スーツの男に絡まれる
下痢(弱)、復唱(大)、お黙り、帰宅、気絶(前後5分間の記憶消去)
どうしてこんなしょうもない魔法しか使えないのだろう・・・。
私はノイツ連邦共和国の名門音大に留学し無事卒業資格を得、
生計を立てるためにこの国の北東にある辺境の地のオーケストラに勤務したあと、
生国のエイジアに帰国した。
「〇ッ〇!」
(はい・・・?)
エイジアに帰ってきてまあまあの中規模都市に居を構えて
坂道を散歩していると、向こう側から外国人が歩いてきた。
目が合ったのでなんとなく挨拶をすればこれだ。
「〇ッ〇!」
(いやいや、何でやねん)
スマートな異国人は三つ揃えをビシッと着こなして
私の側で立ち止まると首元のネクタイを調節しながら咳払いをするという
小芝居をしたのちに宣った。
「〇ッ〇!」
私の目線の先に派出所が見える警官は・・・居る。
驚きつつその場を離れ、スーツの男が坂を上って歩いていくのを見て
その後ろ姿に「復唱(大)」、「帰宅」の魔法をかける
これで彼は「〇ッ〇!」「〇ッ〇!」「〇ッ〇!」と
自宅に帰るまで大声で復唱するだろう。
駅の方に歩いて行ったから電車を使うのかな?
駅前にも派出所あるのよねぇ。
ちなみに「帰宅(徒歩)」や「帰宅(車)」などと指定もできる。
「下痢(弱)」などは使わない。
やり返したいからと言って
そんな事をすれば臭いし、汚いし迷惑極まりない。
全く使えない魔法でしかない。
「帰宅(徒歩)」や「帰宅(車)」を「下痢(弱)」と
同時に使うと恐ろしいことになるのはお分かりだろう。
すぐに「気絶(前後5分間の記憶消去)」を自分に使って
さっさと嫌なことを忘れたかったが
30分ほど半目で口を開いたままその場でフリーズするので
私の方が先に警察のご厄介になってしまうだろう。
魔法なんて使いどころは殆どないのだ。
はぁ~、とため息をつきながら坂道を下って行った。