コールセンターの女に絡まれる
【魔法が発動できます】
「ひえ!え?え?」
女性の嫌に色を含んだアナウンスが熱に侵された脳内に響く。
ジャンジャンジャンジャジャーン♪
「わ!うるさ!ちょっ・・・!」
音楽家に爆音のご機嫌なコールセンター呼び出し音は効く。
音楽家が求めるものは静寂だ。
普段練習やら何やらで耳に神経を使いすぎているから。
【魔法が発動できます】
ジャンジャンジャンジャジャーン♪
女性アナウンスと同時に再び最大出力の音楽が流れる。
「わ、分かったから! でもどんな魔法が使えるねん」
(おっと思わず故郷の、言葉が出てしまった)
【ご使用可能な魔法の説明を受けますか?】
【説明を受ける場合は(1)を、受けない場合は(#)を押してください】
脳内にアナウンスが流れているだけなのにどこを押せばいいというのだ。
ジャンジャンジャンジャジャーン♪
BGMがうるさすぎるので(1)を脳内で押したことにする。
【下痢(弱)、復唱(大)、お黙り、帰宅、気絶の魔法が使えます】
それだけを女性アナウンスが私に伝えると頭の中が静かになった。
「え?下痢?帰宅?説明それだけ?ちょっと?」
跳ね起きて汗でぐっしょりになった体をシャワーで清める。
ソファーに座ってコーラを一気飲みして頭を抱えながら
私を手酷い目に合わせた元カレを思い浮かべて
【下痢(弱)、復唱(大)、お黙り、帰宅、気絶】
の魔法の中から下痢を多めに繰り返し唱える。
しばらくすると元カレに対する鬱憤が晴れたのか
爽やかな満足感を得て寝床に入ると直ぐに意識を失った。