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星の旅には、エメラルドの風

作者: 逢乃 雫

新緑の風はまるで


季節の女神が


エメラルドの絵筆を


走らせるように



彼方の峰から


街の小さな通りまで


息づく翠に染め上げて



皐月の川のほとり


面影草の花の


琥珀色とともに



水鏡(みかがみ)に映りゆく


春の面影



雨の舞い落ちる


スタッカートの音や



陽射しに沸き立つ


いくつもの滴が


放つ光の萌黄色



行く道には


星座のように連なる


クレマチスの花


星を巡る旅人のように




五色月(いついろづき)の夜空を


見守る女神の左手に


握られた麦の穂



穂先に輝くスピカが


恵みの秋まで


大地を見守って



冬があるから


気付くあたたかな


ぬくもりがあり



春があるから


草木や動物たちの


息吹を感じて



夏へ向かうとき


自然の力強さと


ひたむきさの意味が


胸に響いて




五色月の夜空を


見守る女神の右手に


握られた羽根の筆



その筆の先にある


てんびん座の星々



何が正しくて


何が大切か



目には見えないものも


重みがはかれないものも


ある中で



その天秤は


地上ではなく


天と心の中に



迷いながらも


少しずつでも


信じるその道を




五色月の空と大地


春色と夏色が


重なり合う煌めき



晴れわたる青空も


雨雲で空が


見えない日も



雨上がりに辿り着いた


空は一層青く澄んで


感じられるように



星が互いに寄せ合い


星座となって


ともに時を


越えていくように



それもまた


旅を豊かに彩って


 


葉の翠は鮮やかに


星の光はやさしく



春と夏の間を


爽やかに駆けていく



風はきっと、


エメラルドの色















エメラルドは5月の誕生石で、草木が繁るような翠色をし、石言葉は「幸福」です。面影草はヤマブキ、五色月は5月のことです。クレマチスは白や紫、緑の星形の花が春から咲き、花言葉は「旅人の喜び」です。


おとめ座は、左手に麦の穂、右手に羽根の筆を持つ豊穣の女神が由来とされ、隣にある天秤の持ち主とも言われます。一等星のスピカは「麦の穂先」の意味とされます。


てんびん座の光はささやかですが、春と夏を繋ぐ星座で、最も明るい「北の皿(爪)」と呼ばれる星は、翠色に見えることで知られています。


立夏を過ぎ、春から夏へ移りゆく花や星、宝石をモチーフに、詩を描かせていただきました。お読みいただき、ありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] エメラルドの絵筆が翠に染め上げていく…… もううっとりしてしまいます。 美しい描写に、五月が更に好きになりました。 >星が互いに寄せ合い 星座となって ともに時を 越えていくように …
[良い点] 本当にうっとりしてしまう詩の世界。 一緒に空を見上げたり、風を感じたり。 この詩には世界の美しさの全てが詰まっている感じがします。 嗚呼、本当に素敵……。 特に冒頭が好きです。 エメラルド…
[良い点] 五月の翠に、エメラルドの色をあてるのが、私には新鮮でした。確かにエメラルドです。そう思うと気持ちが高まりますね。 >面影草の花の琥珀色 も印象的でした。 天秤の場面のメッセージも好きです。…
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