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三題噺もどき3

現実逃避

作者: 狐彪

三題噺もどき―ごひゃくさん。

 


 携帯のアラームが鳴り響き、現実に引き戻される。


 顔を上げると、カーテンの隙間から日差しが漏れていた。

 いつの間に、こんな時間になっていたんだ。

「……」

 まさか、朝焼けをこの目にすることがあるとは思いもしなかった。

 朝なんてギリギリ何時まで寝て居られるかが勝負みたいなところがある気がしていて。早起きなんてあまりしたことがない。働いていた頃は、朝早くに出勤していた時期があっ宝、その時はまぁ、見ていたかもしれない。

 でも、朝焼けなんて見ている余裕はなかったな。夕焼けだってたいして見た記憶ない。

「……」

 意識が逸れ、集中が途切れると、今まで気にもならなかった腰の痛みとか、首の軋みとかが響きだす。目も若干霞んでいる気がしなくもない。

 昔から姿勢が悪くて、猫背なものだから、背中の半ば辺りなんかものすごい痛い。

 久しぶりにこんなに集中していた気がする。

「……ふぁ」

 現実に引き戻された矢先、思い出したように眠気に誘われる。

 それでも、変に興奮している脳は眠ろうと言う意識にはならないらしく。

 膝の上に置いていたものを、手に持ち直し、現実逃避を再開する。

「……」

 昨夜。

 自室に戻って、ぼうっとしていたんだけど。

 部屋にある本棚の中のあるシリーズものに目が言って、そういえば、最近読書なんて全然していなかったなぁと思って。

 手に取ったのが始まりで。

「……」

 学生をやめてから、めったにしなかったオールをしてしまっていた。

 夜更かしなんてしたら、次の日の体力がなくなるだけだから、絶対しないようにしていたのに。今日はでも、ほんと。気づいたらという感じなんだよなぁ。

「……」

 今読んでいるものは、読書が趣味になった頃から、愛読している作者のモノなのだけど。

 これがまた、とても面白いのだ。

 漫画もそれなりに読む方ではあるが、どちらかというと小説を読んでいる方が楽しい。

 部屋がそこまで広くないので、本棚は1つしかないのだけど、その半分以上が小説で埋まっている。シリーズものが多いのというのが一因なのだろうけど。

「……」

 棚が前後にあって、前側の本棚をスライドさせて使うタイプの本棚……と言えば伝わるだろうか……。

 その前側の本棚は、そのお気に入りの作者の本で埋まっていたりする。

 いろんなシリーズものを書かれていて、有名どころは持っているのだけど、まだすべて揃えられていないのが悔みどころである。いつか揃えたいところなんだが、今もう書店にないのもあるからなぁ。通販にはあるんだろうか。

「……」

 その数あるシリーズの中で、今読んでいるシリーズはトータルで五周ぐらい読んでいるものだ。内容は大抵頭に入ってしまってはいるが、それでも面白くて読む手が止まらない。

 本を読んでいる間は、なるだけ無表情で読むようにしているんだけど……。これはまぁ、学生のころ1人で読書をしているタイプの人間で、周りの視線なんてどうしても気にしてしまう癖があったので、その時の名残というか、そんな感じのものだ。

 ―それでも、どうしてもにやけてしまうと言うか、頬が緩んでしまうのが、この本だ。

「……」

 ギャグやシリアスやグロって感じで。これはアニメもしているので、声がしっかり脳内で再生される。ちゃんとアニメも見ているのはこのシリーズくらいじゃないだろうか。アニメもそれなりに見る方ではあるが、そんなに頻繁には見ないのだ。そういう環境じゃなかったのもあるけど。このシリーズは一部映画化もしていた。

 私が好きなキャラクターはメインではないけど、それなりに登場する。映画ではしっかり登場するので、映画館に見に行ったものだ。

 今読んでいる巻はちょっと外国に行ったりするんだけど……これを読んだときはまさかこんな現代情勢を反映したものが来るとは思っていなかったのでちょっと驚いたりした。

「……っふ」

 今は自室にいるので、表情はさして気にしなくてもいいのだけど。

 思わず笑いが漏れるのはちょっとやめたい。

 他にも家族は隣の部屋で寝ているんだし……いやそろそろ母親は起きてくるかもしれない。

 きっと部屋の扉が開く音が聞こえて、ペタペタと廊下を歩く足音が聞こえだす。

「……」

 だけどきっと、気づけない。

 いつもなら、その音で目が覚めるぐらい気になる音のはずなのに。

 アラームの音よりそっちの音で目が覚めることの方が多かった。

「……」

 意識が切れたり、集中が途切れたりすると、現実に引き戻されて。

 いろんなことを考えてしまうから。

 今は、この時間が何よりも楽しいと思えるように。

 全力で現実逃避をさせてもらおう。






 お題:無表情・朝焼け・外国

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