とも酔いから解放された。
「ワイ、これがないと生きていけない。命の支えだわ。」
「本当に酔い止め様々だよな。乗り物酔いを消すついでに魔王も倒してくれないかなぁ‥‥。」
「あなた達酔い止めを何だと思ってるんですか?」
他愛もない話をしていると再び船にアナウンスが入った。
『ハッハッハ!!冒険者の諸君聞こえているか!?俺だ!!ヒートだ!!君たちのお陰で船は無事出向することが出来、さらにシェードを危機から救ってみせた!!そのことを祝してパーティーを開こうと思う!!場所は前と同じ会議室だ!!絶対に来てくれよ!!』
「‥‥だってさ。どうする行く?」
「美味い飯が並びそうだから行く。」
嵐のようなアナウンスが流れたあとマサト達は、会議室へと向かった。会議室にはすでに大勢の冒険者が集まっており、ドアを開けるやいなや全員がマサトの方を見た。
「あ、えっと‥‥失礼しました。」
「あれ今回のドラゴンを倒した英雄じゃない!?」
「ホントだ!!良かった生きてて!!」
冒険者たちは、今回のMVPであるマサトと福神を胴上げし始めた。
「おっほ!俺人生で初めてかも胴上げされたの!」
「ふっ苦しゅうない。」
胴上げされたあとも冒険者たちに褒めに褒められまくったマサトは、完全に調子に乗り始めた。
「よくもまあ、あんなに自慢話がスラスラと出てきますね。」
「大丈夫。ワイの予想だとあと少しで痛い目見る。」
福神とユーリンは、しばらく遠くから聖人の様子をうかがった。
「すごい!流石ですね!!」
「ハハっ!それほどでも。そんなことよりみんな僕のサインが欲しくないかい?僕のサインが欲しい人は、列を乱さずしっかりと並ぶんだよ☆」
「「「‥‥‥」」」
「こ゛れ゛だ゛か゛ら゛嫌゛な゛ん゛だ゛人゛前゛に゛出゛る゛の゛は゛よ゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!!」
「勝手に滑ってたお前の自業自得だったじゃねーか!!」
サインを各機満々だったマサトは、誰も自分のサインを欲しがらないことに悲しかったり、恥ずかしかったり、色々な感情でぐちゃぐちゃになりその思いを甲板から海に向かって嘆いていた。
「クソッ!!何でみんなツバサの話ばかり聞きたがるんだ!!所詮運動神経が良くて顔がいいただの高校生じゃないか!!俺と何が違うんだよ!!」
「ツバサが死んだ理由、トラックに引かれそうになった女の子を庇ったからだぞ。」
「クソッ!!俺なんかより全然主人公してるじゃねーか!!」
マサトは、改めてツバサの勇者の器を実感した。
「もういい‥‥なんか虚しくなってきた。部屋に戻る。」
マサトが、甲板から部屋に戻ろうとすると部屋に入口にある違和感を感じた。おそらく閉めたであろうドアが少しだけ空いていたのだ。マサトは、輪廻を構え恐る恐るドアを開けようとドアノブに手を伸ばした瞬間、ドアが勢いよく開き中にいた。それに驚いたマサトは、変な奇声を上げながら中にいた人物に押し倒されてしまった。
「キャアアアアアアア!!!」
「はっは!!隙だらけであるぞ!!マサト殿!!」
「キャアアアア‥‥え?フィットニア!?」
「すいません。勝手に部屋に入ってしまって‥‥。」
部屋の中にいたのは、シェードにいるはずのフィットニアとイバラだった。
「お前らどうやって入ったんだよ?まさかお前の能力は!!」
「いや普通に部屋空いてたよ。」
「あ、普通に不用心なだけだったわ。だとしてもなんでここにいるの?」
「フッフッフッ‥‥」
フィットニアは、含みをもたせながら笑うとある袋をマサトに渡した。
「喜べマサト殿!!我が持ち得るすべての財力を使い果たし、手に入れた禁断の食べ物!!ポテトチップスだ!!」
「助けてくれたお礼です。どうか受け取ってください。」
「おお!!ありがとな!とこで‥‥中身は?」
マサトが、袋の中身を見て逆さにすると食べカスすら出てこなかった。
「すいません。ついついお腹が空いちゃってお姉ちゃんと一緒に全部食べちゃった。」
「実に美味であった。」
「食べたのは別にいいけど!じゃあなぜ袋を見せつけてきた!!」
それから部屋に入り、雑談をしているとパーティーに行っていた福神とユーリンが、帰ってきた。最初は、驚いていたものの可愛らしい気遣いに福神たちも心和んだ。
「ところでお前らこれからどうするんだ?」
「もちろん!!新たなる旅へと出発する!!」
フィットニアは、即答で冒険に出ることを宣言したがイバラは、反対した。
「お姉ちゃんやめようよ。お兄さんたちに迷惑かかっちゃうし。」
「ある程度の自己管理と役目をしっかり果たすならワイは、別にいいぞ。ま、命の保証はないけどな。」
「私は、反対です。まだ15歳にも満たないのに危険なところへ連れて行くなんてどうかしてますよ!!」
ユーリンが、2人のことを心配して反対している中フィットニアから驚きの発言が出た。
「それなら大丈夫。イバラは、この中の誰よりも強いから。」
「「「‥‥え?」」」
皆が寝静まった静かな深夜…
ベッドから追い出されたマサトは、寝付けずユーリンと話していた。
「まさかあそこまで一方的だとわな。そりゃ黒龍の核にされるわけだ。」
「流石に、あれ見せつけられたら何も言えません。」
イバラの真の強さを知ったマサト達は、冒険を反対することが出来なかった。そんな中マサトとは、シェードにいた七花軍師についてユーリンに質問をした。
「そういえばさ。七花軍師ってどんなやつだったの?」
「そうですねぇ‥‥。ふわふわした性格だけど底が見えない感じでした。音楽を媒体?にして攻撃してくるんですよ。ネリネさんが途中から戦ってくれたんですが、逃げられてしまいました。」
「まあ、魔王幹部相手に生きてただけですごいよ。」
「あと、逃げ際に私に向かってこういったんです。『次会う時は、もっと素晴らしいコンサートを披露してあげるから楽しみにしててね〜♪まっそう遠くない話だと思うけど〜♪』って。」
その言葉を聞いた瞬間、マサトにものすごい寒気がはした。
「何それ‥。怖すぎなんだけど‥‥。」
「まっいつ襲われても大丈夫なように今日はしっかりと寝ておきましょう!!おやすみなさい。」
「やめてよ!!そういう事言いの!!」
マサトは、フェイバリルへ行くのが少し怖くなった。
8万文字超えた!!ギリギリセーフ!!




