第17話 ボス戦前の長い会話
マサトとアセビは七花軍師であるデルフィニウムを倒すために奴の本拠地である武器会社デルフィニウムエンタープライズにむかっていた。
「待っててくださいね。天花様‥‥」
「ハァ‥‥ハァ‥‥待って‥‥置いてかないで‥‥」
アセビは、少し走っただけど息を切らすマサトを見て本当にデルフィニウムと戦えるのか心配になった。
「あの‥‥無理しなくていいんだよ。」
「ハァ‥‥ハァァ‥‥大丈夫!それにあいつ一回ぶん殴らないと気が済まねぇ。」
やんわり足手まといになりそうだから戦わなくていいと言ったアセビに対してその意図に気付かず頑固に断った。
「‥‥分かりました。でも死なないでくださいね。」
「大丈夫。死ねないから。」
そういうと再び走り出した。しばらくすると悪趣味なでかい宝石の埋め込まれた看板を掲げた一段とでかい建物が見てきた。
「改めてみるとデケーな街の景観に全然馴染んでない。」
「行くよ!マサト君。」
「よっしゃ!任せ――
中に入ろうとした瞬間ドアが吹き飛び中からツバサが出てきた。
「また振り出しか‥‥アセビ来たのか。マサトは?」
「お前の下だよ。」
ツバサは、飛び出た衝撃でマサトを思いっきり踏み潰していた。
「すまない。気付かなかった。」
「存在感ねーって言いたいのか?ていうかお前アセビちゃんより速く来てたんじゃねーのかよ。」
「そうなんだが、何処へ行っても必ずここへ戻って来るんだ。」
肩に下げていた水筒を飲みながら建物の中の出来事を説明しだした。
「どの扉を開けてもこの外への扉に戻って来る。窓やジャンプして最上階から入るのも試してみたが駄目だった。」
「お前さらっと100メートルジャンプできること暴露しやがったな。ホントに俺と同じ日本人かよ‥‥」
「あああ!!結局振出しじゃない!!天花様天花様天花様――
ぶつぶつと呪いをかけるように呟くアセビを横目にマサトは建物に隠れて何かごそごそとしていた。
「何しているんだ?」
「あ、いや何でも‥‥そんなことよりこの建物の攻略法が分かったようなわかんないような‥‥」
そういうとマサトは、建物の中へ入っていった。ツバサとアセビも続けて入るとマサトがマジシャンが種明かしをするように語りだした。
「こういうのは大体ね。逆転の発想で考えることが大事なんだよ。例えば玄関を開けるとか‥‥」
玄関のドアを閉め再び開けると外には出ず新たな部屋へとつながった。
「お!マジで――ほら言った通りだったでしょ?」
「成功すると思ってなかったのね‥‥」
「流石だな。」
その後もマサトは様々な場所にある入り口を見つけ出し次々と突破していき、最後の扉までたどり着いた。
「ふーっ‥‥ついにボス戦ってわけか。」
初の魔王幹部との戦い、アニメや漫画で主人公が血だらけになりながら勝利する姿を思い浮かべながらふと横を見た。
「あ、お茶なくなった。」
「天花様天花様天花様天花様天花様天花様――
「何だこの緊張感の無さは‥‥なんかもっとこう!―もうめんどくせぇ開けちまえ。」
それなりの威力で扉を開けると武器会社とはまるで関係のない王族が住んでいるような部屋が広がっていた。その中央には玉座があり、デルフィニウムがドヤ顔をしながら座っていた。
「ようやく来たようですね‥‥害獣ども。あなた達のせいで私の計画は台無しです。そもそも私は――
相手が話しているのをお構いなしにツバサは思いっきり剣を振り下ろした。しかし剣は軽く片手だけで受け止められてしまった。
「君相手の話をしている時はしっかり目を見て相槌を打たなければならないって習わなかったのかい?そういう自己中心的な傲慢タイプが一番嫌われるって気付かないの?」
「そうだそうだ!お前は変身中の仮面ライダーに攻撃している怪人見たことあるのか?」
「あなたはどっち側なんですか?」
少し不満そうな顔をしていてたが素直に剣を鞘にしまい元の位置へと戻った。
「それでいい。それでは話の続きをしよう。」
30分後…
「つまりケバブというのは白米よりパンの方が合うんだ!だから―
「はあ‥‥眠い‥‥そういえばアセビちゃんは?」
「天花探しに行った。」
あれから一息つく間もなく一方的な意味の分からんマシンガントークが続いていた。
「もうやっていいか?」
「うん‥‥どうぞ。」
再び気持ちよさそうに話しているデルフィニウムに飛び掛かったが、攻撃はよけられてしまった。
「一回人に注意されたことはもうするなよ!君は一体どんな教育を受けているのかな?」
「うるっせぇ!そもそも話が長いんだよ!こっちのことも配慮しろよ!!」
マサトが喋った瞬間目つきが変わりゴミを見るような目でにらみつけた。
「そもそも君はお呼びじゃない。私あなたを一度追い出しましたよね?なのになぜまた来ているんですか?これだから察しの悪い害虫は困ります。」
「テメーの意見なんてどうでもいいわ!俺はテメーをぶん殴りたいんだよ!!」
「はぁ‥‥そういえば、これ貴方のですよね?邪魔なのでさっさと持ち帰ってください。」
そういうと左手で空間を裂き中から何かを取り出した。
「技は強力なんだけどなぜか私には使えないみたいなんだよ。だから引き取ってくれよ。」
「‥‥はあぁ?」
デルフィニウムの左手には魂が抜けたように動かないユーリンがいた。
U-NEXTが!!!終わらねェ!!!!