第23話 ピッタリな魔法
船は汽笛を鳴らしながらゆっくりと港へ入っていき停船した。
「やってきました!!シェー‥ド?」
港にはおんぼろな貿易船が何隻か並んでおり活気は、なく人の気配も全くと行っていいほど感じられなかった。
「観光できたわけではありませんが、なんだか寂しいですね。」
「もともと化石燃料を多く輸出するモノカルチャー経済に依存している国だ。安定して利益を挙げられないから仕事や福祉が充実しておらず治安が悪くなる。治安が悪くなると観光客が減ってさらに利益が減る。そういう悪循環が続いているらしい。」
シェードは、四方を海と鉱山に囲まれた島国であるため鉱山資源を独占することができるが、鉱山から流れ出た鉱毒の影響により作物を栽培したり近海で魚を捕まえることができない。そのため必然的に資源は輸入に頼るしかなく輸出品も唯一確保できる鉱物が多くなってしまうのだ。
マサト達は、採鉱地を目指して道中街を歩いていたがおんぼろな家や落書きのされたシャッターが閉められている店が林立しているだけでやはり活気はなく田舎街のオリジンタウンのほうがよっぽど賑やかだった。
「大丈夫?俺達急に襲われて身ぐるみ剥がされない?」
「大人数の冒険者を相手にしようとする人は、そうそういないと思うので多分大丈夫ですよ。」
「身ぐるみ剥がされたとて貴重品は船においてきてあるから別にいいだろ。」
「おい!!俺の輪廻はどうな――
マサトは、ふと視界に入った女性に何故か目が離せなくなった。女性は、高身長でスラリとしておりフードを被って顔はよく見えないが今まで感じたことのない魅力を感じた。
「どうした?ボーッとして恋にでも落ちたか?お前じゃ無理だ諦めろ。」
「何でも否定から入るな!!現在多様性の時代だぞ!!この姿でも愛してくれる人がいるかも知れないじゃないか!!」
「安心してくださいマサトさん。人間の姿になってもマサトさんのことなんて誰も眼中にないですから!」
「お前たまに結構エグいこと言うよな!!‥‥てかそもそもこれは恋なのか?なんか違う気がする‥‥。」
女性のことは一旦忘れ、再び採鉱地へと進んでいった。採鉱地へ着くと冒険者たちはツルハシを手に取り地道に穴を掘り始めた。マサトたちも続いて掘り始めるも全身を使う運動にマサトと福神が耐えれるわけもなくすぐにバテてしまった。
「はぁ‥‥何か無い?‥‥消費魔力が少なくて‥‥高火力出せる魔法‥‥それか魔力を増やす魔法‥‥はぁ‥‥。」
「はぁ‥‥そんな魔法あれば苦労しな‥‥待てよ。一個あるわ。」
そういうと福神は少し離れた空き地へマサトを連れていった。
「今からお前に教える魔法は、【魔力増加魔法】魔力を生み出す器官を刺激して一時的に体の魔力を増加させる魔法だ。」
「なにそれ!常に魔力不足の俺にピッタリの魔法じゃん!」
「それじゃあ胸のあたりに魔力をためて魔力が全身にみなぎるイメージをしろ。ワイが合図したら魔法を唱えるんだぞ。」
福神は、そそくさとマサトから距離を取り岩陰に隠れた。
「よーしいいぞ!」
「よっしゃ!!【魔力増加魔法】――
マサトが魔法を唱えた瞬間体が膨張しものすごい爆発音を立て破裂した。あたりの地面はえぐられその中心でマサトは倒れていた。
「な‥何‥‥これ‥‥?」
「魔力増加魔法またの名を自爆魔法。400年前ある大魔法使によって作り出された唯一の魔力を増加させる魔法だ。低コストで大量の魔力を発生させることができるが、大半の使用者が魔力が増えすぎてキャパオーバーになり、耐えきれず体が木っ端微塵に破裂する。破裂するときの威力も絶大であたり一帯を消し飛ばすこともできる。そのため昔の戦争ではこの魔法を使った特攻隊ができたこともあったらしい。どうだ?」
「どうだじゃねーよ‥‥そういうことは‥‥先に言え‥‥」
魔力が増加したことにより欲張りな生命の再生速度がものすごく早くなっていた。
「歴史を知る良い機会だと思ってな。お前無知なくせに自ら知ろうとせず、余計なことばっか言うから失礼がないか心配になるんだよ。」
福神にごもっともなことを言われマサトは、いつものように言い返すことができなかった。
「うっ‥‥ぐうの音も出ない‥‥」
「エロ本だけじゃなくてこの世界の歴史書でも童話でもいいから一回手に取ってみろ。案外面白いから。」
「はい、分かりました‥‥で、他にいい魔法無い?」
「ワイの話聞いてた?」
マサトは、魔力増加魔法を習得した。
シェードのギルド…
フードを被った女性が大声で話をしながらたむろするチンピラに声をかけた。
「すまない。これを見たことはないか?」
女性は、一枚の写真をチンピラたちに見せた。
「何だこれ、剣か?そんな物騒なものお嬢ちゃんには似合わないよ。それよりも俺達と一緒に遊ぼうぜ!!」
チンピラが女性を掴もうとした瞬間、チンピラの手首は綺麗に切り落とされた。チンピラは何をされたかわからずただただパニックになり騒ぐことしかできなかった。
「う、うわああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「私は人妻でな。そういう淫らなことはしないと決めているのだ。うまく斬ったつもりだから急いで医者に見せて治療してもらえばくっつくだろう。情報提供感謝する。」
女性は、1000ルミナを机の上に置き抜いた刀を鞘にしまうとギルドをあとにした。
あああああ!!!可愛い彼女欲しいいいいい!!!!




