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へっぽこモンスターな俺たちの異世界攻略法  作者: 小嵐普太
第3章 鬼嫁と斬れない絆編
31/52

第31話 大好きなあなたに彼岸花を

輪廻を抜いたネリネは、着実にシャクヤクを追い詰めていった。


「お姉さん女の子なのにめっちゃ強いね〜♪絶対天才って褒められたでしょ〜?アタイもよく言われたんだよね〜♪」

「天才‥‥か‥‥。」


輪廻を抜いた事によりネリネには、ある思い出が蘇った。



アタシの名前は、【彼岸(ヒガン)】。鬼族(オーガ)の当主の娘であり、いずれこの村を統治する者。当主には、代々受け継がれているものがあった。【妖刀 輪廻】。所有者の生気を奪う代わりにどんな物も簡単に無に返す事ができる刀。それに見合う実力をつけるために毎日毎日鍛錬を積んだ。その成果もあり8歳になるときには、稽古をつけていた師匠を打ち負かし天才と称された。誰もアタシに敵わない。そんな井の中の蛙だったアタシを無理やり引っ張り出した奴がいた。


「勝者蘭丸!!」


12歳の時アタシは、初めて負けを経験した。悔しかったし怖かった。人付き合いや勉強が苦手だったアタシにとって剣術だけが自分のアドバンテージだと思っていたからだ。でも、上には上がいてその時は、自分には何も残っていないと痛感した。だけど‥‥。


「いい勝負だったよ!!僕と友だちになろうぜ!!」


アタシには、その男が理解できなかった。なぜ自分より弱いやつと仲良くなりたがるのか、どうしてそんなに幸せそうに笑えるのかが‥‥。


「誰がアンタと友達になんかなるか。」


本当は嬉しかった。修行ばかりの人生でまともに友達と遊んだことがないアタシにとっての初めての友達になれたかもしれない存在だった。でもどう付き合っていいかわからないアタシは、その誘いを断ってしまった。それでもアイツは、そんなアタシを突き放さずずっと話しかけてくれた。


「これは?」

「ひまわりだよ。さーてどんな意味が込められているでしょう?」

「‥‥興味ない。」

「ああああああああ!!!ひまわりがあああぁぁぁ!!!」


それから剣を交えるたびにアイツは、ひまわりを持ってきた。喧嘩をしてしまったときは、15本。ひまわりを受け取らなかった次の日は17本。花には詳しくなかったからどんな意味を込めてたのかはわからなかったけど花を受け取るのが日課になっていた。


彼岸15歳…

毎日死に物狂いで刀を振るっているが彼岸は、蘭丸に一度も勝つことが出来なかった。


「クソッ。どうしてあんなちゃらんぽらんに勝てないの?もしかして私の知らない秘密の修行を?探る価値はありそうね。」


彼岸は、いつものように蘭丸と剣を交えてひまわりを受け取るとこっそり後をつけていった。しばらくつけていくと人目の届かない森の方へと進んでいった。


「やっぱり、アタシに内緒で秘密の修行をしているみたいね。絶対に暴いてやるんだから。」


しばらく暗い森を進むと明るく開けた場所に出た。そこには大量のひまわりが一面に広がっていた。


「ようやく来てくれたか。いや〜長かったな〜。ようこそ彼岸。僕のひまわり畑へ。」


彼岸は、こっそりつけていったつもりだったが蘭丸からしたらバレバレの尾行だった。


「どうせ秘密の修行をしてるとか思ってたんでしょ?残念畑耕して水やりしているだけでした〜。」

「‥‥はっ。がっかりだ。天才と称されたアタシを倒した男は、修行もせずに花を育てているとわ。」


ムキになった彼岸は、蘭丸に冷たい言葉を放った。


「もしかして花キライ?」

「修行もしないでほっつき歩いていることにがっかりしたと言っているんだ。」

「花はキライじゃないんだ。じゃあ良かった。」


蘭丸は、今までの行動が無駄じゃなかったと安心して腕を撫で下ろした。


「僕花好きなんだよね。春になるとくしゃみと鼻水が止まらなくなるのはキライだけど。それに贈り物をするならやっぱり花だろ?‥‥あ、そういえば彼岸に聞きたいことがあるんだった!」


またくだらないことだろうと彼岸は、適当に流そうとした。


「何だ?」

「刀は、好きか?」

「…何言っているんだ。もち――


蘭丸の目を見た彼岸は、言葉が口から出ず答えることが出来なかった。


「いつも稽古をするたびに思ってた。楽しそうじゃないって。僕は刀は好きだよ。自分が強くなっていくのが実感できて。でもさ‥‥刀を振るう彼岸はね、辛そうなんだよ。まるで本物の自分を押し殺しているみたいで。」


彼岸は、言い返せずに俯きしばらく沈黙した。もう自分を騙すことが出来ないと思った彼岸は、思っていることをすべて口にした。


「‥‥だから?今更どうしろと?アタシがここで声を上げたとて現状は何も変わらないだろ?10年間!!刀がアタシを縛り上げた期間だ!!それを今になって捨てろと!?無責任にもほどがあるだろ!!」


今まで苦しかったことに耐えてきた自分を否定したくなくて彼岸は、声を荒げて反論した。


「僕はさ‥‥彼岸のことがずっと好きだったんだ。真面目に努力する姿も、満面の笑みでご飯を食べる姿も全部好きだった。だからね。彼岸には、幸せになってほしい。刀も戦いも知らないどこにでもいそうな女の子になってほしい。」


彼岸は、流れる涙を必死に抑えようと顔を手で隠した。


「‥‥もう修行なんてしたくない‥‥。学校に通って友だちを作って一緒に遊びたい‥‥。でも、アタシが当主の娘である以上それは出来ない!」

「出来る!!!」


決められた宿命に絶望して涙を流す彼岸を蘭丸は抱き寄せた。


「僕が次の当主になって今よりもずっと強くなる。彼岸は、ただの凡人だったって誰もが思うぐらい強くなる。だから‥‥」


蘭丸は、跪くとピンクの胡蝶蘭を取り出した。


「僕のお嫁さんになってください。」


突然の告白に彼岸は、驚くも流れる涙を拭いゆっくり微笑みかけた。


「‥‥はいっ!!お願いします。」

花言葉っていいよね

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