第15話 間抜けなドブネズミ
マサトとユーリンは迷子のペットの情報に出た武器会社の前に来ていた。
「着いたのはいいんだけどさ。こっからどうしよう。」
何も考えずとりあえず来てただけなので、建物へ入る許可も取って無ければ、差し入れも何も持ってきてなかった。
「ひとまず大声で中の人を呼ぶのはどうでしょう?」
「それもそうだな。すいませーーーん!!誰かいませんかーーーー!!聞きたいことがあるんですけど!!」
扉をたたきながら大声を出すが中からの反応はなかった。
「聞こえてないのかな?すいませーーーん!!‥‥宅急便でーーーす!!お届けに参りましたーーー!!‥‥ウー〇ーイーツでーーーす!!‥‥N〇Kでーーーす!!受信料の集金に来ました!!」
それから異世界では絶対伝わらないような現世ネタで叫び続ける不審者と化していたが反応は全くと言っていいほどなかった。
「クソッ、もうネタ切れだ!てかこんなに叫んでるのに何の反応もないなんておかしくね?もう叫ぶのめんどくさいしここぶった斬っちゃおうかな?」
マサトがドアをぶった斬ろうと輪廻に手を伸ばした瞬間『ピンポーン』と効果音が鳴った。音のする方を見るとユーリンが壁についていたボタンを押していた。
「何か鳴りましたね。」
「何でインターホンがあるんだよ!!ていうかあるなら叫んでた意味ねーじゃねーか!!道理で全然反応がねーわけだ!!」
マサトが叫び散らかしてさらに喉負荷をかけていると建物の中から眼鏡をかけたひょろがりの男が現れた。
「あの~どうかされましたか?」
「あ、いそがしいところすいません。冒険者協会に所属している者なんですけど‥‥」
マサトは適当に理由付けして社長に会いたいと説明すると、男は何の躊躇もなく建物の中へ入れた。
「それにしてもこの建物とても大きいですね。」
「この建物の全長は、100メートルあります。驚かれるのも無理ないでしょう。」
興味津々なユーリンに男は自慢話を始めた。
「そしてわが社の看板にはめられている鉱石はなんとあの商売繁盛に縁起がいいと言われている【ソウルストーン】が埋め込まれているのです!」
それからも男は遠く離れていても話が出来る黒い箱(電話)やら上下に移動できる箱やらどれも現世にあった発明品ばかりだった。
「それではもうすぐで帰ってくると思うのでしばらくお待ちを。」
くそ長い自慢話が終わり控室に通されると男は持ち場へと戻っていった。
「凄いですね!デンワ?とか常に持ってたら便利だと思いませんか?」
「いやいやどれもいらないんだろ!エレベーターは重りで箱の高さ調整しないといけないし、固定電話に関しては仕組みが糸電話なんだよ!ていうかこんな回りくどいことしなくても全部魔法で代用できるだろ!!」
「あなた世紀の大発明にケチをつけようというのですか!?まったくこれだから教養のない人は‥‥」
「あれのどこが世紀の大発明だ!?じゃあ俺が小6の時発明した目覚まし時計自動停止期は神器だな!!」
「お待たせしました。」
言い争っているとドアが開きにこやかなスーツ姿の男が現れた。マサトとユーリンは、口論をやめ気まずそうに席に着いた。
「初めまして私はデルフィニウムエンタープライズの社長。【デルフィニウム・ スペルビア】と申します。以後お見知りおきを。」
「ど、どうも。冒険者のヤマグチマサトです。17歳3月10日生まれうお座血液型B好きな食べ物はキムチ鍋です。」
「ユーリンです。」
思った以上に礼儀がきちんとしている人が現れ、少し前まで会社のことをぼろくそに言ってたことが恥ずかしくなった。
「冒険者の方でしたか。人間ではなかったので気付きませんでした。今日は言ったどのようなご用件で?」
デルフィニウムは、細い糸目で見つめながら優しく問いかける。
「私達今迷子のペットを探しているんですが、聞き込みをしている途中社長さんが情報を持ってるかもしれないと言われたんです。」
「なるほどぉ。力になれるか分かりません尽力しようと思います。」
友好的な雰囲気を出し微笑みかけるがその顔は作り物の様でどこか不気味だった。
「ありがとございます!そのペットの見た目が白色の小動物でなんか神々しい魔力を帯びて――
気が付くとマサトは控室のある10階から上空へと放り出されていた。
「は?」
「マサトさん!!」
「あなたたちでしたか。私の商売道具についてこそこそと探りを入れていたドブネズミたちわ!」
デルフィニウムは、さっきのにこやかな表情とはとても結びつけれないほど恐ろしい形相でマサトをにらみつけた。
「まさかそちら側から来てくれるとは都合がいい。それでは永久にさようなら。」
「ちょ待っ――
制止しようとするマサトを無視し、デルフィニウムが指を鳴らすとものすごい勢いでマサトは吹っ飛んで行った。
「さて次はあなたです。安心してくださいすぐにお仲間の送ってあげますよ。間抜けなドブネズミさん。」
マサトは目覚まし時計のことがスヌーズ機能の次ぐらいに嫌い