第32話 世界で一番強いお姉ちゃん
冒険者が核を破壊するために奮闘して時間を稼いでいる中マサト達は、イバラを引き剥がすための作戦会議をしていた。
「で?どうやって引き剥がすんだ?」
「ミニ大砲を使う。そのために今ワイの分身に船まで取りに行かせている。」
「おおwさらにチャムとの賭けのペナルティが増えていくw。てか、ミニ大砲どう使うんだよ?」
どのタイミングでミニ大砲を使うのか全く見当がつかないマサトは、福神質問した。福神は、何でそんな当たり前のことを言うんだ?と言わんばかりに答えた。
「そりゃ、フィットニアを大砲に詰め込んでぶっ放すに決まってるじゃないか。」
「え!?」
「死ぬぞ!!普通の人間は死ぬぞ!!」
周りの奴らが普通じゃなかったせいで倫理観がぶっ飛んでいる福神を止めて別の作戦を考えることにした。
「一個思いついた!さっき急降下してきただろ。そこに放り投げるとか?」
「じゃあお前は、走っているクソ硬いトラックに放り投げられても生きてられるか?」
「すいません。僕が間違っていました‥‥。ていうか、どの方法もフィットニアの体が砕け散る気がするんだけど‥‥。」
「嫌だ!!そんなの嫌だ!!」
様々な案を出していくがことごとく却下されていった。そこで福神は、あることを提案した。
「じゃあさ。お前も大砲の中に入ってクッションになればいいじゃん。」
「‥‥お前正気か?俺に人権はねーのか?」
「ワイらは、モンスターの類だ人権なんてものはもともと無い。」
現代社会で、これを言ったら即SNSで叩かれそうなとんでもない発言だがマサトは妙に納得してしまった。
「もういいよ!ここまで来たならなんでもやってやる!!でもフィットニアの意思が一番重要だ。どうだ?怖いよな?」
「怖いけど‥‥マサトが守ってくれるなら大丈夫!!」
「よし!俺の逃げ場は完全に閉ざされた。」
ちょうどそこへ福神の分身がミニ大砲を持ってやってきた。エアバックになりそうなものを準備したマサトとフィットニアは、決心して大砲の中に乗り込んだ。
「お前ゼッテー外すんじゃないぞ!!今回普通に命かかってるんだからな!!」
今回の作戦は、小さい女の子の命もかかっていることを強調しているマサトに福神は自信満々に答えた。
「ワイは神だぞ。失敗なんかするか。お前は自分のことだけ考えていればいいんだよ。」
福神は、大砲の向きを調節し黒龍に標準を合わせた。
「そうだ。マサ、一つ言いたいことがある。」
「何だよ?そういうことは早めに言っておけよ。」
「どんなに体を鍛えた奴も内側を鍛えることは出来ない。」
「は?それってどういう‥‥」
マサトが、謎の発言に質問しようとした瞬間福神が、大砲のスイッチを押した。2人は、勢いよく黒龍めがけて発射された。2人は、無事黒龍に届きマサトがクッションになったことでフィットニアは、無傷で到達することが出来た。上空には、とても強い風が吹いており立つことすらままならなかった。
「う‥‥待ってて‥‥イバラ‥‥今行くから‥‥。」
フィットニアは、ゆっくり這いつくばいながらイバラの方へ進んでいった。頭部に到着するとそこには、核に取り込まれているイバラの姿がった。
「イバラ!!起きてイバラ!!」
フィットニアは、何度も何度もイバラを呼び続けたが反応することはなかった。
「どうして‥‥。」
姉失格の文字が頭の中をよぎりやっぱり自分には、何も出来ないと思い込んで泣きそうになった。しかし、フィットニアは、自分がイバラを助けるために決心してここまで来たことを思い出し再びイバラを呼び続けた。
「イバラ!!迎えに来たよ!!お姉ちゃんが迎えに来たよ!!‥‥お姉ちゃんはね。イバラより強くないし能力に憧れて真似をしてただけ‥‥。でもどんなに弱くてもお姉ちゃんには、弟を守るって役目があるの!!だから!!戻ってきて!!!」
手を伸ばし続けると、核の中に手が入りイバラの手を掴むことが出来た。フィットニアは、そのままイバラを引っ張り上げ核から取り出すことに成功した。
「イバラ!!」
「‥‥お姉ちゃん?何で泣いてるの?」
「‥‥お姉ちゃんだからだよ!」
イバラを助けた瞬間、強風が吹き2人は真っ逆さまに落ちてしまった。しかし、福神の分身や他の冒険者の助力もあり怪我なく降りることが出来た。
「ふぅ‥‥なんとかうまく言ったな。あとは、お前の出番だぞ。マサ。」
上空…
マサトは、エアバックがちょっとしたパラシュートのようになっていたおかげでフィットニアたちより少し遅く落下していた。
「2人で落ちてたってことは、なんとかうまくいったみたいだな。後は、みんなが黒龍を倒すだけだな‥‥。」
マサトは、とフィットニアに言ったことを思い出した。
「アイツは、自分の力で弟を救った‥‥。なのに任せろって言ったやつが人任せか‥‥。それじゃ、ダメだ。俺が、黒龍を倒さないとカッコつかねーよな!!フィットニア!!」
マサトは、ポケットの中からあるものを取り出した。
「頼んだぜ!!チャム!!【囮魔法】。」
マサトが、チャムホで囮魔法を発動させた瞬間ものすごいスピードで、黒龍がマサトの方へと向かってきた。
「ずっと空にいるクソビビリがよう!!臆病者だって思われたくなかったら俺を倒してみろ!!」
煽りが聞こえたのか、黒龍のスピードはさらに速くなりそのままマサトをパクリと食べてしまった。黒龍は、何もなかったように上空へと戻ろうとした瞬間腹の中で叫ぶ声が聞こえた。
「【魔力増加魔法】!!!!」
声がした瞬間ものすごい爆発音とともに黒龍が悶え苦しみ始め口から、黒い煙とマサトを吐き出しそのまま鉱山に衝突して動かなくなった。吐き出されたマサトは、そのまま地面へと落下した。そこへ、嬉しそうに笑いながら福神がやって来た。
「流石!やってくれると思ったぜ。リーダー。」
「‥‥お前があんな助言しなかったらこんなことやらなかったつーの‥‥。絶対お前とこの魔法作った奴呪ってやる。」
マサトは、力尽き永眠するかのように眠りについた。
「お疲れ様。」
大活躍ミニ大砲さん




