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しあわせ

この御噺に、

ハッピーエンドは

存在するだろうか。




やがて病室に入る医師や看護師たちを友人と錯覚するようになった浮口に希望の光は見えない。


それまで幾度も自分の両親や蔵橋・末松の家の者が訪れたが、狂気に支配された彼女にはもはや何の声も聞こえはしない。


食事を取ることすら拒み、仕方なく無理やりチューブと針を通して栄養を送り込まれる姿は、つい目を逸らしたくなる程だ。


彼女が入院……いや、収容された初日、両親が病室の前で泣き叫んでいたが、当の本人にはその悲痛な思いさえ届かなかったのだろう。


一方、浮口の脳内を掻き乱す原因となった蔵橋・末松の遺体らしきモノは、翌日の早朝に警備員が発見した。


この表現から、遺体は相当酷い状態であったことを察することができるだろう。骨は砕け、肉片が飛び散り……想像するだけでも吐き気がする。


死因は自殺、若しくは事故という曖昧な位置で片付けられた。


なぜなら、フェンス以外に何かの証拠になるようなものが見つからないからだ。


蔵橋が怒りで末松を巻き添えにしたなど、誰ひとり考えもしなかった。二人は仲が良かったと生徒たちは供述しているし、誰もそれを疑おうとしなかった。


この事件は公表され、テレビや新聞には『女子高生 またも自殺』という見出しが太字で記されていた。


それから浮口は高校の退学手続きを済ませることになる。生き続けることは彼女にとって幸福だろうか、それとも苦痛だろうか。今はその答えすらも聞くことができない。


彼女たちの死亡し、浮口が不登校になる一日前が千景の一周忌でもあったことから、学校の生徒たちの間ではこれは『呪い』であると噂されていた。


……しかし、それも時が経てば忘れられてしまう。やがて報道されることもなくなり、彼女たちの存在だけが消しゴムで消されただけの学校では、今まで通りの生活が戻りつつあった。


「……彼女たちもまた、忘れられていくのね、あの日の私のように。


傷めつけるだけが復讐じゃない。本当の恐怖は、肉体でなく精神にある。自分という存在が完全に消えてしまうということは、私の恐怖。


浮口さんには申し訳ないことをしたわ。もし、私があのとき彼女を殺していれば、彼女はこんなにも苦しまなかったかもしれない。


……でもね、後悔はしていないの。だって浮口さんは、死ぬまであの日のことを、私のことを忘れはしないのだから!!」


どこかでまた、少女の淋しげな笑い声が高らかに響いたような気がした。



生きることが苦痛である人間にとって、生き続けるということは不幸以外の何ものでもない。


人は、亡くなった二人を不幸と言い、生き残った独りの少女を幸福だと言うだろう。


しかし残った少女は、最後には死を欲することになる。彼女の幸福は生きることでなく、死ぬことにある、と。


蔵橋と末松のように、肉体的苦痛ののち、一瞬で死を迎える道。


浮口のように、肉体的ではなく精神的な苦痛を命尽きるまで味わう道。


二つは天秤にかけたとしたら、貴方はどちらが傾くと考えるだろうか……。

意味不明過ぎて落ち込みました。

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