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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

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ああ、主。どうか死んでくれ。

作者: 嘆き雀

 元は知らないが、二度目の誕生は知っている。

 そのとき私を使役する主は何も言わなかった。前も後ろも分からなかった私は歩いていく主についていくしかなかった。


 寡黙で臆病な主だった。信頼を置いている側近の女には気持ち悪いぐらい饒舌だった。私には一言二言だから死んでしまえと思った。私を気にかけてくれたときは、まだ死なずともいいかと思った。


 主は歪だ。私を使役して決して離さないが、接するときは不器用な優しさを見せる。……完全には憎みきれない。


「なぜ私を使役する?」

「……便利そうだから。手間、かからないし」


 感情のまま、主を殴ったら、信頼されし側近に倍以上に殴られ続けられた。


「えぇー? なんで殴れるの? 使役してるのに……」


 殴られている様を観察しながら呟かれるが、そんなもの知るか。さっさと助けろ。


 救助が遅れてぼこぼこにされた私は仕返しができなかった。側近は強い。めちゃ強い。

 側近が目を光らせており、私は表向きは従順になる。使役されて生かされているので、主の元から逃げることはできなかった。そんな裏ではいちもつ抱えている私を、主は見捨てなかった。



 主は敵に容赦なかった。容赦できるほどの相手でなく、数も多い。なんせ主は悪党の親玉だ。そりゃ容赦もなく、数も多い。

 だが、いつかは悪党は倒れるものだ。今日はそんな日だった。


「逃げよう」


 臆病だったから、決断は速かった。使役しているものを囮にして、逃げる。ちなみに使役しているものは私以外にもいて、それが主が悪党と言われる所以だ。


「ここを守れ」


 抜け道を前に主が言う。


「は?」


 使役している私への命令だ。私は立ち止まる。抜け道を行く主と側近と共には行けない。


「ッなんで!!!」

「……じゃないと、追ってこられるだろう?」


 主は言い淀みながら言い、側近はいい気味だ、と表情が物語っていた。


「は、あはっ、あははははははははッ!」


 なんでついていけると思ったのだろう。もう私以外、使役しているものはいないのに。臆病な主が、自分と側近に辿り着ける道をただ残しておくはずがないのに。


 狂った声を聞きつけて、敵がやってくる。

 主にとっての敵。私にとっては……同じく敵だ。私の存在からして相容れない。


 拳と脚が私の武器だ。敵の一人の首を掴み、お仲間にぶん投げる。その勢いで脚を回して蹴りつける。先手がとれたが、数で圧倒される。

 視界が赤く染まる。魔法による炎で、焼けていく感覚がある。


 構わず敵の中に突進する。魔法使いが自身の放った炎を恐れてひっと小さく悲鳴があがるが、勇猛な剣士によって恐れは防がれる。

 体は至る所を切られ、右腕や左手の指も欠陥している。魔法によって肌は赤ければまだマシで、黒く焼け焦げたり、燃え上がったりしている。


 こんななりでもまだ動ける。痛みなんてない。そんな魔物が、アンデッドなのが私だ。


 慎重に私は倒された。見た目なんて関係なく動けるのだ。私の意思はもう無理だと思っていても、噛みついてでも抜け道を守り抜こうとする。


 後は核を砕かれるのを待つだけ。


 やっと死ねる。死後まで休むことなく働かされて疲れた。


 惜しむべくは主だ。

 私を使い捨てた主。そのおかげで完全に憎みきれる。



 ああ、主。どうか死んでくれ。

 使役されたせいで地獄に落ちるんだ。さっさと落ちてきて、気が済むまで殴らせろ。

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