第22話 一難去ってまた一難
ここはのどかな海の上。聞こえるのは波の音、カモメの鳴き声そして‥‥
「オロロロロロロロロロ‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥オロロロロロロ。」
船に慣れていない者が垂れ流す不快なゲロの音。
「は、はは情けないな。船酔いするなんて全くこれだか‥‥オ、オエエエエエェェェェ!!」
「そういう福神さんだ‥‥うっぷ‥‥」
この三匹は滅法船酔いに弱く、甲板で海に向かって嘔吐をしていた。
「こういうのってだいたい一人じゃ‥‥オロロロロロロ。」
「だめよ。ユーリン‥‥ここで出したら乙女の名を汚すことになる‥‥うっぷ‥」
「お前コカトリスだろ。」
「ああ、もう無理。酔い止めもらってくる!」
一同は、船の医務室で酔い止めをもらうと再び甲板でブラブラし始めた。船酔いも治まり特にやることがないマサトは、何気なく福神に質問した。
「そういえばさ。俺等がデルフィニウムのところへ行ってるときお前ら何してたの?」
日向ぼっこで眠くなった福神あくび混じりの声で答えた。
「チャムが集めた情報の中にあの七花軍師が奴隷商を裏で行っているというものがあったんだ。最初は、親玉を潰さない限り意味がないし、リスクが高いって思ったから襲撃するつもりはなかったんだけど、ギルドで奴隷商についてもっと知りたいって奴が話しかけてきたんだ。ワイは、断ろうとしたんだけどあのお人好しが素直にべらべら話してあとに引けなくなったってわけ。ま、目的のものは見つからなかったらしいけどな。」
「奴隷か‥‥。」
どこの世界にも生まれや種族で差別する酷いことをする奴らがいるんだとマサトは、決してきらびやかではない現実を感じ少し嫌になった。すると船内アナウンスが船の中に響き渡った。
『フェイバリル行きのこの船は現在原因不明のトラブルにより不具合が発生したため、急遽予定を変更し最寄りの港がある【シェード】に一時停泊することになりました。ご迷惑をおかけいたしますことを大変お詫び申し上げます。繰り返します――』
「ゲッよりによってシェードかよ‥‥。」
行き先がシェードに変わったことを知りシェードに変わったことを知り、福神は嫌な顔をした。
「なんかだめなの?」
「ダメっていうか‥‥治安がものすごく悪いんですよ。暴行、万引き、スリは当たり前酷いものだと強盗や強姦、殺人未遂などの犯罪も跡を絶たないようです。」
「なにそれ怖‥‥。」
「で、でも船からでなければ犯罪に巻き込まれる心配はありません!」
マサトは、ユーリンの発言にどことなく嫌な予感を感じた。そこへ活気溢れた男のアナウンスが流れた。
『ハッハッハ!!この船の中にいる冒険者は大至急!!会議室まで来てくれ!!重大な任務がある!!大至急だから急いでこいよ!!ハッハッハ!!』
また面倒なことに巻き込まれたマサト達は嫌々集合場所の会議室までやってきた。
「ハッハッハ!!よく来た!!勇敢な冒険者の諸君!!私はこの船の責任者【ヒート】だ!!早速だが諸君らに頼みたいことがある!!この船は、タンクが破損したことにより燃料がすっからかんの状態だ。幸いタンクはもう修復され予備の燃料で動いているが、フェイバリルへ行くほど燃料はない!!」
予想以上のトラブルに冒険者たちは不安の声でどよめいた。
「トラブル発生?ふざけるな!!5日後、アイリスたんの初のワールドライブツアー初日なんだぞ!!間に合わなかったらどうしてくれるんだ!!」
アイドルのライブについての発言が出たのを皮切りに不安の声が文句に変わり、様々な罵声が飛び交った。
「落ち着け!!確かにこのままでは5日以内にフェイバリルにつくのは無理だろう。しかし!!何の因果かシェードは、燃料の宝庫!!さらに、通常の燃料とは比べ物にならないほど爆発的なエネルギーを生むエネルギーの王様【石炭の王様】が眠っている!!そこで本題だ!!諸君らにはこれからシェードでキングコウルを10キロほど回収してきてもらう!!もちろん危険な任務のため参加は自由だし、報酬も弾む!!3日以内に持ってきてくれたら必ずライブまでに間に合わせる!!どうだ?悪い話ではないだろ?冒険者の諸君!!」
ヒートの提案を聞き納得した冒険者は、手のひらを返したように今度は、歓喜とやる気の声が響き渡った。
「一難去ってまた一難か‥‥」
「ぶっちゃけありえない!!」
「どうします?参加は自由みたいですけど。」
「そりゃ参加一択だ!こっちももたもたできねーんだよ。」
トラブル発生のため予定を変更し目指すは、化石燃料産出国シェード。
新天地で待ち受けるは、鬼か、蛇か、それとも‥‥
マサトは、他の冒険者に負けないぐらい意気込みで任務を受けることを決めた。
小嵐普太の小ネタ
俺はスマイル、ドキドキあたりの世代だ。姉の影響で正直仮面ライダーより見てた覚えがある。