かいそう。
あの日の放課後、私は三人に屋上へと呼び出された。
拒むことで更なる虐めを受けることになると思った私は、迷わず三人について屋上へ向かった。
蛍光灯の切れかかった薄暗い階段を昇り、軋む扉を開けたとき……
視界に入ったものは、私の方向に身体を向けて笑う大勢のクラスメイトたち。
御丁寧に拍手までして私を迎えている。
これから何が始まるのだろう。私は何をされるのだろう。
そんな不安が頭を過ぎった。
蔵橋に屋上の端まで移動させられると、私を囲むように皆が半円を作る。
「千景さん」
末松が気味の悪い笑みを浮かべ、私の名前を呼ぶ。
「死んでくれない?」
私の胸の高さまであるフェンスを越えれば、真っ逆さまに地上へ落ちて即あの世行き。
私をここまで連れてきた意味をようやく理解することができた。
何も言わず黙って俯いていると、次々に手拍子とともに「死ね」という言葉がクラスメイトの口から発せられる。
その声色はどこかこの状況を楽しんでいるようであった。
「ほら、千景さん。みんな貴方に死んでもらいたいんだって!!」
そのときの私の心はといえば、何故か不思議と落ち着いていた。
悲しい。苦しい。
私が今まで受けてきた屈辱は、そんなチープな言葉で言い表せるようなものではない。
「死ね」という言葉はもう聞き飽きた。毎日毎日、繰り返し聞いているから。
奴らは虐めをショーだと思っている。
私は正当な理由もないまま、ある日突然蔵橋たちからの虐めを受けることとなった……。
「さ、早く落ちてよ」
蔵橋が私を突き飛ばして背中を強くフェンスに打ち付けた拍子に、どうやらネジが緩んだらしい。
痛みに顔を歪めている私を見て笑うクラスメイトたちは気付いていない。
きっと、もう一発食らったら私はフェンスとともに落下するだろう。
それだけは避けたいと思い、私はフェンスから離れようと身体を動かす。
「もしかして抵抗する気?」
蔵橋は鼻で嘲笑いながら私の髪を掴み、頬を叩く。
ふらついた私がフェンスに凭れかかった刹那……錆び付いた鉄の軋む音とともに、私の身体は宙を舞った。
それは決して美しくなどはなく。私はただ呆然と最期の瞬間を向かえた。
身体が落下していくというのに、死んでしまうというのに……。
最後の一瞬に感じたのは痛みという名の恨み。
最後に目にしたのは、屋上からこちらを覗き込んで顔を青くするクラスメイトの姿。
決して奴らを許さない。できることなら生まれ変わり、この手で裁きを下してやりたい……私は強くそう願った。