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へっぽこモンスターな俺たちの異世界攻略法  作者: 小嵐普太
第3章 鬼嫁と斬れない絆編
29/52

第29話 今最適な役目

「時間稼ぎ〜?アンタ本気で言ってるの〜?」

「もちろんです。正直私は、攻撃が当たらなくても仲間がどうにかしてくれる。私の役目は、最後のとどめを刺すだけ‥‥恥ずかしながら最近までそう思っていました。でも、現実はそううまくいくものじゃありません。だから、魔王を討伐するため‥‥強くなるという目標を達成するため、自分の立場を理解して最適な行動をしないといけないんです。そして今の私の役目は、あなたを足止めして仲間たちが有利に動けるように時間稼ぎすること!!【雷の檻(サンダーフィールド)】」


ユーリンが魔法を唱えると半径30メートルほどの雷で出来た檻が現れ2人の周りを囲った。自分で逃げ道を塞いだユーリンに女は、嘲笑った。


「馬鹿じゃないの〜w勝てないと分かっているのに自分から逃げ道を塞ぐなんて馬鹿じゃないの〜w」

「確かに私一人じゃ無理ですが、仲間となら必ず勝てます!私の名前は、ユーリン。ヤマグチマサト率いるへっぽこパーティーの魔法使いです。好きな物は‥‥麦酒っとでも言っておきましょうか?」


ユーリンの自己紹介と勝利宣言を聞いた女は、不敵な笑みで微笑んだ。そして女が、指を鳴らすと突如バイオリンが現れた。


「いいでしょ〜う♪そこまで言うのならこちらもそれなりの力で相手にするのが礼儀‥‥♪私は、七花軍師【シャクヤク・イーラ】と申しま〜す♪どうぞお見知りおきを〜♪」


シャクヤクは、まるで今から劇場でコンサートを行うかのようにゆっくりと礼儀正しくお辞儀をして自己紹介をした。



シェード東側…

マサトは、相変わらずネリネのスピードに慣れることが出来ず振り回されながら必死にしがみついていた。するとポケットに入れていたチャムホがブルブルと振動し始めた。


「ネ、ネリネちゃん!!ストップ!!一旦ストップ!!」


ネリネは、マサトの呼びかけにすぐ反応して急停止した。しかし、慣性の法則の影響に耐えきれなかったマサトは、勢いよく壁にめり込んだ。


「だ、大丈夫か?」

「大丈夫ではない‥‥早く抜いてくれ‥‥。」

「分かった。フッ!!」

「痛い痛い痛い痛い痛い!!!」


ネリネは、思いっきりマサトは引っ張ったが、これまた綺麗にハマったことにより抜くことが出来なかった。


「すまない。もうちょっと力を入れたほうがいいか?でもこれ以上力を入れたら胴体が真っ二つになってしまうかもしれない‥‥。仕方ない急いでいるもんな。」

「うん!やめて!流石にそれは怖い‥‥。ポケットの中にちっこいスライム入ってるから代わりに出てくれない?」

「分かった。耳を当てればいいんだよな?」


マサトの代わりにネリネが、チャムホの連絡に出ると泣いているフィットニアの声がした。


「マサト!!福神!!助けて‥‥。」

「その声‥‥フィットニアちゃんか?どうした何があった?」


声が震えているフィットニアにネリネが、状況説明を促す中マサトは、静かにフィットニアの話を聞いた。


「昨日の夜‥‥不思議な音楽が聞こえてきたの‥‥その音に気を取られてたら‥‥知らない洞窟に‥‥イバラを守ろうとしたけど‥‥何も出来なくて‥‥。」

「そんなことねーぞフィットニア。」


弟がピンチなときに逃げることしか出来なかったことを悔やんでいるフィットニアにマサトは、優しく語りかけた。


「確かに、お前にできることには限りがある。直接イバラを助けるのは無理かもしれない。でも、お前が俺達に助けを求めたことで確実になにかが変わった。だから、あとは俺達に任せろ!!」

「‥‥うん!!ふぅ‥‥私は、今採掘地にある洞窟の近くにいるの。その洞窟でユーリンが一人で戦ってる。だから急いできて。」

「了解。」


マサトに大事な情報を伝えると福神にも共有するためフィットニアは、連絡を切った。


「流石だな。とっさにあの言葉をかけるのはアタシには無理だろう‥‥。輪廻に気に入られた理由も何となく分かった気がする。」

「この世には弱者にしか見えない世界だってあるんだぜ!よしネリネちゃん!‥‥まず引っこ抜いて。」

「ああ、もちろんだ。」


先程より強い力で引っ張ったが、体が裂けることはなく無事救出することに成功した。そして、イバラを助けるため再びネリネに乗りスピードに振り回されながら採掘地を目指した。



再びシェード洞窟…

シャクヤクが、バイオリンを演奏することによって現れる音符をユーリンは、雷の壁によって防いでいた。


「そんなに力んでたら音楽を楽しむことが出来ませんよ〜♪もっとリラックスして聴かないと〜♪」

「そんなことしたらあなた一気にテンポを上げるでしょ?今は力むぐらいがちょうどいいんですよ!」


シャクヤクが、気持ちよさそうにバイオリンを弾いている中ずっと攻撃を受け続けていたユーリンには、疲れが見え始めていた。あともうちょっとで決着がつきそうな場面でシャクヤクは、攻撃をやめ曲もゆっくりとした物へと変わった。


「なんのつもりですか?」

「このコンサート(時間稼ぎ)もそろそろお開き、フィナーレへと移行しようと思いましてね〜♪」


するとずっとずっとシャクヤクの後ろに置かれていた巨大な卵が、動き出しピキピキと殻が割れ始めた。


「ユーリンさ〜ん♪あなたは知っていますか〜?最強にして最悪の生物‥‥黒龍について〜♪」


この世には3種類の人間に分けることができる。

数を数えれるやつかそうでない奴だ。

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