第24話 天才と厨二病
「はぁ‥‥カッコつけて『そりゃ参加一択だ!こっちももたもたできねーんだよ。』とか言わなきゃよかった‥‥ほんとまじで言わなきゃよかった‥‥。」
魔力増加魔法を習得したマサトは、石炭の王様を採掘するために再び採鉱地へと戻ろうとしていた。
「これだから計画性がないやつは、心じゃなくて頭を使って行動しろよ。」
「おおw挑発されたら一番衝動的になるやつがよく言うな!8秒ぐらい胸に手当てて過去を振り返れ!」
いつものように喧嘩をしていると小学校6年生ぐらいの眼帯と包帯をした茶髪少女が焦った表情で走り回っていた。少女がマサトたちに気付くと眼帯を抑えるような仕草をしながら話しかけてきた。
「そこの醜き生物と白い獣よ。10の時代を股にかけた初々しい少年この存在を見かけてはおらぬか?それは我より後に下界へと産み落とされた片割れであるのだ。」
「おい。醜き生物ってなんだよ。おい!」
マサトが平然と馬鹿にされたことにツッコミを入れている中福神は、何を言っているのかさっぱり理解することができなかった。
「ちょっと待て。なんて言ったの?」
「『10歳ぐらいの男の子見てないか?私の弟なんだ。』だってさ。こんなのもわかんないのか?お前本読めよ。」
「こんな厨二病語録本に乗ってるわけねーだろ!!」
「争うな平凡な民よ!早急に我の問いに答えるのだ!!」
再び喧嘩を始めようとする福神に少女は急かした。福神は、困惑しつつも何となく意味を理解した。
「悪いが見てない。他を当たってくれ。」
「そうか‥‥お主の貴重な寿命を奪ってしまったことを謝罪する。」
少女は弟を探すためトボトボと行ってしまった。しかしマサトは、急ぐ少女を呼び止めた。
「ちょっと待って!僕も弟さんを探すの手伝ってあげるよ☆」
「ま、真か!?」
「もちろん。困ったときはお互い様さ☆」
「お前サボりたいだけだろ。」
爽やかボイス(笑)で弟捜索の協力を申し出るマサトに福神は反対した。
「何を言っているんだい?福神くん。僕は困っている人を見ると放っておけないんだ☆」アハハハ
「嘘つけ!!お前いつもそんなキラキラしていないだろ!!肉体労働から逃げるな!!逃げるな卑怯者!!!」
福神の講義も虚しく少女の自己紹介によって遮られてしまった。
「我の名は【フィットニア・ロンギング】。いずれこの世界を支配する魔王を駆逐し世界頂点に立つものの姉である。」
「厨二病のくせに弟立てるのかよ。」
「我が名はヤマグチマサト。この世に産み落とされ17年3の月が10回目を回ったときに現世へと君臨した。魚の星々を宿し、流れる血液はBを記している。そして我が愛す物はそう!エビフライだ。」
「便乗しなくていいし何言ってるかわかんねーよ!!」
こうしてマサトと福神は、厨二病真っ盛りの少女フィットニアの弟を探すことになった。
一方その頃…
「ふぅ‥‥石炭の王様どころか石炭すら全然出てきませんねぇ…それにしても、マサトさん達どうしたんでしょう。まぁ多分そろそろ『参加一択だ!』って言ったの後悔してサボり始めたところでしょうし、私もそろそろ休憩しますか。」
採掘地を出て近くの岩に腰を掛け麦酒を飲もうと水筒に手を伸ばした時、近くですすり泣く声が聞こえた。ユーリンは、気になり声がする方へと向かった。そこには10歳ぐらいの黒髪の少年がおり、地面にしゃがみ込んで泣いていた。
「大丈夫ですか?どこか痛いところでもあります?ゆっくりでいいからお姉さんに話してみください。」
少年は右目に眼帯左手に包帯を巻いていた。少年はコカトリスのユーリンに少し驚くもゆっくりと自分の現状を話し始めた。
「ぼ、僕お姉ちゃんとはぐれちゃったんだ。」
「なるほど迷子ですね。だったらお姉さんがあなたのお姉ちゃんを一緒に探してあげましょう!」
「本当?」
「もちろん!このお姉さんに任せてください!」
ユーリンはまるで自分が頼りになるお姉さんになった気分になった。
「そういえば名前を名乗っていませんでしたね。私はユーリン。コカトリスです。」
「僕は【イバラ・ロンギング】。多分‥‥人間。」
イバラは少し引きつった顔で自己紹介をした。
「イバラさんですね。そういえばイバラさんのお姉ちゃんてどんなお方なんですか?」
「うーーんと‥‥優しくてー、かっこよくてー、あと僕みたいに眼帯と包帯巻いてる。」
「あーあ、なんかすぐ見つかりそうですね。」
ユーリンは、イバラの姉を探すために街へと向かった。
再び場面は切り替わり情報収集をするためにギルドへと向かうマサト達‥‥
「マサト殿!お願いだ!!その背負っている物をよく見せてくれ!!」
「やだこった!!ガキンチョになんか触らせるか!!」
輪廻を見せてくれと懇願するフィットニアをマサトは、断固として拒否をした。
「いいじゃねーかちょっとぐらい。そもそもお前が扱えるような代物じゃねーだろ。」
「うるっせぇ!!俺を選んだのはこいつだ!!しかもこいつ刀のくせに結構デリケートなんだよ。ガキンチョなんかにベタベタ触られたらキレて俺に八つ当たりして来るんだよ。」
「お願いだ!!!一生のお願いだ!!!」
「ダメだ!俺が良くても輪廻がダメっていうんだよ!!」
「輪廻?」
輪廻の名前を口に出した瞬間、近くを通り過ぎたフードを被った女性が反応した。
「そこのお前!!」
「は、はい?あ、さっきのフードの人。」
「なぜその刀を持っている?まさか魔王軍の‥‥それはお前が持ってていいものではない!!」
「‥‥え、ええ!?ちょ、ええ!!?」
急に見ず知らずの人から輪廻を持つ資格がないと言われたマサトは、何が起きているのか理解できず混乱した。
「我が同胞の恨み!ここで晴らしてもらう!!」
女は腰に吊り下げている刀を鞘から抜きマサトへ襲いかかってきた。
やっぱ厨二病って誰もが通る道だよね。(厨二病真っ只中)




